あの有名な凍頂烏龍茶が、蜜香バージョンもあります。
台湾茶の生産時期は、冬と春のみならず、夏にもお茶を生産しています。気温や湿度の高い夏には、酸化によるカテキンの発酵が早く進み、東方美人や紅茶のような発酵レベルが高いお茶を生産するのに最適な時期である。また、「蜜香茶」もこの時期だけ生産できます。
寒い冬を越え、夏は虫の繁殖期であり、蜜香茶に必要なウンカというコバエも沢山います。東方美人茶、蜜香紅茶などの「蜜香茶」は、上等なダージリンのセカンドフラッシュと同じように、夏のウンカに力を借りています。梅雨の時期より、害虫だったウンカが大量に繁殖し、ウンカに噛まれた茶葉に傷や穴が残されるが、傷からクモを引きつける甘い匂いを分泌し、クモがその匂いに辿り着けてウンカを食べ物にします。茶の木が自分の身を守るために生み出された甘い香りは、大自然のとても面白い仕組みとなっています。また、噛まれた所の傷に穴が空いてしまい茶葉摘み作業の前に既に茶葉の酸化、カテキンの発酵が進み(カテキンが100%酸化、発酵されたら紅茶になります。緑茶なら全く酸化させません)、紅茶により近い味わいになります。
上の図に書いてあるように、発酵のレベルにより、同じ茶葉で緑茶、烏龍茶、紅茶を作ることができます。ウンカに噛まれた茶葉を、緑茶にしたら蜜香緑茶、烏龍茶にしたら蜜香烏龍、紅茶にしたら蜜香紅茶になります。蜜香烏龍の中でまた、東方美人茶、貴妃茶などの種類がありますが、簡単に説明すると、東方美人茶は「一心一葉」というとても若い茶葉しか取らないので、白毫烏龍(新芽の多い烏龍という意味)が東方美人の正式の名前です。貴妃茶は、ウンカに噛まれた高山茶の茶葉を使って高山烏龍茶の作り方で作られたお茶のことです。蜜香の付いた烏龍茶は、お姫様のような上品な味わいで「貴妃」という名前が付けられました。貴妃茶という優雅な名前が名付けられる前に、「涎仔茶」(エンナテー)という俗名があります。「涎仔」というのは、台湾語でよだれのことで、虫のよだれの付いたお茶、とのことです。
凍頂とは、凍頂山のことを示し、その地で作られている烏龍茶は凍頂烏龍茶と呼びます。
昔から「北包種、南凍頂」という程台湾の中南部地方の代表的なお茶であり、1960〜1980年代が最盛期でした。1987年から、初めての高山茶が現れ、製法や機械の技術が進むにつれてより海抜の高い地域で茶の木の栽培ができるようになり、同じ製茶方法で違うエリアの特徴を楽しむことになりました。違う山の味は「山頭気」(サントーチー)と言います。今の1600メートル以上の高山で栽培されるお茶(通称高山茶、高山烏龍茶)と比べて、わずか800メートルで栽培されて作られた凍頂烏龍茶の海抜はそれほど高くないが、味わいがクラシックで多くのファンもまだいます。
「蜜香」がついた凍頂烏龍茶は、普通の凍頂烏龍茶とは全く違う風味が出ています。
香り&味わい|蜂蜜、マンゴー、パイナップル
作り方|萎凋→釜炒り(炒青)→締め揉み(團揉)
産地|南投凍頂
農園|小茶米
品種|台茶12号 金萱
標高|800m
発酵|★★★☆☆
焙煎|★★☆☆☆
生産時期|6月〜9月
お姫様のような上品な味わいを、優雅に楽しんでいきましょう。
2022年のスペシャル1月号に、冬蜜凍頂をご紹介しましたが、それの夏バージョンです。夏の方が、ウンカが多く、甘い香りの蜜香が濃くなり、発酵度もより高くなっています。
1月号のお茶を気に入った方は、是非夏の凍頂蜜香貴妃も堪能しましょう。
今回ペアリングする台湾茶菓子は、杏仁荖(シンゼンラオ)。
「荖」とは、もち米粉とタロイモ粉で混ぜた生地を揚げ、軽くてサクフワなもち米せんべいとなり、外側は水飴を絡み、ゴマ、クラッシュナッツ、ココナッツフレークやポン菓子をつける伝統的なお菓子です。一番良く見かけるのはゴマの付いたもので麻䇭(マーラオ)と呼び、今回は少し珍しいアーモンドスライスを付けた杏仁荖をお付けしました。
アーモンドは、薬膳料理にもよく使われており、肺に潤いを与え、腎の機能を高めるなどの効果があるそうです。甘さ控えめで軽くて、身体に負担のないやさしいお菓子を提案しました。