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マーダーミステリーとノックスの十戒2/3

2.マーダーミステリーの面白さと守られない6番目
現在日本で主流となっているマーダーミステリーは5~9人前後で密談や全体会議、情報カードを使って行われる「オープン型のマーダーミステリー」です。この形式のマーダーミステリーは、各々の情報量に差がつきやすく、犯人捜し以外にも個人の目標を達成するべく動くことが多いです。

このゲームの一番の面白さ、セールスポイントはどこでしょうか?
私は「殺人事件の登場人物になって、舞台の全容が分かっていく過程」が一番好きです。みなさんはどこが好きですか?マーダーミステリーは、舞台やルールによって様々な体験をもたらし、そしてゲームになります。プレイヤーはゲームに対して
・犯人を追い詰める名探偵になる
・犯人となって巧妙にトリックを隠す
・犯人すら知らない真相を追い求める
・密談をいっぱいする
・自分の目標だけは絶対に隠し通す
・ロールプレイに専念する
・絶対に票をもらわないために他の人の信用を集めたい
とか、なにかしらの期待を持ったり、面白さを求めてゲームに挑むはずです。どのようなモチベーションで、どのようにプレイするのが正解なんでしょうか?

マーダーミステリーの定義・ルールが曖昧な中、様々なゲームが「マーダーミステリー」として世に出ています。そんな中、過半数のプレイヤーには共通した目標が設定されていることが多いです。それは「犯人を捕まえる」というものです。
この目標がない場合ー調査や犯人捜しに全く興味のない・非協力的な集団だった場合ーゲームそのものが壊れる可能性が高いです。殺人事件という重大なテーマがあり、様々な魅力的な登場人物が出てくる中、そいつらは事件そっちのけで浮気調査を黙々とやっているだけ……考えると地獄のような舞台です。それはそれで面白いと感じた人もいるかもしれません。ルールなんて無い、好き勝手作っている人が大勢いるのですから、まあ探せばあるかもしれません。ただ、そういったシナリオをGMとして断りなくプレイヤーに提供した場合、「納得できない」と言われることは多いと思います。犯人を捜そうとしている中、非協力的な登場人物はメインテーマから除外されてしまう恐れが高く、更に理由無く疑われてしまうかもしれません。話すきっかけがないのだから、浮いてしまうのは当然です。
「共通認識としての犯人探し」+「各々の情報を開示しつつ目標を達成すること」これは、マーダーミステリーがプレイヤーに対して、分かりやすくプレイ指針を示すために必要なものだと考えられます。

少し話がずれましたが、結局のところ、このゲームの面白さは人それぞれで、舞台や登場人物、プレイヤーが誰になったかによって変わります。以上!正解なんてない!面白さはみんな違うからその時その時をたのしもう!LOVE&PEACE!終わり!



そんなつまらないことを書きたくて書き始めたわけではないのです!もうちょっとこの駄文に付き合ってください。マーダーミステリーにおいて誰もがあるであろうと期待するもの、それは「ミステリ(謎)の解明と犯人の逮捕」です。みんなこれがあることを予期しているし、我こそはこれを成し遂げたいと期待しています。

マーダーミステリーでは、本格推理小説の様に真相発表の場で探偵が主役となり、それ以外が全員モブになるようなことはありません。探偵だけが推理発表し、指名した犯人を捕まえるのではなく、投票によって犯人は選ばれます。探偵役一人だけに犯人を決める責任を押し付けてエンディングを迎えることはありません(あったら教えて欲しいです)。言い換えると、マーダーミステリーでは「犯人を捕まえる」という目標を持ったすべてのプレイヤーが、(推理小説における)探偵の責任を分配していると言えます。

これが十戒の6番を守れない理由です。全員の投票が一致し、証拠もアリバイも全て開示され、全員の推理が同じものになったとき、初めて十戒の6番『6.探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない』は守られたと言えるでしょう。しかし、情報に差があり考え方も違ってくるので、すべてが一致することはほとんどありません。また、すべてが開示された状態は「オープン型のマーダーミステリー」の”否定”です。加えて犯人が一人に確定したと全員が気付くものでは、犯人役は逃げられません。絶対に逃げられない犯人役を押し付けられてはプレイヤーの不満もたまります。
加えて、殺人事件において、探偵役は犯人役と並んでとても魅力的な立ち位置です。この役割の一部をもらえることは、マーダーミステリーの非常に大きな面白さの一つだと思います。
したがって、私はマーダーミステリーに期待された面白さを損なわないために、ノックスの十戒を守らなくて良いと考えました。



ここまで読んでいただきありがとうございました。
納得いただけないかもしれません。次回は来週にかければ良いな。

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