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煙に巻かれる 2(再掲)

Y先生は想像を上回る人気ぶりだった。

「えっ!〇〇(あだ名)Yのクラスなの〜!?」

休日の空き教室。
私達低音パートは練習もそこそこに、雑談を始めていた。

「Yってもう人気?」
面白そうに先輩が聞いてくる。

「うーん、まあ男子とか、ギャルっぽい女の子たちは絡み始めてますね。結構ノリがいいし。」

「まだそんなもんか〜
うちら1年のときYが副担任だったんだけど、3学期にはクラスの女子全員Yのこと好きだったんだよ笑笑」

すごいよね全員ファンなの、とめちゃくちゃ笑っている。
私もそんな漫画みたいなことあるんですねと一緒に笑う。

端的に『好き』といっても色々あったんだと思う。

ファンや推しとして『好き』
良い先生として『好き』
異性として『好き』

どちらにしろクラスの女子全員って…。すごいなあの人。




別パートで、同じクラスの仲良しな友達と教室の鍵を返しに行く。

お昼だ。

ちょうどお弁当を食べていたY先生が近くにいて、挨拶をする。
この人料理できるんだ。いいね、と勝手に好感度ポイントが上がる。

改めて見るとたしかにわかる。歳も他の先生より近いし、イケメンって訳じゃないけど話しやすいし、ノリいいし、近所のお兄さん的ポジにいてほしいタイプ。

うんうん、年頃の女の子が好きになるのもわかる気がする。クラス全員はレベル違いだけど。

Y先生が立ち上がる。

「先生どっか行くんですかー?」

「ちょっと休憩」

鍵置き場から近かった私が、友達の分の鍵も返してあげる。その間に何かY先生と話している友達。

「あー!また煙草ですか?!体に悪いですよ〜」

「だめだ、先生はもう悪魔に魂売ってしまったんだよ」

ぷりぷり怒る友達にすかさずボケをかます私。
先生はそのやり取りを見てにやにやしながら、目線を私の方に向ける。

「そういえば〇〇、あれはどうなった?」

「あー!もう大変だったんですよ!
あの後───」


私とY先生は結構仲がよかったと思う。
出席番号が1番ってこともあったけど、性格的にこの人は同じ感じがしていた。多分先生もそう思っていた。
本当に近所のお兄さんだったら気が合って何でも話せる気さえしていた。

だからなのか、よく頼まれごとをされたし、それとなく話したこともよく覚えていてくれた。

「なんか時間割きれいになってない?」

「そういえば昨日□□先輩がきれいにしてくれてましたよ」

「あいつか。『ご苦労』って言っておいて笑」

「伝えておきます笑」

と、パートの先輩の話もしやすかったこともあり(先輩にとっては元副担任なので)、その先輩からも「本当に仲良いよね〜!」と言われることもあった。

こうして『仲のいい先生』と『仲のいい生徒』を築いていた。

のに。



気づけば私は恋に落ちていた。





…あれ?

そうして私の苦しく、切なく、ふざけ倒した←?
叶わない恋がはじまる。



つづく

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