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時効です

ときに人は間違いを犯す。

それは恋愛においても例外ではなくて、誰しも言いづらい恋愛の過去の1つや2つはあるのではなかろうか。


これはそんな私の間違いの話。


中学2年生の春休み。
来年には高校受験を控えていた私は、友達が通っている集団塾に入り、勉強への本腰を入れようと奮起していた頃だった。

ある日の英語の授業の最後、先生が思いがけない言葉を発した。

「そういえば来年度から英語の先生変わるからね」

まじかよ。
さっぱりとした性格の先生で、話しやすくて良かったのに…と来年度からの不安が募る。

そうしてやってきた新年度。
次の担当になった先生は超がつくほど適当で、ノリが軽くて、いかにも苦手そうなタイプ。
他の男子生徒たちはその先生を元から知っていたらしく、「なんだ〇〇(あだ名)かよー」と騒いでいる。

今年受験なのにやっていける気がしない。当時は本当にそう思った。

最初の授業は、どのくらい英語の能力があるのかを図るための単語テスト。といっても周りと相談ありで、時間制限はない。(『お前らが相談したところで解けない』という適当先生の判断)
私は英語を習っていたことがあり、高をくくっていたが、先生の見立て通り全然埋まらない。
悩んでいるところに一応見て回っていた先生が

「真っ白っすねぇ〜」

と言いながらのぞき込んできた。
その言葉にカチンときたが、わからないものはわからない。

その後も一向に埋まらず、テスト終了。
答え合わせをし、10分後にまた同じテストをすることになった。
先生に言われたあの一言がムカついて、私は必死に暗記し、ほとんど満点の状態に持っていった。

以来、他の授業より英語を重点的に頑張るようになった。
英語教室を通っていたかいがあって基礎はできていて、悔しいことに先生の説明はとてもわかりやすく、ぐんぐんと成績を伸ばしていった。
結果、英語の偏差値はクラストップになり、先生からも一目置かれるような存在にまでなった。

その頃から勉強する意味というものが変わってきていた。

恋。

今思えば単純接触効果というか、年上への憧れというものを錯覚していたような気もするが、当時はスーツで仕事をする姿や、気さくで面白いところや、適当に見えてちゃんと生徒のことを見てる姿は、当時中学生の私にとって恋愛に発展するには十分だった。

頑張っているところを見てほしくて長期休みには朝から晩まで塾に入り浸り、ひたすら勉強の日々。
恋と自覚したときから叶わないものだと受け入れていたため、せめていい生徒でいられるように最大限努力した。
そんな頑張りを見てくれていたのか、自習しているときにちょこちょこ顔を出して様子を見てくれたり、帰る際には必ずといっていいほど見送ってくれて、受験の日には滑り止めも本命校も先生が応援に来てくれた。(生徒の志望校に1人ずつ先生を置いて激励してくれる制度があったので)

そして私は、晴れて志望校に合格した。

と同時に先生とのお別れが目前となった。

合格がわかった1週間後に塾でのお疲れ様会が開かれ、そこで私達は卒業ならぬ卒塾となる。
さらに先生は退職が決まっていたため、これが本当に会えるのは最後だった。

お疲れ様会はとても盛り上がり、何故かその時々に先生からの視線を感じる。
最初はバレバレの寄せ書きが回ってきたからかな?と思っていたのだが、書き終えた後も、他の先生や友達と話している間も、先生からの視線を感じ続け、私は気づかないふりをしながら密かにどきどきした。
結局その日は何事もなく終了、解散。
友達の粋なはからいで先生と写真を撮れ、この気持ちと共に思い出にしてしまおうと決意しようとした。
あのメッセージが来るまでは。

中編へ続く

#忘れられない恋物語

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