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『見知らぬ人』

イギリス人作家エリー・グリフィスの作品。
2020年のMWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞最優秀長編賞を受賞している。

物語はヴィクトリア朝時代の作家ホランド(架空)の小説『見知らぬ人』の冒頭から始まる。つまり二つの『見知らぬ人』の始まりというわけだ。不穏な空気を感じさせ読者に強い印象を与えるシーン。
そこから舞台はかつてのホランドの邸宅で現在の中等学校のタルガース校の旧館に移る。

ある日、タルガース校で英語教師をしているエラという女性が自宅で殺害される。
物語はエラと同じタルガース校の英語教師で親しくしていたクレアと同校に通うその娘のジョージア、そして事件を担当する刑事ハービンダーの三人の女性の視点で描かれる。
殺人事件という緊張感の中、年齢も立場も違う彼女たちの私生活や考え方がよく分かる丁寧な書き方は、時々妙に笑えたり同感できたりもする。
女という生き物の理屈ではない感情がよく描かれている。

イギリスの文化という面での霊的な考え方も興味深い。
抵抗感なく受け入れられたのは誇張し過ぎない表現と、登場人物それぞれが異なる感覚を持っていたからかもしれない。

続編も刊行されるようなので楽しみに待ちたい。

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