SNSセンス
ワシはSNSでバズりたくて生きている男の子。
毎日タイムラインでバズっている人を見つけては悔しさで顔を歪ませている。
5万いいねくらいされると一生遊んで暮らせるらしい。
ワシは毎日生まれる富豪に仲間入りしたくて面白いことを思いつこうとするが、センスがないのでだめだ。
ある夜、ワシは深夜のコンビニバイトに向かって家を出た。
バズりてぇなぁ…と夜空に浮かぶ月に呟いた。
月は表情を変えない。
月からのいいねは貰えんだったみたい。
やがてワシはコンビニに到着して働き出した。
いつも通りおでんを口に出し入れしたり、ちくわをストローにしたりして働いていると、もう一人のバイトがワシを動画撮影してきた。
「お前マジかよ!これ投稿しかねえっしょ!!」
とか言ってぎゃはぎゃは笑っていた。
ワシは、ふざけた野郎だな、ちゃんと働けばーか、と心の中で呟いた。
心の中のワシが1いいねをくれた。
ワシはその日のバイトを終えて帰宅し、朝日をうっすら感じながら眠りについた。
ワシは昼過ぎに目覚めてスマホでSNSをチェックしていた。
また今日も誰かがバズってんなぁ…と思ってタイムラインを眺めていると、ワシの姿が映った動画が現れた。
めちゃくちゃバズっているようだった。
何が何だかわからなかったが、ワシもついにバズれたのか!?と思っていると、その動画のコメントに目がいった。
“こりゃニュース確定だな”
とか書いてあるではないか。
ワシは事態がよくわからないが、嬉しさと驚きで心臓の鼓動がばくばくしてきた。
震える手でテレビをつけるとワイドショーがやっていた。
すると、ワシの動画が映っているではないか。
ワシはついにバズったのだ。
それもテレビで扱われるほどの特大のバズりだ。
YouTuberで言えば、ブンブンハローユーチューブといったところか。
ワシはすごい、すごいぞ!
と喜んでいたのだが、ワシは悲しいことに気がついた。
ワシは、投稿者じゃない…。
投稿したのはバイト仲間であって、すなわちバズったのはそいつであって、ワシではないのだ…。
スーパースターになったのは、ワシではなかったのだ…。
ただ、転んでもただでは起きないワシ。
動画に映っているのはワシなのだから、ワシ本人が自分の動画を撮って投稿すればまだまだバズりチャンス有り!
ワシはすぐさま動画を撮影した。
『どうも〜!!ワシこそが、バズっている動画に映っている本人で〜す!!!イェーイ!』
しばらく後、ワシの部屋に記者が殺到した。
インターホンのピンポンが鳴り止まない。
ワシはヒーローになれたのだ。
ワシは満面の笑みで玄関のドアを開けた。
ワシのことを超一流であり続けさせてくださる読者の皆様に、いつも心からありがとうと言いたいです。