精神セッション

ワシは生活リズムが誰よりも規則正しいので、夜に外を出歩いたことはない。

その様から、「逆ドラキュラ」なんて呼ばれたりするし、略して「逆ドラ」だなんて呼ばれることもある。

そんな馬鹿馬鹿しいあだ名をつけられているワシドラだが、幸運にも友人がいる。

これはその友人から聞いた話なのだが、「夜空の星々を眺めていると、その星々に監視されているような気分になり、ぞっとする」のだという。

ワシは夜に外に出たことがないのでわからないのだが友人の言うことは全部正しいのでそうなんだと思う。

その友人は、ある冬の日の夜に、古墳公園のてっぺんで寝そべって夜空を見上げていたのだが、その時に感じた「星々の監視」による恐ろしさの感覚をその場でノートに書き留めたのだった。

タイトルは、『精神セッション』だ。

『精神セッション』
ひとの寝床の上に寝転び
星々をしばし見つめれば
点と点はもはや目と目
無数の目に見つめられ
私の心はお見通し
ならばその逆 私とて
星々の気持ちお見通し
お利口になどできもせぬ
夜に明るい踊り子に
成り果てた皆のその命
せっかくなのでこの一晩ほど
お付き合い差し上げましょう

これは、星々に監視されていることに気付いた友人が、自分も逆に星々を監視している一人なのだということを星々に伝えることによって、星々から与えられる一方的な恐怖を押し返そうとする心情を表現した詩である。

ワシはこの詩に非常に感銘を受けて、ノーベル賞じゃん!ノーベル賞じゃんか!と騒ぎ立てた。

友人の親御さんから街ですれ違う人にまで、「おい、この友人が書いた詩はすげえだろう!!ほらよく読みやがれ!」と言ってその友人の男を上げた。

ワシは友人がどんどん街で有名な男になっていくのが嬉しかった。

ただ、友人に、「友人のこと、めちゃくちゃ有名にしてあげたよ!」と友人宅の前で何度も叫んだが、感謝の言葉はなく、それどころか全く返事すらなかった。

まあ、これがいわゆる未読無視っていうやつなのだろう。


ワシに友人はいなくなった。

お星たちはワシの友人になってくれないかな?

あ、ワシ、逆ドラキュラだからお星と友達になっても会えないんだった。

じゃあお星には用は無いや。

使えねえな…。

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ワシのことを超一流であり続けさせてくださる読者の皆様に、いつも心からありがとうと言いたいです。