見出し画像

人間が幸福な人生を送るための考え方とは?鴨長明「方丈記」

格式高い文章で知られる「方丈記」。原文のままは理解できなかったので、現代語訳で書かれている本を読みました。鴨長明の「方丈記」を読んで考えたことをメモします。

方丈記とはどういう作品か

「方丈記」は鎌倉時代の歌人である鴨長明によって書かれました。1212年(建暦2年)58歳ころに書かれたものと考えられているそう。鴨長明は62歳で亡くなったので晩年に書かれた作品です。

清少納言の「枕草子」吉田兼好の「徒然草」とともに古典文学の3大随筆の1つと数えられることもあります。また鴨長明が生きた時代は、災害が多く、その災害について細かく書かれていることから、歴史資料としての高い評価も得ています。

ざっくりした内容は下記の通り。

―内容の前半―
作者の鴨長明が20代から30代にかけて経験した災厄の数々について書かれている。生の儚さ。仏教的無常観。
―内容の後半-
鴨長明が生まれ育った環境や来歴について描かれている。50歳を過ぎて出家遁世(世俗を離れて仏門する。隠居すること)不運だった過去について。人に縛られない方丈の庵(自分の住み)での生活について。


この世のものは全て移り変わっていくという無常観がテーマです。人間は誰でも歳をとっていつか死ぬように、生の儚さをありのまま受け入れましょうというのが無常観です。

無常観というとものすごく達観した生き方だなと思いますよね。鴨長明はこの「方丈記」のなかで、生の儚さをありのままに受け入れることが大切だが、虚しさや苦しみがあることが本音で描かれています。

穏やかに過ごしたいと願いつつも、鴨長明は周囲の人たちとの衝突がいくつもあっり、苦労の絶えない人生で不運だったと振り返っています。

例えば、鴨長明の父は京都の京都下鴨神社の最高位の神官だったのですが、鴨長明が18歳の時に父が急死したことにより、人生が大きく転換しました。親族からは離縁され、財産も失ったという過去があります。そんな社会で生きていくことの辛さや困難さから逃れるように、晩年は1人で出家し隠居する人生を選んで、この本が描かれました。


人間が幸福な人生を送るためには、どのように生きたら良いのか?

心に残った文章(現代語訳)を書き留めておきます。

結局、人間が安楽に暮らすためにはどうすればよいのだろうか?という鴨長明の問いです。

権勢のある者は欲深くて、心が満たされるということはない。誰とも関わらない孤独な者は後ろ盾がないことから軽んじられる。財産があれば心配事が多くなるし、貧乏なら悔しさや恨みの気持ちが去らない。人を頼りにすれば、その人の言いなりになってしまう。人を養い育てると、自分の心が愛情に振り回されてしまう。世間の常識に従えば、苦しくなる。従わなければ、まともではないと思われてしまう。どんな場に身を置いて、どんなことをして生きていれば、しばらくの問だけでも、この身とこの心を安らかにさせておくことができるのだろうか。

人間は環境によって、あるいは境遇によって様々な異なる悩みがあり、それらは数え切れるものではないと言っています。確かに人間は何かしら悩んでいますよね。生きているだけで悩み事は尽きない。もしかしたら死ぬまで尽きないのかも。


結局、鴨長明は出家し、幸せに生きるとはどういうことか?と悩んだ末にこの世界は心の持ちよう1つで決まると説いています。幸せか不幸せかは、他人が決めるものではなく、自分の考え方次第で決まると。

しかし、鴨長明はこの世には何も未練がないと出家したのですが、やっぱり迷いがある。出家したけれど、まだ世の中に未練があり、捨てきれない執着心みたいなものがある。と葛藤していました。

人間は環境によって、あるいは境遇によって様々な異なる悩みがあり、それらは数え切れるものではないと言っています。確かに人間は何かしら悩んでいますよね。生きているだけで悩み事は尽きない。もしかしたら死ぬまで尽きないのかも。

現代まで読み継がれる素晴らしい文章を書く鴨長明でさえも、人生に迷い、苦しんでいることがわかります。800年前から人間の悩みは変わっていない。人間って本当にずっと悩む生き物なんだなぁ・・

本音で自分の悩みや葛藤を文章で綴れることができる、鴨長明がすばらしいです。読んでて苦しくなりますが、人生のモヤモヤを言語化してくれてるなぁと思いました。現代語訳付きの本が読みやすかったです。おすすめの古典です!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?