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出し切った写真は撮れたか2023

野球の写真を撮る読者の方は、今年「もうこれ以上はない」というところまで突き詰めて撮った写真がどれだけありましたか?

今回は私が今年撮影した写真の中から、その観点で及第点をクリアした写真を7枚ご紹介しようと思います。

「どう出し切ったのか」というところを時間、金銭、信頼、発想あたりを踏まえ書いてみますが、それでも反省点はすぐ思い浮かぶので、来年への宿題にしたいと思います。

荘司康誠投手 プロ初勝利

Nikon Z9
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II
92mm ISO1600 f/4.5 1/160s

【コスト】
・38万円(チケット代、交通費、宿泊費、機材レンタル費)。
 特にチケットは撮影しやすい座席が高額(2万円もあった)。
・平日開催4試合の仕事の調整(山形、広島、福岡、仙台)。
【改善点】
・レンズをNIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sに変える。
・ISO感度およびシャッタースピードを上げて被写体ブレを防ぐ。
・来年からLED照明に変更となり、色の調整が楽になりそうです。

ちゃんと語ったことはなかったかもしれませんが、荘司投手の初勝利は必ず見届けたいと思っていました。
それは大学時代の公式戦(リーグ戦・新人戦・日本代表)を無観客1試合を除き全登板を見ていて、大学1年の3軍キャンプの投球練習で初めて撮影したところから、オランダでの国際大会で撮影した写真を侍ジャパンの公式サイトに掲載いただくに至り、思い入れが強い選手になっていたからです。

プロ初登板が4月23日、初勝利が7月5日だったのですが、その間の9試合は「勝てそうだった」という試合がいくつもありました。
特に所沢、北海道、広島での試合が印象的で、6月末には追いかけている自分のメンタルと予算も厳しい思いでした(初登板はヨンニッパをレンタルしたりもしていて)。
途中、自分がインフルエンザに罹患したり、7月中旬まで勝てないと都市対抗野球大会と重なったりと、不安も膨らみました。

また、関東での試合が少なく、午前中に東京で仕事してから広島に駆けつけたり、出張先の大阪から福岡に日帰りしたり、山形から夜行バスで帰宅してそのまま仕事したり、仕事の調整も大変でした。

結果的に初勝利は仙台開催だったからこそ、今回の写真を撮れたわけですが、これも被写体との試合前の確認や、現場で気づいてもらう工夫を凝らし、初勝利のヒーローから目線とピースサインを引き出せたことに繋がりました。

撮影技術というよりは、自分の執念(お金、仕事のやりくり)と、彼との関係性で撮ることが叶った、自分だからこその写真にはなったかなと思います。

吉岡広貴選手 広島の夏 第一試合

Nikon Z9
NIKKOR Z 28mm f/2.8
28mm ISO125 f/2.8 1/2000s

【コスト】交通費4万円(東京⇔広島)
【改善点】トリミング前から被写体が中心になるように構図を配置することで周辺光量落ちを防ぐ。

野球を広角レンズで撮影すると言う新たなチャレンジが実を結んだ1枚。
球場に普段持っていかない28mmの単焦点レンズ。この時は50mmは持って行くと決めていたのですが、28mmは最後の最後に「軽いし持って行ってみるか」とバッグに詰め込んだのでした。

結果的に座席、天気、アングルがピッタリはまって、今までの自分にない写真を撮れたと思います。
広角を使いこなせる人はどんどん上達するという印象があるので、自分も積極的に取り組むつもりです。

吉岡広貴選手 広島の夏 第二試合

Nikon Z9
NIKKOR Z 50mm f/1.8 S
50mm ISO64 f/1.8 1/3200s

【改善点】レンズを50mm F1.2にする。

既存の発想の機材グレードアップと撮影環境の良さから生まれた1枚。
素振りを煽り・縦アングルで撮影するアイディアは持っていましたが、このシーンは天候、時間帯、ベンチサイド、ユニフォームの色合い、立地などがマーヴェラス

・第1試合を勝ったからこそユニフォームを着替えて第2試合でホーム用ユニフォームを見られたこと
・それも三塁側ネクストバッターズサークルに立つ背中姿が順光の時間帯になったこと
※組み合わせの都合、ホームユニなのに一塁側ではないのは貴重
・午後になり午前よりも雲が湧き立ったこと
・そもそも球場の方角のレイアウトが他の球場にはない特色があり、ここでしか表現できない光があること
・この球場の砂かぶりだからこその煽りアングルであること

手放しで出し切れた1枚だと思います。
広島での写真の詳細は下記にもまとめています。気になった方はぜひそちらもご覧ください。

田村伊知郎投手 蒼空の夏

Nikon Z9
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR
AF-S TELECONVERTER TC-14E III
420mm ISO2000 f/5.6 1/1000s 

【コスト】費用  5万円(チケット代、交通費)
【改善点】レンズをヨンニッパにする。

今年の8月はとにかくライオンズを追いかけた1ヶ月でした。
「期間限定の蒼空ユニフォームを着た田村投手が投げる姿をこの目で見たい」
それを達成するのに9試合もかかってしまいました。

ベルーナドームに19時くらい(試合開始1時間後)に到着し、ブルペンが見える外周の通路で立ちながらPC作業しつつ、登板機会がなければ着席することなく帰宅する、ということも何度もしました。(試合自体は立ち見で楽しみましたけれども!)

ファームの試合を見に行く途中で昇格が発覚しすれ違ったり、珍しく夜に仕事を入れた日に登板して見られなかったり、見に行く日の前後に投げることが多く、タイミングがとことん合わず、蒼空ユニ着用期限が迫るなか、最後は執念でした…。

なお、ベルドでの撮影はデー/ナイター問わず、露出が厳しいのでRAWで撮影しています。AIノイズ処理をかけて丁寧に色味を合わせた部分も妥協していません。

なお、撮影した頃は一軍でもまだ敗戦処理が多かったのですが、シーズン終盤には勝ちパターンに昇格、その際にも登板、そしてヒーローインタビューを見ることができ、応援し続けて良かったと思ったものです。
来年は背番号20をつけて、さらにチームに貢献する姿を見たいです。

桑垣秀野選手 四球の咆哮

Nikon Z9
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR
300mm、ISO5000、f/4.0、1/1600s

これはそこまで執念かけた系ではないのですが、今秋の立教野球部で存在感を見せた桑垣選手のワンシーンです。

四球を選び出塁する場面で味方ベンチに向けて見せた表情なのですが、四球のあとは撮影していても、ボールデッドになることもあり撮影する側の集中力が途切れがち。
その中でも自分の集中力をしっかり残していた、という点で選びました。

中﨑響介投手 第一代表の奪三振

Nikon Z9
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR
AF-S TELECONVERTER TC-14E III
420mm ISO1000 f/5.6 1/2000s

【リスク】
・奪三振一点張り
【改善点】
・響介のリアクション(?)

彼が入社以来、都市対抗予選は2年連続で予選落ち、補強もされず、でもずっと「響介が東京ドームで投げる姿を見たい」と思い続けていました。

その思いは、3月の東京都企業大会で優勝で膨らみましたが、その後の故障で暗雲。4月上旬の四国大会は帯同せず不安が募るも、5月中旬の東北大会で復帰登板。そして迎えた都市対抗予選を勝ち続け、迎えた第一代表決定戦。
この頃には「響介が東京第一代表の胴上げ投手になるのを見たい」という気持ちが大きくなっていました。

その一連の流れをどう撮るかを考え、ブルペン、マウンドに向かう背中などアングルを変え、最後は奪三振で決めてくれるだろうと思い、バックネット裏に張り込み、この写真が決まりました。

ただ、響介のかわいいところは、こういう歓喜のシーンに慣れてないので、ガッツポーズが本人も認めるほど超絶ダサかったんですよね(笑)

慣れることは新鮮さを失うことでもあるので良し悪しありますが、響介のガッツポーズは、この先、何度も見たいものです。

Nikon Z9
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II
70mm ISO1250 f/3.5 1/200s

こちらはおまけの写真。伊藤智也選手、小林昌樹コーチも含めた立教OBで、第一代表に与えられる青獅子旗と、第一代表の表示が灯るビジョンを合わせて。絞ろうとしたけど、70mmで背景とこの距離では無理でした笑

松本幸一郎選手 17年目の一発

Nikon Z9
AF-S NIKKOR 300mm f/4E PF ED VR
300mm、ISO640、f/4.0、1/2000s

今年の、いや、歴代の個人的金賞です。

【コスト】17年間の歳月
【改善点】レンズをサンニッパにする。それ以外は思いつきません。

大学同期が神宮球場で放ったホームランに「これ以上の野球写真は、気持ちの面からもシチュエーション面からも撮れないかもしれない」と感じてしまった、今年ナンバーワンの写真です。

東芝が神宮球場で公式戦をする可能性があるのは、3月のJABA東京スポニチ大会および東京六大学対抗戦のみ(ヤクルト一軍との非公開練習試合はありました)。
それも、西関東地区で前年の地区内成績やチーム方針で出場するかどうかが変わります。

コロナ禍では見たい試合も無観客試合で見られないこともあり「見られる時に見る」は大切な方針になり、また30歳を過ぎると引退も遠くない現実にやってきます。

ちゃんと調べてないので不確かな部分もあるのですが、松本選手は大学時代は神宮でのホームランはなく、社会人生活11年でも神宮でのホームランは2本しかありません。

このシチュエーションはもう訪れないかもしれない、その中で17年間追いかけ続けた選手が、最高の結果を残し、それを最高の写真で記録する、しかも初めて見る光景。
この

撮影時の詳細は過去記事もぜひご覧ください。

今年撮影した写真のご紹介

順不同で並べてみました。
「自分だからこそ撮る意味がある写真」
そんな写真をこれからも追い求めたいなって思います。

JABA東京スポニチ大会 ホンダ熊本 井上剛選手 サヨナラ満塁弾
セ・パ交流戦 東京ヤクルト 中村碧聖通訳
東京六大学秋季 立教大 木村泰雄コーチ 沖政宗投手
東京六大学秋季 川端丈平捕手 4年秋で初打席初安打に喜ぶ渡辺大翔外野手
ファーム公式戦 阪神甲子園球場 オリックス 中川颯投手
オープン戦 JR四国 吉岡広貴選手 日本生命 山田健太選手 同期の再会
東北楽天 荘司康誠投手 エスコンフィールド北海道のブルペン
夏のBチーム練習 三沢大成外野手 トスバッティングで振り込む姿
埼玉西武 田村伊知郎投手 奪三振でピンチを切り抜け無失点リリーフ
東京六大学秋季フレッシュ 得点に沸くスタンドの上級生
東芝 竹間心マネージャー 日本生命 竹間容祐コーチ 最初で最後の公式戦親子対決(今の所)
東北楽天 荘司康誠投手 試合前の遊園地を背景に投球練習
オープン戦 ホンダ 佐藤竜彦外野手 東芝 松本幸一郎内野手
横浜DeNA 中川颯投手 自主トレ 投球練習
東京六大学審判講習会 田澤央義審判員
U-15 JAPAN 伊藤翔大コーチ トライアウトをブルペンで確認する背中
都市対抗野球大会 NTT西日本に補強された三井健右選手
安定の打撃フォームから彼らしいライト前ヒット
オープン戦 桜咲く立教大学グラウンド

それでは良いお年を。
(んー、改善点を克服しようと思うと、やっぱり機材力や座席確保と言ったコストがどうしてもかかるので、趣味をどこまでするか割り切って、仕事にするかどうかも考えものですね、とにかく来年はしっかり稼ぎます)

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継続した撮影活動のため定期的に機材の点検修理を行っています。 もし私のご活動をサポートいただける方がいらっしゃいましたら、機材経費に充てさせていただけますと幸いです。