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Hej, välkommen till mej!(やあ、歓迎するよ!)

※ Instagram からの転載です

作:Inger och Lasse Sandberg(インゲル&ラッセ・サンドベリィ)
1974年印刷(発表:1973年)

夫婦で数多くの絵本作品を残してきた、妻のインゲル(文章担当)と夫のラッセ(イラスト担当)の夫婦絵本作家コンビによる教育的な内容の絵本です。

この本がつくられた1970年代、スウェーデンの絵本は単純に子供が楽しめるようなストーリーを伴った娯楽的な要素としての機能だけでなく、教育的な要素を学ぶ機能を求めるようにもなってきたようです。性、死、環境汚染、戦争などの「子供が知るには早い」と思われがちなテーマを扱う絵本が登場します。

インゲル&ラッセ夫妻の手掛けた作品にはもちろん娯楽的な作品も多いですが、教育的な作品の制作にも積極的な姿勢を見せていました。

スウェーデンは積極的に移民を受け入れてきた国の一つで、第二次世界大戦後に急速に必要となった人的リソースを補うために多くの移民がやってきたのですが、言葉や文化が違う知らない国にいきなり移り住むことのハードルが高いことは想像に難くありません。

『やあ、歓迎するよ!』という絵本は、端的に言えば差別をテーマとした物語。読み手は、家族と一緒に異国の地へ引っ越しをすることになったという設定のもと、言葉や文化がわからないまま生活をする様子を疑似体験します。

そして勝手のわからないまま学校へ行くと、子供たちが話しかけようとしても言葉が通じず、なんだか孤立してしまい、最後にはケンカに発展してしまうかもしれない。みんなで仲良くできるハズという理想の風景ではなく、そんなシビアな状況に陥ることも現実であることが描かれています。

もし自分が異国へ渡ったら、そんなツラい経験をするかもしれない。じゃあ、スウェーデンに来た移民たちにはどう接してあげたらいいと思うか。そんな問いかけをする絵本です。

スウェーデンという土地にちょこっと住まわせてもらった経験から言うと、個人的にはやはり異国へ渡った側も溶け込むための努力をするべきであるとは思っています(実際は上手に立ち回れない人間だけど)。

ちなみに。表紙には各国の言葉で挨拶が。一番左上には日本語で「やあ」と書かれています。


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