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自分の中の悪魔を追い出そうとすれば、奴らはどんどん強くなる。だから、悪魔の存在を認めて共存するしかない。


私は決して「良い人間」ではない。むしろ「悪い人間」の部類に入るんじゃないかな。

何故なら、今まで息子に殺意を覚えた事が何度もあるから。

ただ実行していないから逮捕されていないだけで、心の中は犯罪を犯してしまう人と何ら変わりがないと思う。


自閉症児を育てるのは想像を絶する辛さで、周りに協力者や理解者が居なければ育児を続けることは難しい。

育児の常識などというものは全く当てはまらない中、世間の人達から「親の育て方が悪い」と非難され、頼る事もできず孤独に頑張っている人がほとんどだから。


うちの子の場合は知的な遅れがあまりなく、見た目も普通で話すこともできるけど行動が異常。

目に見える障害を持っている人達ももちろん大変だと思うけど、目に見えないが故に他人から理解されない。その辛さは当事者にしかわからないだろう。

産まれてすぐからずっと他人に否定されて続けてきた息子は、未だに他人を信じられないし、私以外の全ての人に心を許した事がない。

もちろん家族でさえも。


私だって我が子の為に努力を重ねてきた。

子供の気持ちを理解しようと勉強したり、社会に適応させるように療育に通ったり。何度も何度も同じ事を理解できるまで教え続ける毎日。

でも、なかなか変わっていかない現実。

夜は夜泣きで眠れず、昼間はこだわりが強すぎて予定通りに行動はできず、何度もパニックを起こして暴れるから身体はアザだらけ。


夫は家事も育児を手伝わない。それだけならまだ良いが更に私達を苦しめた。

息子が夜泣きすれば眠れないとキレて壁を壊すし、休みの日に家で息子が暴れると冬だろうが裸足のまま私達を外に追い出して鍵をかけてしまう。
外出先で息子が暴れれば、怒って自分一人で車で家に帰ってしまう。


そういう事を平気でできる人だった。


代わりになる人は居ない。逃げる事はできない。絶望する毎日。

そして結局自分が病んでしまう。心も身体もね。


正論をぶつけてくる人は好きなだけやってくれて構わない。

人間というのは自分が実際に経験したことしか理解できない生き物だから、否定的な意見を言う人をあえて説得しようとも思わない。

この世には理解してくれない人は必ず存在するし、それで良いのだと思う。


他人は変えようと思っても変わらないし、根本的な問題はそこじゃないんだ。


「こうありたい自分になれない私」

理想の自分と現実の自分とのギャップが私を苦しめる。


周りの人の声を聞かないようにして自分を保とうと思っても、自分の内側から聴こえてくる声が私を責める。

「この子さえいなければ」とか「全く可愛いくない」とか思ってしまう私を否定する。

「親として失格」とか「精神異常者だ」とか「愛のない冷たい人間」などと責め続ける。

昼も夜もその声から逃れることはできなかった。


他人には心の中を隠せても、自分にだけは隠せない。

清い心を持とうと意識するほどに悪魔は強くなっていくんだ。


「いつも笑っている優しいお母さんでいたい」

「子供は無条件に愛すべきもの」

その考えは素晴らしいと思う。

でも実際、私にはそれができない。私は頑張っても善人にはなれないんだ。



息子が5歳の頃「ペアレントトレーニング」というものに参加した。

その時初めて、息子と同じような子を持つお母さんに出会えた。

日々の辛さを理解してくれる人が出来て本当に嬉しかった。


私は彼女に話した。

「子供が可愛くないし、居なけれいいと思うし、毎日死にたくなる」って。

そしたら彼女は

「私もそう思うよ、同じだよ。誰もわかってくれなくて今までずっと辛かった」って。

それでお互いホッとして、沢山たくさん泣いたんだ。


自分の中の負の感情を認めるのは難しい。

でもそれを認めたらとても楽になれた。

これが本当の私の気持ちなんだ。

私は良い人を演じてきた、ただの悪い人間だった。



正しさって何だろう。


自分が持っている正しさが、自分自身を攻撃してきたら…

それは私にとって正しいとは言えないんじゃないかな。


自分のことを責めてくる正しさをちゃんと見つめてみよう。

それはもともと私が持っていたものなんだろうか?

もしかしたら、他の誰かから洗脳されたものかもしれないよね?


世間の正しさなんて全然あてにならないんだ。


自分で自分を否定することで人間は絶望する。

生きる気力を奪われてしまう。


だから世間の人達が肯定してくれなくても構わない。

私はこれからも、悪魔の心を抱きしめて共に生きていくんだ。



私は知っている。

自分で自分を肯定できれば、人間は希望を持って生きられるってことを。



梨々香

感覚が過敏な私は、周りの影響を受け過ぎてしまうのでリアルで多くの人と触れ合うことができません。 だから直接会うことなく皆さんの考えを知ることができるこのnoteは私の学びの場。沢山の栄養を頂いて今もスクスク成長中です。 こんなステキな場所に居させてくれてありがとう。