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ホラー漫画家日野日出志デビュー55周年記念コラボ企画。『蔵六の奇病』キャラクターを能面に。

漫画家日野日出志(76)のデビュー55周年を記念し、日野プロダクションと能面師・麻生りり子(47)のコラボ企画作品として、『蔵六の奇病』(少年画報社)のキャラクター「蔵六」の面を制作しました。同作品は東京駅八重洲北口・徒歩3分の田中八重洲画廊にて、11月15日(火)~21日(月)の7日間、能面展『中村光江と四人の弟子展』にて、展示されます。入場無料。

 


【作品概要】

「蔵六面」 2022年作
長さ22センチ、幅17センチ、高さ9センチ。
木材(ひのき)、水性顔料(顔彩)

 

  

【『蔵六の奇病』 あらすじ】

いつも村人たちにバカにされている純朴な青年・蔵六は、絵さえ描いていられれば幸せで、いつかこの色とりどりな自然や生き物をそっくりの色で描いてみたいと願っていた。
ある日、蔵六の顔や体に毒キノコのような七色のでき物ができ、異形となった蔵六は村八分にされ山へと追いやられる。痛みに苦しみながらも蔵六は、七色の膿を絞り出し、美しい七色の絵を描き続ける。しかし、伝染するのではないかという恐怖感から村人たちは決起し、蔵六を殺しに来る。だが、そこに蔵六の姿は無く七色の甲羅をした亀が、血の涙を流しながら静かにねむり沼へと入っていくのだった。

 

 

【日野氏コメント】

漫画家を夢見て上京し1967年にデビューを果たしたものの鳴かず飛ばずの日々が続いて、これでダメだったら故郷に帰ろうと決意し描いた作品が『蔵六の奇病』です。この作品が認められ、注文が殺到するようになって、本当のプロの漫画家としてのデビュー作となった思い入れのある作品です。

 「絵さえ描いていられれば幸せ」という主人公の蔵六は、その時の自分自身の思いを投影しています。

蔵六はでき物で異形となるけれども、決しておどろどろしい怪物やモンスターではないんです。絵に対する純粋な思いとか、蔵六の哀しみとか、私が表現したかったものは、そこなんです。

 

【麻生コメント】

『蔵六の奇病』は改めて皆さんに読んでほしい作品です。日野先生とは数年前から執筆の方のお仕事で何度かインタビューさせていただいていて、その当時から蔵六についてのお話を伺っていました。

見た目の造形だけでなく、蔵六の内面をしっかりと入れ込むということを一番心掛けました。そう言った意味では、能面は精神性を表現するものなのでとても適していると感じました。

 また、能面は時間の経過を内包する存在です。朴訥とした青年蔵六、膿ができ異形となった蔵六、そしてラストには亀になる。この時間による変化を一つの面の中に入れ込み、感じられるようにしました。

 造形は大変でしたが、彩色は心湧きたつものがありました。能面をこんなにカラフルに色付けすることはないですから。蔵六には哀しみや苦しみもありますが、この七色は動植物を本物そっくりの色で描いてみたいという、蔵六が心の底から欲しがった“色”なんです。

蔵六が描きたかった桃や柑橘類など果実のような膿や、グロテスクさや生々しさを表現した部分、最後には亀になるので角質化して甲羅になりかかっている部分など、一つ一つの違いを見ていただけたらいいなと思います。


 

【プロフィール】

■麻生りり子/能面制作
1974年生まれ。愛知県出身。2018年より、能面師・中村光江に師事。2021年島熊山能面公募入選、2021年文化庁主催文化芸術による子供育成推進事業公演、2022年大槻能楽堂学生鑑賞能で使用されるなど伝統的な能面を打ちながら、創作面や能面を用いたコンテンポラリーアートを展開。脚本家。顔学会会員。
Instagram: @lilicoaso 

■日野日出志/監修
漫画家。大阪芸術大学芸術学部キャラクター造形学科教授。1946年生まれ。雑誌「ガロ」「少年画報」「少年サンデー」などを中心に、『蔵六の奇病』『地獄変』など数多くの怪奇や叙情的作品を表現し、ホラー漫画界の重鎮として人気を確立。国内にとどまらず、海外でも人気を博し翻訳作品が多数ある。近年では、叙情怪奇作家として絵本を創作するなど精力的に活動。

 

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