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ひとまわり

「まじか…」
12年は 儚いものだった。

「ねぇ、なんでそんなルックスもいいのに、付き合ってる人居ないの?」
「そんなん言うなら 付き合ってよ。」
そんなノリで付き合った。
気づけば12年。浮気することもなく、この子とずっと一緒にいるのが当たり前と思ってた。
相手が浮気したけど、戻ってくるさっっとドンと構えてたら、いつも戻ってきた。何度でも。

「何があっても、そばにいる」

それがいつしか、二人の決まり事のようになってた。

お互いが30代後半になった頃、周りの騒々しい「結婚しないの?」の問いに答えを出すかのように そろそろ…と胸がざわついた。

「あのさ〜、結婚しようか。」

シナリオはこうだ。「だねっ。」と返事されて、軽い結婚式をあげて、早めに子供つくって子供が二十歳になる頃には定年だ。

しかしだ、現実は違った。

「ごめん。結婚する気は…ないんだ。」

まじか…。いやいや、何があってもそばにいるっていう決まり事は どうなるんだ?
「情はあるんだよ。でもそれが愛情かわからない。」って…おいおい、いつからだよそれ。

ってか、早く言ってくれよ。

そんな訳で、12年付き合って ずっと一緒にいるのが当たり前だった人は、他人になった。


「ねぇ、なんでそんなルックスもいいのに、付き合ってる人居ないの?」
行きつけのカフェで 隣に座った見知らぬ客が聞いてきた。
「そんなん言うなら、付き合ってよ。」
なんて、お前には絶対言わない。

あいつだから言ったんだ。


#小説 #短編小説 #恋愛 #ショートストーリー #失恋

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