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「湿った土のにおい」「薄く張った氷を割るときの音」「大切なオルゴールの箱」

ジュリア・キャメロンという人の書いた「ずっとやりたかったことを、やりなさい」を知っていますか?

奇妙な生き物が植物の新芽に水をやっている表紙をめくるとカバーに「どんな人でも、何歳でも、創造的に生きられる」と書かれています。
原題はThe Artist's Way。
「人はみな創造的な生き物」だとする著者は、本書の通りにモーニング・ページやアーティスト・デートを行うことで、創造性の回復を促し、最終的には自由に導いてくれるといいます。

Youtubeでオタキングこと岡田斗司夫さんや、オリエンタルラジオのあっちゃんが紹介していて気になって、図書館で借りたのが去年の春。
紹介されていた「ずっとやりたかったことを、やりなさい」そのものはなく、仕方なく「いくつになっても、「ずっとやりたかったこと」をやりなさい」を借りたのでした。

ふたつの本の違いは、前者が全世代を対象にしているのに対し、後者は定年退職後や熟年期を迎えた人向け。私は30歳なので、合ってないかもしれないと思いながら、しぶしぶ読み始めました。実践し始めたと言ったほうがいいかもしれません。ジュリア・キャメロンの一連の本――ネットで検索すると、先ほど挙げた二つの本以外にも二冊シリーズ本を見つけました――は、読むことが目的ではなく、体験することに意味があるからです。

モーニング・ページは朝、ノートに思いついたことをなんでもいいから書いていく作業。私はこれを一年、毎日ではないですが続けました。
最初は自分の文章が嫌いで、こんなものしか書けないか……と落ち込みましたが、日々書いているうちに思考が整理されてきてだんだん自分の考えていることも悪くないと思えるようになりました。岡田斗司夫さんも言っていましたが、本は買わなくてもいいから、これだけやってみるのもおすすめです。

アーティスト・デートは週二時間ほど古い映画を観たり、水族館やギャラリーに足を運んだりして、自分自身と向き合うことです。大事なのは必ずひとりですること。
正直あまり実践できていませんが、水曜日と土曜日にしか開館しない図書館に行き、おばあちゃんくらいの歳の女性が集まる朗読会に飛び入り参加、「番ねずみのヤカちゃん」を聞かせてもらったり、ずっと行きたかった花屋さんに行って、店主さんと何気ない会話を交わしたり、大津のホテルに一泊して周辺の写真をひたすら撮ったり……。行く度に何か発見があって、新しい扉を開けているような自分が成長しているような感覚になりました。

このほかにも、「いくつになっても、「ずっとやりたかったこと」をやりなさい」には、自分の年齢を12で割ってセクションごとにシンプルな質問に答えていく「メモワール」があります。去年の春に始めたもののほったらかしにしていたので、もう一度初めからやってみることに。

私は30歳ですが小さすぎると記憶がないので、0~3歳を一つ目のセクションにしました。
「どこに住んでいましたか?」から始まり、「誰があなたの面倒を見ていましたか?」など、いろいろな質問がありますが、私が気になったのは「この時期にかいだ、印象的な匂いはどんな匂いでしたか?」と「この時期に聞いた、印象的な音(声、歌、汽笛、犬の吠え声など)はどんな音でしたか?」でした。

すぐに思いついたのは、「湿った土のにおい」「雨上がりのにおい」「家族の自分を呼ぶ声」「冬の朝、プランターに張った薄い氷を割る音」……書き出していると、音や匂い以外にも印象的な光景やもの――「梅の木がつくる木もれ日」、「大切にしていたオルゴールの箱」と、そこに入れていた「光にあてるとキラキラする水色やピンク、オレンジの貝の形をしたおもちゃ」――があることに気づいてなんだかうれしくなってしまいました。

以前から絵本や児童文学が書きたいと思っていた私は、いつか「私のたからもの」を集めた絵本を作りたい!と少しやる気が湧いてくるのを感じました。ひとつ実現したい夢が増えた瞬間でした。

まだメモワールは12週あるうちの1週目。これからも夢はどんどん増えるでしょう。考えているだけで人生が楽しくなってきます。

ということで、ジュリア・キャメロン著「いくつになっても、「ずっとやりたかったこと」をやりなさい」を自分の体験を入れながら紹介しました。

この手の本は苦手だったのですが、いまはやってみてよかったと思っています。創造性をもっと開放して、自分自身のなかに眠っているアーティストを呼び覚ましたい。そんなことを思うのでした。



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