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猫のうずは、天使になりました。(FIPドライタイプ)①

2020年9月末。
私たち家族に、体重1.8キロに満たない小さな小さな子猫が加わりました。
我が家にとっては2匹目の猫です。
名前は、うず
FIPドライタイプでした。


まずはじめに、お詫びをさせてください。
これは、猫FIPが完治したお話ではありません。
うずは、生後9か月で、天使になりました。


正直いって、切ないお話です。
動物を可愛がっている方、特に猫を飼われている方には、辛いお話だと思います。

でも、もしかしたら、同じようにFIPの猫ちゃんと暮らしている方に、届く何かがあるかもしれない。少しでも、役だつ情報があるかもしれない。

私自身、FIPの猫ちゃんと過ごした方々のブログに、何度なぐさめられたか分かりません。
何度も泣き、共感し、辛い気持ちを救われました。心の準備のひとつになってくれました。
ブログを書いてくださった皆様、ありがとうございました。


その感謝も込めて、私も書かせてもらいます。
どこかのあなたに、届くことを願って。


出会い~2020年9月末


うちの先住猫チャロはとても寂しがり屋。
お友達がもう1匹いたら、少しは寂しくないのではないか。
そんな話を家族でずいぶん前からしていました。
私自身は、多頭飼いは乗り気ではない人間でした。リスクのほうが大きいと思っていたからです。

しかし、先住猫をとにかく優先すること、長い目で見てゆっくり慣らしていくこと、どうしても仲良くなれない場合など色々相談し、家族総意で2匹目をお迎えすることに決めました。
インターネットで保護団体と連絡を取り、譲渡をしてもらうことになりました。

9月の最後にやってきた、薄いキジトラ柄の女の子。
スマートどころかやせぎすで、毛も少しパサついていました。
匂いも、長く室内飼いされた猫の割にはキツく、少し咳のようなクシャミのような症状がありました。
連れてきてくれた方が「ちょっと風邪気味だが、お医者さんに見せればすぐ治ります」と言っていましたので、そうか風邪の影響なのかな、と自分を納得させました。


でも、ものすごく人懐っこく、愛想もよく元気。
ケージに入れた瞬間に駆け回り、立派なうんちもしてくれました。
家族はすぐに気に入りましたが、先住猫のことも考え、1ヶ月くらいはトライアル期間にしてもらうことにしました。

子猫はやせっぽちですが、元気いっぱい。
甘えん坊で、人がいなくなると呼んで鳴きました。
あまりに素早く運動神経がいいので、息子が「うず」と命名しました。うずまきのように駆け回るからです。
うずは、ふすま一つへだてて、少しずつ先住猫チャロと交流を増やしていきました。



兆候~譲渡後1週間


うちに来て数日が経ちました。
クシャミなのか咳なのかが気になります。少し目から涙も出ています。風邪とのことだったので、健康診断なども含め、かかりつけ医に行きました。
インターフェロン入りのお薬をもらって様子を見ることになりました。


ところが。
病院に行った翌日のことです。
昨日まで元気だったのに、ご飯を食べない。もともと食が細いというか食べ物に興味がないのか、ご飯を残し勝ちだったのですが、元気がない。走り回るなどをしないのです。
小さな体でじっとしている姿に不安を感じ、すぐにまた動物病院へ。


…実は、うずが来てすぐから、私には気がかりなことがありました。

匂いがキツい。施設から来たせいなのかとも思っていましたが、お腹が悪いような匂いがずっとしているのです。チャロは生粋の野良でしたが、一度も臭いと思ったことはありませんでした。
毛がパサパサで静電気がすごい。子猫で毛が細いからかな、と考えていましたが、栄養が足りないのかも…という気もしてきました。
爪がしまえない。爪を切っても、ささります。よく色んなところに爪が引っかかって取れなくなってもがいています。子猫にはあり得る話らしいですが、爪をしまう筋力がないのではと気になっていました。
肉球がカサカサでひび割れている。走っていると止まれず、色んなところに激突していました。よく見ると足の裏がひび割れています。風邪のせいかな…とよく馬油をぬってあげていましたが、治らないので気になっていました。
食が細く、体重がふえない。1.7キロくらいから、全然増えないのです。見るに見かねて、子猫用チュールをフードに付けて食べさせていました。

このように色々なことが気になっていたので(家族には言わないでいましたが)、急に元気がなくなった時、不安が一気に押し寄せてきました。


動物病院に連れていくと、「風邪でしょうね」と言われました。微熱(38度ありました)があるので、そうすると一時的に食欲が落ちますから…とのこと。念のため再度エイズや白血病も再検査してもらいましたが、陰性。
インターフェロン入りお薬をもらい、とりあえず様子を見ましょうと言われました。
帰りに嗜好性と栄養価の高い子猫用缶詰などを買ってかえりました。…一抹の不安を抱えながら。

…このころ、不安になって、譲渡してもらった団体へ問い合わせをしました。兄弟猫で同じような症状の子はいませんか、薬をもらっても風邪が悪化している気がする、と。
「そこのお医者さん、インターフェロンの注射打ってくれないんですか?」と不審な雰囲気の返答が返ってきました。お薬はあげているのですが、、としか言えませんでした。それでも電話をくださったり、親身になってくださいました。


堪えきれない不安~譲渡後2週間


1週間たちました。
具合は軽快しません。食欲は相変わらず細く、来た時のようには走り回りません。猫じゃらしを見せてもあまり反応しません…子猫なのに。
祈るような思いで、うずを病院へ連れていきました。

先生は首をかしげました。
「風邪が長引く子はいるにはいるんだけど…特に、子猫には多いんだけど…でも、気になるのは、この子は体重が増えていないんだよね。家に来て、もう2週間なのにね…。」
先生は、熱は下がっているし、また少し様子を見よう、と言いました。
でも、私はもっと何か方法はないのか、治す手立てを探ってほしいと思いました。そこで、血液検査をしてもらえないかとお願いします。

小さな体の細い腕に、大きな注射針を刺され、うずが可哀そうでなりませんでした。でも、どうにかしてまた元気になってほしかったのです。できることは全部やりたかったのです。

血液検査の結果を持った先生は、難しい顔で、気になる結果が出ていると告げました。
FIPかもしれない、と。

FIPとは
猫伝染性腹膜炎のこと。
猫腸管コロナウイルス(猫の9割近くがキャリアである、ありふれたウイルス)が体内で突然変異、悪性に変わると伝染性腹膜炎(FIP)となる。
FIPの猫からFIPが伝染するわけではなく、あくまで伝染するのはふつうのウイルスのほう。そのため、検査が非常に難しい(FIPの確定診断がしづらい)。
腹水や胸水がたまるウェットタイプと、それ以外の様々な症状が出るドライタイプがある。
一度悪性になると良性になることは極めて稀で、早ければ数日、長くとも数か月で命に関わる病気。
現在は寛解するような特効薬、予防法は確立されていない。海外ではMUTIANという有用薬があるが日本では未承認薬のため、入手が難しく非常に高額な治療となる。

血液検査の結果、貧血が見られるけれど、風邪の場合はたまにある数値。それよりも、アルブミンとグロブリンの割合が非常に気になる、とのことでした。

ダラダラと続く食欲不振と無気力な状態、そして微熱、目の症状。可能性として、FIPが考えられる。
その病気は確定診断が難しく(胸水や腹水があれば診断率は高い)、そして確定したからといって、助かる治療法は現在ありません。

私は、自分の気持ちをどこに持っていいか分からない状態で、家に帰りました。検査をしてもらうのはやめました。
先生の見解が違っていますように。何かの間違いで、単なる風邪でありますように。それだけを願って泣きました。息子には、まだ何も話さないことにしました。


気づけば、トライアル期間が終わろうとしていました。
FIP疑いであることは譲渡団体の担当者さんに報告してあったので、「トライアル期間、延長されますか?」と遠慮がちに連絡がありました。

不治の病かもしれない。
でも、うずはもう、うちの子でした。
いいえ、トライアル終了でいいです。
うずは、私たちがきちんと責任もって育てていきますと伝えました。


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