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07. 第一レグ 一位でゴール(タンジェ-カーボベルデ)

現地時間7/3 15:25、MILAI(鈴木晶友スキッパー、中川紘司コスキッパー)は無事にレグ1のゴール地ミンデロ(カーボベルデ共和国🇨🇻 サンビセンテ島)に到着した。レーススタート後、ジブラルタル海峡を抜けるあたりで首位に立ってからは一位を譲らず、逃げ切りでゴール。快挙である。

記念すべき第一レグを見事1位で飾った Team MILAI (MILAI Around The World)

まずは何より、無事にゴールした事がとにかく喜ばしい。そして一位!これはコロナで延長された期間も含め、準備を進めてきた賜物だと思う。ちゃんと準備をしてきたことが、まずこの第一レグの結果に繋がったと感じられるのは嬉しい。

↓ゴールの様子

勝負を分けたマデイラ諸島回航


トラッキングでは過去の航跡を時間と共に振り返れるのだが、おぉーーと思うのは、マデイラ諸島を抜ける時の航路だ。素人目にも、ここで他の船を引き離すことに成功したと思う。スタートして暫くした頃は「ここでジェネカー(船の前方に出す、追い風を捉えるための大きなセール、パラシュートみたいなやつ)上げたら後続艇引き離しちゃうかなぁ〜」なんて余裕なことを鈴木は言っていたが、その後、Sec Hayai(NLD🇳🇱)やWisky Jack(CAN🇨🇦)にぐんぐん追い上げられていた。艇速も相手の方が速く、やばい、抜かされるかも、と言いながらマデイラ諸島海域へ突入。ここの戦略が勝負の分かれ目になった。

マデイラ諸島は奄美大島程度のサイズながら1,900m弱の標高があるため風が遮られ、島の南側が無風地帯(通称「ブランケ」、ブランケッドコーンの略。「コーン」は、無風地帯が三角形に広がるからだそう)になる。MILAIも無風地帯には捕まって暫くフラフラしていたのだが、他の艇に比べて短い時間(4時間程度)で抜けている。後にYouTubeの中で、「定石通り島から離して(大回りして)進んだ」、と言っており、確かに航路を見直すと、最も外から島を回っている。これがヨットレースの「最短距離が一番早いとは限らない」(風によっては「急がば回れ」になる)というやつかー!と、とても面白かった(※)。

マデイラ諸島を抜けた話を解説しているYouTube。
https://youtu.be/2EyDeweTMko

出発前からマデイラ諸島は大回りすることに決めていたそう。BULKHEAD magazine の中川選手のコメントにその解説がある。

https://bulkhead.jp/2022/07/90948/

※気象予報士セーラーのT氏によると、「分かっていても大回りするのはかなり怖い」そうだ。勝負を賭けたい方としては、内から抜かれるかもしれないというプレッシャーは半端ないという。呑気に「そっか〜、急がば回れだね!」という話では無いようだ。MILAIは「自分達の航路にいい風が吹いた」と話していたが、予測のもとに計画を立てて実行しても、最後は、というところはあるのだろう。今回はMILAIに女神が振り向いてくれた。

他艇との交流


レース中は他の船とメールでの交流もあるらしい。2番のSec Hayaiからは「俺たちの船には焼きたてのパンがあるから100マイル待ってくれたらあげるよ」と連絡があったらしい(「ビール早く飲みたいから先行くわ、ごめーん!」とお返ししたそう) 。その後も、

🇳🇱Hayai「A2とA6変えながら頑張ってるんだけど、全然追いつかない。MILAIは一体何を使ってるんだ?(※)」
🇯🇵MILAI「ふふふ、全然変えてないよ」
🇳🇱Hayai「えー!マジか!」

とか、メッセージが行き来したらしい。他の船は、ライバルであると同時に仲間である。これから先も長いので、みんなでワイワイ励ましあいながら、世界一周を達成して欲しい。

※これはスピンネカーと呼ばれる、追い風用のセールについての質問。QuantumSailsさんの説明によると、A2はマルチなセールのよう。

http://www.wattsmarine.jp/service/quantumsails/racingsails/

A6が載ってなかったので鈴木にその差を聞いてみたが「A2はマストヘッドで、A6はフラクショナルで、マストの途中から上げるスピンで、サイズが全然違うんだよー」とのこと。マストの途中から揚げる??とか、素人には難しい話である。まぁなんせ、風の強さや向きにより、ベストの走りをするセールを見定めて交換しながら走るのが本来はセオリー。

1位でゴールしたセーラー(たち)の役割


1番にゴールしたセーラーたちの大切な役割として、「後続艇のお迎え」がある。2019年ミニトランザットの時は、1番にゴールしたアンブロージオが60艇超の船を全部出迎えてセーラーと共に毎度飛び込んで、と、1位の振る舞いを貫き通していて感心した。1位だからお迎えの役割だね、というと、「飛び込むのは多分ないよ!あれはミニトランザットのほら、学生みたいなノリだから!」と言ってました😂

「学生みたいなノリ」の映像がこちら。2019年ミニトランザット、最後のフィニッシャー: ジョージの到着時の「ドボン」。「決して海に落ちるな」と言われ続けてレースに臨んだセーラーたち。大海で海に落ちることは、すなわち死を意味するからだ。ゴール地のマリーナにたどり着き、喜びの声と共に海に飛び込むのは、その緊張感からの開放も意味しているらしい。既に到着しているセーラーたちは、到着したばかりのセーラーを賞賛し、一緒に海に飛び込む。ジョージはこの時64歳、到着したばかりでヘロヘロなはずなので、大変だったことでしょう。。。😂
https://www.facebook.com/100001471991717/posts/pfbid02jAqvhiZRbxzuHgxGvJUAJLGyRKoRBNwwb828aLAbrSCZrcVfRww4yZUjXLsUCGR2l/?d=n

2位のSec Hayai をお出迎え🇳🇱
Sec Hayai はオランダチーム。オレンジのシャツがいつもとても目立つ。元気でタフで、いつもスマイル。

3位〜6位のチームもみんなでお出迎え。

写真はGlobe40公式instagramより。

到着したミンデロでは、セーラー同士よく話をして、出発前より仲良くなっているらしい。みんなで無事に、地球一周するんだよ〜(2回目)。

「1位だと扱いが違う」とも言っていた。お迎えの船が沢山やってくるし、取材の数も多いらしい。1位ってやっぱり凄いんだな、と、しみじみ言っていた。カーボベルデの海洋庁?の記者会見にも1位のセーラーとして参加。カーボベルデに来る事ができて嬉しいという事と共に、きちんと笑いを取って和ませることにも成功した、と言っていたので安心しました。ちなみに写真の真ん中に写っているのは、海洋大臣です。腕太い!腕のタトゥーが漁師っぽさを感じる(安全祈願で入れるような感じ)けど、元々漁師さんだったりするのかな?

「はじめての記者かいけん in カーボベルデ🇨🇻」
鈴木のネームカードには「Capitao」と書いてある。
日本とカーボベルデの間には、自然エネルギー発電の技術提供などで良い関係があるようだ。

写真は Ministerio do Mar 公式Facebookより

このページではしょっちゅう会議や記者会見の話が投稿されている。海が大切な環境であり、資源であり、力を入れるべきところだという意志を見て取れる。

おまけ


今回のYouTubeの中で一番楽しい(私の独断)ものはこちら。ゴール直前、セーラーたちも元気でテンション高い。レグごとにやってくれるんじゃ無いかなと、次回も期待。

第一レグ、お疲れ様でした&本当におめでとうございました!

#ヨット #世界一周 #旅 #応援 #外洋セーリング


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