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つなごうとした息子の手を、振りほどいた(2)

前回の記事はこちら。

すべての用事を終え、家に帰ってくると、息子ももう帰ってきていた。
でも、息子の顔は見たくなかった。

そのまま、こども園に娘を迎えに行く。
帰ってきてからも、私は娘とずっと1階にいた。
息子は2階でパソコンをしていた。

息子の顔は見たくない。会いたくない。
このモヤモヤした気持ちをどうにかしたくて、私は市の子育て相談に電話をしていた。

相談口で今日1日の出来事を話した。「迎えに来てください」と言われて、再び学校に戻った後のところまで話が進んだ時、私は泣いていた。

「息子の"え、お母さんなんできたん?"って顔と、"帰っていいよ"にものすごく腹が立ったんです。約束破ったのあなただよね、お母さんはあんなに頼んでいたのに。あなたのことを考えてここまで寄り添ってきたのに、その仕打ちはなに?お母さんのことをなんやと思ってるの?お母さんにならなんでもしていいと思ってるの?そう思ったら、自分がここまでやってきたことがバカらしくなってしまって。私、なにしとるんやろうって。」

相談員さんは、私の気持ちを受け止めてくれた。
「お母さん、よく頑張っていると思いますよ。本当に。お子さんに寄り添って、支えてこられたんですよね。でも、お母さんにだって時間はあるし、行かなくちゃいけないことだってありますもん。大変でしたね。」

そして、「担任のT先生とも話をした方がよいかもしれないですね」と言われた。


その後、学校に電話してT先生とも話した。
T先生と話している最中も、私はずっと泣きっぱなしだった。
泣いている私を心配して、娘が頭をなでてくれる。
2階から息子も降りてきた。

先生の話では、4限目からは気持ちを切り替えて、授業も頑張っていたそうだ。算数の時間はAくんと、いろんなものの長さを測っていたらしい。

先生は「無理に引き離したのがやっぱり良くなかったんですかね、他の先生にも私の方から話しておきます」「お母さんも、お疲れ様でした」「明日も頑張ろうな、と話したんですよ」と言ってくれた。

散々泣いて、話したにも関わらず、私の気持ちはまだ落ち着かない。
1階に降りてきた息子にも、「先生と話しとったんや」としか言えなかった。


夫が帰ってきてから、息子とよく話をしてもらった。
「お母さんにだって時間はある。いつもいつもケンにずっと付き添うことはできないんやよ。そんなんじゃお母さん、仕事もできない。でもそれじゃ困るやろ、生活していくのにお金は必要やもん。それはわかるよな?」

そうして、「明日は8時に学校に行く。8時20分まで図書室で本を読む。その後に支援級に行き、そこでお母さんと別れる」という約束をしたようだ。

夜寝るときも、私はまだモヤモヤがおさまらず、息子が話しかけてきたが「お母さんはもう寝る」と言って息子と話はしなかった。


そして今朝。やっぱりまだモヤモヤしていた。
いつもは私が「制服着んなんよ」といって制服を渡すのだが、8時前に制服を着ている息子。
いつもは私はカバンを玄関まで運ぶのだが、いつの間にか用意してあった。

8時になり、息子が「学校行こう、お母さん」というので、私も家を出た。
歩き始めると、息子から手を繋ごうとしてきた。
でも、その手を私は振り払った。
まだ、怒っていた。まだ、モヤモヤしていた。まだ、許せなかった。

何も言わず、ただ歩いた。
息子はその後ろとただ、ついてきた。
そうして、学校に着いた。


学校に入って、まずは図書館に向かう。
息子は、本を読みだす。
私はその前に座る。
図書室の先生が来る。「今日は早いのね、星野くん」と声を掛けてくれる。

8時15分に担任のT先生が顔を出した。
「おはよう。今から、家庭科室で明日のかき氷づくりの準備するんや。ケンもこんか?」
「まだ行かん。20分になったら。」と息子が答える。

「今日は8時20分まで、図書室で本を読むって決めてるんです。その後に、教室に行くって。」私が補足した。
「そうか。じゃあ、待っとるな」と言って、先生は戻っていった。

「8時20分やよ」と私が声を掛けると、息子は読んでいた本を本棚に戻し、「じゃあ、行こう」と言って図書室を出た。


教室に入る。
いつもは私がカバンから持ち物をだして準備するのだが、息子は何も言われなくても片づけをはじめた。
そして、「家庭科室までついてきて。そこで、お母さんと別れるから」と言った。
家庭科室までついていく。Aくんが「ケンや!」と息子を見つけてくれた。
「じゃあね、お母さん」
そこで、私は息子と離れた。

もう少し、続きます。

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