人より時間がかかる
僕はこの感覚を知っている。変化しない景色。同じところをただ回り続けて、何の記憶も残らない無為な生活。空気と飯を入れて出す以外、目的を失った人間が至るのは虚無なのだ。
母は東京は息子を送り出す時に「人間生活をやめないこと」を約束してきた。 コロナ禍を含めたこの数年で、この言葉の意味を痛感している。人とのナマの交流を失うと、生活からは色が失われる。
虚無からは何も生まれない。花が咲くのは、種を蒔いて、水をやるからで、ただ土を眺めているばかりでは、何も実らない。
生活を動かす。人と付き合う。外に出る。「人の間にいること」が人間の条件なら、俺はまだ人間でいたい。「自分はここにいていいのだ」と自分を許せるようになりたい。自意識と実際の生活との折り合いをつけられる大人になりたい。
多分まだ成長の途中で、これは失敗ですらない気がする。まだ幼くて未熟なだけ。比べたところで意味がない。俺は人より時間がかかる。
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