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【映画】LAMB

第74回カンヌ国際映画祭のある視点部門でPrize of Originality受賞作。ジャンルはなんなんだろ、ホラーではあるけど、凡百のホラーと比較すると「ちょっと違くね?」という違和感もある、なんだか不思議な映画でした。

牧歌的なんだけど禍々しくなっていきますし、おとぎ話のようでもあり神話のようでもある。ホラーの「恐怖を掻き立てる衝撃的なシーン」みたいなの例えば貞子がTVから現れたり、ゾンビが襲い掛かってきたり)はないです。10の恐怖がないけど、全編通して1が2に、2が3に、3が4にって感じで違和感と不安感が徐々に徐々に蓄積していく感じ。

宗教観や民族観なんかもわかればもっと深い考察が出来るのかもですが、そんな知識もないのでさらさらさらーっと書いていきます。


物語

アイスランドの山間、羊飼いの夫婦イングヴァルとマリアが暮らしています。ある日、2人が羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かが産まれてきます。顔と右腕は羊、それ以外は人間という、それはそれは奇妙な…。子供を亡くしていた2人はアダと名付けその存在を育てます。

が、アダを生んだ母親の羊がアダの部屋の前で鳴き始めるようになり、マリアは、その母親羊を目障りに感じ始めます。ある日、マリアは母羊がアダを勝手に丘の上に連れて行った所を目撃し、猟銃で撃ち殺します。

アダを娘のように育て始め、幸せを感じ始めたイングヴァルとマリアの所に、イングヴァルの弟ペートゥル(元ミュージシャン、借金漬け)が現れ、牧場に住み始めます。マリアはペートゥルの存在を良く思わないですよね。ペートゥルは、アダの存在、そしてアダを育てている2人に驚きますが、イングヴァルから「夫婦のことに首を突っ込むな」と釘を刺されます。

3人とアダの生活は続きますが、徐々に不穏な空気は濃厚になっていき…


感想

「禁断が生まれる」と書いてあったので人間の性欲がアレでアレな行為をアレしたらアレがアレなのかなぁ、的な下衆展開をイメージしてたんですが、まったくそんな要素はありませんでした。

神話が根底にあるのかなとも思います。サテュロスという半身半獣の精霊は、自然の豊穣の化身、欲情の塊で、葡萄と蔦で作った花輪を頭に裸の姿で描かれます。アダはこの系譜なのかなとも思います。花冠シーンあるしね。

でも、実は羊+人間のアダは「まったく怖くない」んですよ。異形のものなので、ここのおぞましさが主軸になるのかと思っていたんですが、むしろかわいい。ゆるキャラっぽい。怖いのは「アダに執着する人間」と「それぞれの思惑で他者を傷つけようとする人間」です。まあぶっちゃけて言えばマリア。アダとの間を引き裂こうとするものは徹底排除しちゃう。徐々に人格破綻度合いが増していく。

でもなぁ、これ「そういう状況に陥った時」の正解がわからないのですよね。最終的に悲劇へのルートは確定してたんじゃないかな…と考えるときついなぁ。


最後に

これ、お勧めできるかどうかって聞かれると難しいんですよね。かなり人を選ぶと思う。派手な展開もない、スピーディなシーンもない、凍りつくような恐怖もない、笑えるコメディ要素もない。最後のシーンは唐突に感じる可能性が高いし、私も多分2周目はしない。

でも、1回見ておくと世界が広がる気はします。こんなダークファンタジーあるんだなぁ、と。


















最後にえっちな感想
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夫婦の営みのシーンがありますが、開始時に乳首は普通なのに、途中で乳首が立ってくる点はリアルだなぁと思いましたが、そんなのどうでもいいですね、はい。



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