【映画】雪山の絆
これは実話ベースのお話だそうです。1972年10月、ウルグアイ空軍機571便が、アンデス山脈中心部の氷河に墜落。乗客45名のうち生存者は29名という実に痛ましい事故です。少し目を覆うようなシーンもあったりしますが、総評で言うと「観てよかった」です。
かつても幾度か映画化されています。イーサン・ホーク主演の「生きてこそ」もこの事故の映画ですね。
個人的には、このタイトルに少し不満あり。絆ではあるんだけど、もう少しこう、人を惹きつけるタイトルにならないものだろうか。映画そのものが良かっただけに、勿体ないなぁと思ったりします。
物語
実話ベースなので「物語」という表現が適切なのかどうかは置いておくとして…物語はシンプルです。雪に覆われたアンデス山脈で飛行機が墜落し、生存者がいかにして生き延びるかってお話。
極寒、食糧ほぼなし、携帯電話もない時代なので通信はラジオの傍受のみ、無線機は壊れている。そんな中で生き延びたのは凄いですね。
サバイバル期間は実に72日。ここで生き延びた方々の証言で、飛行機事故の様子や彼らの生存までの日々の概要が判明。
感想
アンデスの山中なんで、日本よりも人がいる村落までの距離も遠いだろうし、うっかり滑落してしまったら命はない。動いた方がいいのか、留まって救助を待った方がいいのかはなかなか難しい判断だったでしょう。
墜落メンバーは若いラガーマンが多く、体力的には普通の人よりあるとは思いますが、体もデカいので必要カロリーも多かったはず。飢餓は想像を絶するものだっただろうなぁ、と。これと比較すると、政治デモで行われる「中途半端なハンガーストライキ」なんか「おままごと」ですね。
こういった悲惨な事故を取り上げて、お涙頂戴の「感動ポルノ」的に描かれるのを少し懸念していたんですが、さにあらず。過剰な演出もない、派手な音楽もない、友情や愛情を事細かに描写するでもない、淡々と丁寧に物語をなぞっていくようなイメージでした。そこは好印象。
エンディングも少しぞっとする。生き延びた彼らを待ち受けていたのは「メディア」でした。これ、昨今の災害でも事件でも、被害者・被災者の生活や安全より「情報をエンタメ的に消費」しようとする姿勢にうんざりする事ありますよね。あれは多分、昔も今も変わらないんじゃないかな…残念な事ですけど。
アントロポファジー
少し「観る人を選ぶかな…」というシーンが少々。雪山、食糧ほぼなし、木の実や植物を採集も出来ないし、魚を釣る事も出来ない状況下で、仲間が次々と亡くなっていきます。表現は少し不適切かもですが、身の回りにある「有機物」であり「タンパク質」はその死体だけ。お察しのとおり「ひかりごけ」的な展開があるのです。しかも、その死体は「苦楽を共にしたチームメイト」です。
私は食人をカニバリズムと認識していたんですが、飢餓や遭難での食料不足に基づく食人行為はカニバリズムには該当せず「アントロポファジー」と呼ばれるそうです。ハンニバル・レクターが行ったようなのが「カニバリズム」ですね。
私自身がこの状況下に置かれて「食べて生き延びる」が出来るかと聞かれると、自信がないですね。食べずに飢餓に苦しむのも辛いし、かといって食べるかと聞かれるとそれも想像似づらい。まあ、体力そんなにある方ではないので「食べられる側」になる可能性が一番高いかな…
アカデミー賞ノミネートも納得のクオリティ。観て損はないですよ。