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“子どもを守る熱中症対策”症状と予防から、いざという時の応急処置まで解説


気候変動の影響から、熱中症のリスクは年々増加しています。「熱中症弱者」となる子ども達を守るために、大人には何ができるでしょうか。

今回は保護者と指導者が知っておくべき、子どもの熱中症の症状や予防法、緊急時の応急処置まで解説します。

正しい知識をアップデートして、子ども達の夏の思い出を熱中症リスクから守りましょう。


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※この記事は公的な参考文献をもとに執筆していますが、医師の監修などは受けていません。参考文献は記事末尾にまとめます。


子どもは熱中症になりやすい 大人が知識を持って管理して


地球温暖化の影響によって、日本では猛暑日や熱帯夜が増加しています。これに伴い熱ストレスによる熱中症患者も年々増加しており、子ども達の熱中症リスクも高まっているといいます。子ども達を守るため、まずは子どもの熱中症の基礎知識を身につけておきましょう。

熱中症の重症度は3段階

熱中症は重症度によって3段階に分けられます。

  • Ⅰ度:めまい・失神・こむら返りなどの症状

  • Ⅱ度:頭痛・不快感・吐き気・だるさなどの症状

  • Ⅲ度:意識障害・痙攣・運動障害などの症状

熱中症は高温多湿の環境下で生じる疾患の総称です。症状によって以下の4つに分類されます。

  • 熱射症

  • 熱虚脱

  • 熱けいれん

  • 熱疲はい

いずれも原因は熱ストレスです。熱にさらされた体が、水分と塩分のバランスを取れなくなったり、体温調節機能や循環機能の限界を超えたりすることで発症します。最悪の場合、死亡する可能性もある怖い疾患です。暑い環境下を離れた後、翌日になって症状が現れるケースもあります。

子どもが熱中症になりやすい3つの原因

子どもは大人よりも熱中症になりやすい「熱中症弱者」だといいます。子どもが熱中症になりやすい原因は、主に以下の3つです。

  • 体温調節機能が未発達だから

  • 低身長なだけ反射熱の影響を受けやすいから

  • 自分では症状に気がつかないから

子どもは汗をかいて体温調整する機能がまだ未熟なうえ、体の構造上、気温の影響を受けやすくなっています。さらに屋外では、身長が低い子どもやベビーカーに乗った乳幼児は、熱くなった地表近くで過ごしています。もともと熱に弱い子どもが、リスクの高い環境で過ごすため、熱中症に陥りやすいのです。

また、言葉で症状を訴える力が備わっていなかったり、遊びや運動に夢中になって症状に気がつかなかったりするのも子どもの特徴です。大人が気をつけて見守り、予防する・症状に気が付く必要があります。

健康な体を作り暑さに備える 熱中症の予防方法


熱中症予防のためにできる対策は、大きく2つに分けられます。

  • 暑くなる前の健康的な体づくり

  • 高温多湿環境下での暑さ対策

以下で具体的な方法を紹介します。

健康的な体作り

暑さに負けない健康的な体作りは、熱中症予防に有効です。規則正しい生活、十分な睡眠、バランスのよい食事を日頃からこころがけましょう。特に暑さで疲労が溜まる頃には、食事に工夫してください。

夏の疲労回復に効果的な食品には、ビタミンB1が豊富な豚肉・大豆製品・モロヘイヤ・玄米などがあります。また夏野菜からビタミンC、酸っぱい食品でクエン酸を摂取することも、夏の元気な体づくりにおすすめです。

生活習慣の見直しと一緒に取り組みたいのが、暑熱順化(しょねつじゅんか)です。暑熱順化とは、気温が上がる前に体が汗をかけるようにしておくトレーニングです。以下のような運動などを、無理のない範囲で取り入れます。

  • ウォーキング・ジョギング

  • サイクリング

  • 筋トレ・ストレッチ

  • 入浴

大人も一緒になって、子ども達と楽しく取り組めるといいですね。

環境の管理

子どもは暑くても、自分では気がつけなかったり、うまく言葉で伝えられなかったりします。子ども達が高温多湿の環境下で遊んだり運動したりする場面では、大人が気をつけて管理する必要があります。気をつけたいのは以下のような場面です。

  • 炎天下で遊ぶ・運動する

  • 熱がこもる体育館などで遊ぶ・運動する

  • 自宅で遊ぶ・運動する

  • 暑い日にお出かけする

7〜18歳の児童は、運動中に熱中症を発症するケースが多くなっています。運動時は適切な運動時間管理と水分・塩分補給が必要です。0〜6歳の乳幼児は、ほとんどが自宅とお出かけ先で発症しています。適切なエアコンの使用と、無理をさせない大人の意識が必要です。

適切な水分補給

高温多湿の環境下では、汗をかき体を冷やすために水分補給が重要となります。しかし水だけの水分補給では、体内の水分と塩分のイオンバランスを保てません。スポーツドリンクや経口補水液など、水分と一緒にナトリウム(塩分)とカリウムを摂取できる飲料を選ぶとよいでしょう。

水で水分補給する際は、以下の食品を一緒に摂取して塩分補給してください。

  • 塩タブレット

  • 梅干し

  • 塩こんぶなど

カフェインを含む飲料は利尿作用を持つため、熱中症予防としては逆効果です。高温多湿下でのコーヒー、紅茶、緑茶などの摂取は避けましょう。摂取したい水分量の目安は、9〜12歳では100〜250mLを20分毎、思春期では1時間で1〜1.5Lだといいます。

子どものほてり・だるさ・発熱は熱中症疑い 子どもの年代別症状

子どもの熱中症にいち早く気が付くために、保護・管理する大人が熱中症の症状を知っておきましょう。以下では子どもの熱中症の代表的な症状を、年代別にまとめました。

乳児は体が熱くなる

乳児は言葉で体の不調を訴えられません。以下のような症状から、熱中症を疑いましょう。

  • 頬が赤い

  • 体が熱い

  • 母乳やミルクをいつもより飲みたがる

  • 尿が少ない

  • 機嫌が悪い

  • 元気がない

発熱して冷えない、汗が出ない、反応が鈍い場合は、症状が進行しています。急いで医療機関に相談しましょう。

幼児は頬がほてる

幼児は遊びに夢中になりやすく、自己管理がまだ難しい年齢です。「喉が渇いた」、「暑い」など、言葉での自己表現はできますが、自覚が遅いケースがほとんどです。大人が先回りして水分補給や遊びの時間管理、症状の発見をしてあげましょう。

  • めまい

  • 頬がほてる

  • 筋肉のけいれん

  • だるさ・吐き気

  • 汗のかきかたがおかしい

  • 体温が高い

車内や自宅に子どもを1人で留守番させるのは、熱中症リスクの観点からも危険です。乳幼児は常に大人の目の届くところで過ごすようにしてください。

児童は気分の悪さを訴える

小学生や中学生になると、症状は大人とほとんど一緒になります。

  • めまい・たちくらみ・失神

  • 顔が青白い

  • 吐き気・嘔吐

  • 筋肉のけいれん

  • イライラする・意識が朦朧とする

  • 大量の汗をかいている・全く汗をかかない

児童は部活やクラブ活動など、激しい運動をする機会が増える年代です。屋外で活動する運動部に限らず、高温の屋内で活動する運動部や文化部も熱中症リスクがあります。児童が自身で熱中症を予防したり、症状から疑ったりできるよう、事前の指導が重要になります。保護・管理する大人が正しい熱中症知識を持ち、子ども達に発信しましょう。

子どもの年代別 熱中症の応急処置

熱中症の応急処置でクリアすべきポイントは、以下の2つです。

  • 体を冷やす

  • 水分補給する

ただし、乳児の応急処置には気を付けるべきポイントがあります。以下で乳児と幼児・児童に分け、適切な応急処置の方法を解説します。

乳児は授乳で水分補給

乳児は体を冷やす時に、急激に冷やさないことと、過剰に冷やさないことに注意します。具体的な方法は以下のとおりです。

  1. 涼しい場所に移動 木陰やクーラーで冷やした部屋に移動し、着ている服を緩める。

  2. 体を冷やす① 濡れタオルや保冷剤で血管の太い部分(首周り・脇・足の付け根)を冷やす。

  3. 体を冷やす② ぬるま湯を吹きかけたり、28度程度のシャワーをかけたりして濡らして、扇風機で風を送る。

  4. 水分補給 母乳やミルクで水分補給する。可能であれば経口補水液や味噌汁で塩分を補給する。

冷水で体を冷やすと、皮膚血管が収縮するためかえって熱が体内にこもってしまいます。体を冷やす時には、水温に気を使いましょう。

幼児・児童は太い血管を冷却

幼児・児童は大人と同じ応急処置で対応します。

  1. 涼しい場所に移動 木陰やクーラーで冷やした部屋に移動し、着ている服を緩める。

  2. 体を冷やす 濡れタオルや保冷剤で血管の太い部分(首周り・脇・足の付け根)を冷やす。

  3. 水分補給 水分と塩分を補給する。発症時は経口補水液が望ましい。

病院に連れて行ったり、救急車を呼んだりする際も、上記の応急処置を続けます。

「子どもの熱中症」に関するよくある質問

救急車を呼ぶ目安は?

熱中症の重症度がⅢ度以上の時には、救急車を呼び、応急処置しながら到着を待ちます。以下の症状がある時は、ためらわず救急車を呼びましょう。

  • 意識がない、呼びかけに反応しない

  • 全身がけいれんしている

  • 汗が出なくなる

  • 40度以上の発熱がある

意識がないことは意識障害を起こしていること、40度以上の発熱は体温調節機能が破綻していることを意味します。ただちに医療機関で処置を受ける必要がある危険な状態だと理解しておきましょう。

病院に行く目安は?

熱中症の重症度がⅡ度程度と疑われる場合は、速やかに病院で治療を受けましょう。応急処置をして、以下の症状が見られる場合は医療機関での治療が必要です。

  • 意識はあるが自力で水が飲めない

  • 水が飲めるが症状が回復しない

  • 40度以下だが発熱がある

Ⅱ度の熱中症になっている場合、体はなんとか体温上昇を抑え込んでいますが、自力で体温を下げることは困難な状況です。治療では、入院して時間をかけて体温と体内水分量の管理を行います。

大人の気配りで 子どもを熱中症から守る


温暖化の影響を受け、子ども達はこれまで以上に熱中症リスクにさらされた状況にあります。

保護、管理する立場にある大人が、熱中症の知識を持って子ども達を守りましょう。

熱中症予防のためにできることは、日頃から健康的な体を作り暑さに慣らしておくこと、高温多湿下では適切な水分補給をすることです。

乳幼児期の子どもに見られる代表的な熱中症の症状は、めまい、顔のほてり、不機嫌などです。児童期になると、大人と同じくふらつき、頭痛、顔面蒼白、吐き気などを訴えるようになります。

40度以上の発熱や全身のけいれんがみられ、意識がない場合は重度の熱中症まで進行しています。急いで救急車を呼び、体を冷やしましょう。

重要なのは大人が熱中症の知識をアップデートしておくことでしょう。大人が「自分が子どもの頃は…」と過去の経験則に縛られていると、現代の環境に対応できません。

また得た熱中症知識は子ども達に伝えておきましょう。子ども達自身が予防のために行動したり、症状から疑うことができれば、熱中症リスクは下げられます。

夏は子ども達にとって楽しみなこと、夢中になれることがたくさんある季節です。大人と子どもが一緒になって熱中症リスクを回避して、楽しい夏にしてください。

参考文献

https://jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/var/rev0/0115/6213/201461916836.pdf

https://www.chiba.med.or.jp/general/millennium/pdf/millennium61_13.pdf

https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0120/4076/20176994932.pdf

https://www.chiba.med.or.jp/general/millennium/pdf/millennium61_13.pdf

https://www.takamatsu.jrc.or.jp/archives/010/201609/熱中症(横井)修正.pdf

https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-roudoukyoku/var/rev0/0120/4076/20176994932.pdf


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