【効いた曲ノート】Queen "The Show Must Go On"
生まれたころにはすでにフレディ・マーキュリーは亡くなっており、グッチ裕三のパロディ程度の知識しかなかったのですが、非常に評判でめちゃくちゃ熱いレビュー記事もたくさん流れてきたので見に行きました。という話です。まんまと圧倒されてしまいました。
「タンクトップのマッチョなヒゲのおじさん」というややステレオタイプなイメージしかなかった”フレディ・マーキュリー”が主演ラミ・マレックの熱演...というよりイタコのような憑依といっていいかもしれないくらいの怪演...で血肉との宿った一人の苦悩する男としてスクリーンに立ち上ぼり、ライヴ音源の身体を貫き魂を直接”ロック”するような衝撃が、圧倒的な”リアル”をこの映画に与えていました。
マネージャー役が「ゲーム・オブ・スローンズ」のいつも裏切ってるオッサンでいつ裏切るのか気が散ってしまったり(GOTのときと全く同じシニカルな表情でしゃべるのに全然裏切らなくて逆にはらはらした)、知識が全くなくても微妙に気になってしまう時系列やエピソード間の整合性であったり(カットがあったのかな?)、いやいやいくらなんでも簡単すぎるでしょ筋書きが、という部分はあったのですが、、
スタジオシーンでのメンバーたちの細かな所作や小気味良いやりとりは本当に家族のようだし、メアリーもすごい強いホットなベイブで、ジム・ハットンは優しいやつで、パパも放蕩息子との長い断絶が終わりを告げて、愛が、リアルな愛がそこにはあった。
そして、「ライブ・エイド」のシーン...冒頭からの伏線が、そのすべてが、ウェンブリー・スタジアムに収束したその瞬間、ピアノが鳴り始め、俺は......俺は、まだ生まれていないはずの、1985年のウェンブリー・スタジアムに居た。確かに居た。
そして目の前で、フレディ・マーキュリーが”ボヘミアン・ラプソディ”を歌った。”レディオ・ガガ”を歌った。”ハマー・トゥ・フォール”を歌った。
俺は打ちのめされ、酔いしれ、躍り、叫び、天に拳を突き上げ、フレディの煽りに精一杯の声を振り絞り、そして、”ウィー・アー・ザ・チャンピオンズ”...その歌の一言一言が、その曲の一音一音が、魂を突き上げ、それは一筋の河になり...二筋になり、流れは止まることを知らず...エンドクレジットが流れていても、”ショーはまだ続いていた”...
もちろん史実のQUEENはすべてがこのパフォーマンスにきれいに収束したはずはないのだけど。
俺は、まだ生まれていないあの日に、確かにウェンブリースタジアムに居た。これは紛れもない真実だと思う。
これは映画、物語というよりも、そういう”体験”。“オペラ”でした。
そして、ショーはまだ続く。それが、彼の、彼らの、俺達の人生なのだから。