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猫と眠る

 同居猫の朔太郎と住みはじめて1年半。家族以外の命と暮らすのは初めて。もちろん言い合いをすることはない。しかし時々互いにちらりと不満を態度に表すことはある。2匹生活はうまくやっている気がする。
 私が不満を表すとしたら、家の障子やふすまを引っ掻いてボロボロにされた時、棚の中を荒らされた時などだ。しかし、くうへ向かって「もう!」と言うだけで、彼へ向かって言葉にして怒ることはない。朔太郎の方は(私から見てなので確かとは言えないが)私の膝で眠ろうとしていた時に居心地が悪くて「ちっ」と踵を返してどこかへ行ったり、私が出かける時に目の前でドアを閉めたりした時に表情が曇ったりする(ような気がする)

 そんなこんなで1年半が経って、同居猫との2度目の冬を過ごしている。彼は冬、布団の中で眠る。私の腕か、枕の半分に顔を乗せて、私と並行で眠るのだ。その様子を人に話してもあまり信じてもらえていないのだが、毎晩そうやって眠っている。
 まず、わたしが布団に入る。この時すぐ朔太郎は入ろうとはしない。ベッドの周りを歩いたり、水入れの水を飲んだりしている。そして、少し布団が温もったかなと言った頃に枕もとにスタッという音と共に現れ、わたしの左横の布団の隙間に身をかがめるのだ。きっと布団が温まってから入ろうという魂胆なんだと思う。布団の入り方も独特で、私が入口を開けてやらないと入ってこない。少し前意地悪をして布団の入り口を開けずに見守っていたら、無言で私の方をじっと見て圧力をかけてきた。布団の中に頭から入ると、布団の中でくるりとUターンして頭だけを布団から出す。この間、布団を支えておいてやる。

 ただ猫と眠ることを綴ったのだが、猫と眠るのは幸せだ。まずとても温かく、湯たんぽいらず。そして、スースーという寝息を隣で立ててくれているのは心強く、夜に寂しいと思うことが少なくなったと思う。
 こんなにも私へと幸せを与える同居猫。私は彼に何かできているのだろうか。今日も猫と眠る。

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