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すずが一番星になった日

まえがき

これは飼い主と愛猫の日常の一部を綴ったものです。
特別なお話ではなく、ごく普通の猫好きな人間と、そこに縁があった元保護猫のお話。
誰しもに必ず訪れる、愛猫とのお別れについて書いきました。
どこかの誰かの参考にでもなれば幸いです。

これまでのお話はこちらです。

猫の凄さを感じたドラマティクな1日

2024年6月11日朝

夜夢を見た。
愛猫のすず(サビ猫、メス、7歳)が、健康的な姿で部屋の真ん中に座っていた。
私は思わず、「すずちゃん!元気になったのね。お腹すいた?」「ご飯食べようか。準備するね」と声を掛け。
愛猫が「にゃん」と返事をしてくれる。ごく普通の一コマだった。
ご飯の支度ができて持っていくと、すずの姿が見えなかった。
家中を探してもいない。どこに行ったのだろう。
突然胸騒ぎがして、家を飛び出して探した。写真を見せて、近所の人に猫を見なかったか?と聞いて回った。どこにもいなかった。消えてしまった。
そして、目が覚めた。

目が覚めて、すずのいるはずの寝床を見ると姿が見えなかった。
私は慌てて、「すず?」と呼びながら探した。部屋の端っこに移動していた。
もう、自力で移動することもままならないはずなのに、自分の力で何かを探すように部屋を移動している。
背骨がや腰骨が浮き出て、抱き抱えるとその体はとても軽く、胸が締め付けられるような思いがした。
そっとベッドの上にすずの体を寝かせた。
「おはよう!今日はクリニックには行かないで、お家でゆっくりしようね」
すずは「にゃー」というかのように、もう声も出ない状態でも口を開いて返事をした。

窓を開けると爽やかな天気で、心地の良い風が部屋の中を駆け抜けていく。
体調が良いことはないのだが、心なしかスズの表情も今日は穏やかに見えた。
自宅でクリニックから処方された注射を打ち、スズを撫でていると「ゴロゴロ」と喉を鳴らしていた。
元気な時はいつもお姉ちゃん(すず)にベッタリだった、みや(アメショ、オス、6歳)が、闘病になってからはそばで見ているだけだったのに、元気な頃と同じようにわずかな時間だがお姉ちゃんに寄り添って嬉しそうにしていた。
こんな状況で不思議であったが、なんだかほっこりして少し前まで当たり前だった光景が、こんなにも愛おしいものなんだという大切さを強く感じ。
気がついたらシャッターを切っていた。

すずと一緒にみや午前11時47分撮影

幸い在宅ワークなので、すずの横にPCを置いて仕事をすることにした。
もう自分の力で歩くこともできず、わずかな力で頭を浮かせこちらに来たい意思を示す。
作業を止めて、すずの側にいき沢山頭や体を撫でた。
すずは苦しいはずなのに、気持ちよさそうな表情で身を任せてくれた。

大好きなお姉ちゃんのそばにいる「みや」

2024年6月11日 午後

ベッドの下の寝床に移動したい様子だったので、移動して少しだけ寝ていた。
寝顔はとても穏やかで、もう少し一緒にいられるのかもしれないと希望を抱きたくなるほどだった。

すずのすぐそばで仕事をしていると、夕方になってフラフラと移動して私の足元で、腰からどさっと崩れるようにすずが力なく倒れた。
最後の力を絞り出して、甘えに来ているようだった。
いつも仕事が終わると膝の上に座り、食事をするときも何か作業をするときも、いつも一緒だった。
膝の上に乗って甘えたいんだと感じた。
すぐに抱き抱え膝にそっと載せ、優しく撫で続けた。
「ゴロゴロ」もう力もないはずなのに、喉を鳴らす。
ゆっくりと静かに時間が流れていった。
しばらくすると、ベッドの上に上がりたそうな視線を投げる。
ベッドに寝かせると、わずかな力で枕まで移動し頭を乗せ外を見ていた。

外はもう夕方だった。オレンジ色の陽の光が差し、とても穏やかな夕暮れが見えていた。
カーテンを開け「綺麗な夕焼けだね。明日はクリニックに行けるといいね」と、こころの中では、今日がもう最後かもしれないと感じているのに、すずには「明日」がある会話しかすることができなかった。

夕焼けの日の光がスズの顔をうっすらと照らしている様は、とても綺麗だった。
すると突然すずが「ガッと」立ち上がり、ものすごい力でベッドを蹴り窓に向かってジャンプをした。
サッシが閉まっているので、外に出ることはできない。
サッシにぶつかり床に落ちた後も、ひたすら外に出ようとサッシに向かって体当たりしている。
その表情はさっきまでの穏やかなものではなく、真剣そのものだった。
「すずちゃん、ごめんね。すずは家猫さんなの。外には出られないのよ。この家の中が居場所なのよ」
そう私は言い聞かせた。しばらく経つとすずが落ち着き、そっと体を抱き抱え寝床に寝かせた。

2024年6月11日 夜

さっきまでの騒動が嘘のように、すずはゆったりと呼吸をして寝ていた。
すずが全く水を飲まなくなって3日目。それ以前からご飯は食べていなかった。
私は今日がすずとのお別れになる、そう思い簡単な食事を済ますと、ずっとすずに寄り添っていようと決めていた。

午後21時、すずの体を撫でながらすずに話しかけ続けた。
楽しかった思い出や感謝の気持ちを呟いていた。
えずき始め、お別れが近くなってきていることを感じた。
涙目になるすずの顔と体を蒸しタオルで綺麗に拭いた。心なしか気持ちよさそうな表情をしていた。
ふと見ると、みやが玄関に移動してお見送りの体制でじっと佇んでいた。
(みやは、お客さんが来るとお出迎えと、お見送りをする猫様です。)
その姿を見た時に、「ああ、すずちゃんは本当に今日行っちゃうんだ」と強く感じた。

しばらく体をさすっていると、すずは突然立ち上がりものすごい速さで、隣の部屋に移動した。
その行動を見た時に、「あ!すずちゃんがいっちゃう。本当に行っちゃう」そう強く感じ、すずの後を追った。
隣の部屋で倒れるすずの姿を見た時に、抱き抱えてあげたい。と感じたが。
私はそうしなかった。
家猫さんは、野良ではないので隠れて亡くなったりはしないですよ。などという人もいるが。私はすずを見てきて、そんなことはないと感じていた。

彼女は、彼女なりの猫としてのプライドがある。
どんなことがあっても、最後まで自分の力でトイレに行き。自分の口で飲める水だけを飲み。
生き抜ける力があるかぎりを生き抜いてきた。

そして、何より私に最後の姿を見せまいと頑張っている。
私は少しでも、すずの気持ちを最後まで尊重したいと思った。

彼女は、部屋のしりきと棚の間の隙間に、最後の力を振り絞り後ろ足から、その隙間に入っていた。
隙間に全身が入るくらいのところで止まり、呼吸が荒くなった。
私は隙間に手を伸ばし、すずの体を撫でながら「ありがとう、ありがとう」とただただ繰り返した。

最後をきちんと見送ろうと決めていたけれど、それは難しい話だった。
もう事切れようとしている儚い命を目の前に。
自分はただ子供のように、涙を流し泣きじゃくっていた。
「すずちゃんが、行っちゃう・・行っちゃう」
 本当は心の中で「行かないで」と呟きかけて、その言葉を打ち消していた。
この2ヶ月間一緒に戦い抜いたからこそ、その辛さや彼女の頑張りを痛いほど感じていた。

そして、下顎が大きく2回さがり、深い呼吸をした後。
すずの口呼吸が止まったのを感じた。
その後、お腹の動きが1回、2回とゆっくり動いて、ついにその動きを止めた。
午後23時47分ごろだった。

呼吸をしなくなったことが、信じられず。
しばらくの間体を撫でながら、「ずずが行っちゃった」と呟きながら、ただただ泣きじゃくっていた。

しばらくして、すずが亡くなってしまったことを再認識し、すずの体を綺麗にして整えなければと思った。
泣きすぎてしゃっくりが止まらず、何をどうしたらいいかパニックになっていた。

ところが不思議なことに、俯瞰で見ている冷静な自分がもう一人いた。
「慌てなくて大丈夫。ずずちゃんの体を濡れタオルで綺麗にしてあげてね。朝までに寝かせておく場所の作り方は、PCにブックマークしたのをまず開いて。ゆっくり確認しながらやればできるから!」
そう冷静に頭の後ろでつぶやく声に促されて、しゃくり泣きをしながらゆっくりと、ずずを見送る為の支度を始めた。

支度をしながら、今日あった出来事の場面場面を思い出していた。
すずとみやが一緒になって撮った写真
すずが甘えてきたこと(ちょっと前の日常のようだった瞬間があったこと)
一緒に見た夕日

すずが沢山の愛情や感謝を、プレゼントしてくれて居たことに改めて気がついて。
その瞬間にまた涙が溢れて止まらなくなった。

すずを箱の中に寝かせて、身支度を整えるとその姿は眠っているようだった。
みやは箱に入って砂をかける動作をしばらく繰り返していた。
きっと大切なお姉ちゃんが、他の外敵に襲われないように守ってくれようとしているんだろう。

そして自分の気持ちも不思議と落ち着いていた。
一晩中泣き明かすと思っていたが、すずが辛さから解放されたんだと思ったら、気持ちが楽な部分も大きかった。
しばらくして横になると、暖かいものが体に触れる感覚を感じた。
不思議に思い手を伸ばすと、確かに暖かいものが触れる、特に毛が肌に触れるような感触を感じた。
「すず?」と思わず思ったが、しっかりと撫でることはできなかった。
身体を起こし手を開いていると、その中に暖かいものがしばらく居るのを感じることができた。
そして、その存在がゆっくりと去っていった。

そしてその日は眠ることができず、すずのそばで猫様1匹と一人で、ゆっくり時間を過ごし朝を迎えた。

そしてその後

すずをお見送りしてから、その後の過ごし方は、また改めて書きたいと思います。

息抜き

ラブラブ?すずお姉ちゃん大好きな、みやですね。

二人一緒♡


お昼寝

みやとすずの似たようなポージング

みやです!

モデルさんみたいね。すずちゃん

すずです!

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