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涙とともにパンを食べた者でなければ人生の味はわからない。

就活が始まる前、僕はこんなことを言われた。



就活向いてない。

就活で苦しみそう。

会社員から最も遠い存在。



周りが口を揃えて、そう言うのだ。

エビデンスとしては十分すぎる数の友達や知人に、上のようなことを言われた。

それに対して僕は、「まだ社会人にもなってないやつに、言われたくないんじゃー」と、心の中で反抗していた。

だけど、周りの意見は正しく、実際に僕は就活でかなり苦しんだ。



まず、これで苦しんだ。


やりたいことがない!


悲報、やりたいことがない。




そうなんです。僕はやりたいことが、全然見つからなかったんです。


こんな職業に就きたい!


とか


こんな業界で働きたい!


といった情熱みたいなものが、出てこなかった。

色んな業界、職種の説明会やインターンに参加したけど、「ここがいい !」というのは実はなかった。

周りの友達の志望する業界が定まっていく中で、僕は何がやりたいのかすらも全然分からない。



また、


この会社に入りたい!


というのもなかった。
大手とか中小とか、ベンチャーがどうのこうのとかも、正直どうでもよかった。



めっちゃ稼ぎたいっす!


というギラギラしたモチベーションもなかった。




かわりに僕は、こんなことを考えていた。



のんびり生きたいなあ



そう。ほんとこれだけ。

ある程度のお金が稼げたら、あとは趣味とかに時間をたっぷり使う生活が、したかったのだ。

文章を書くことも、そのうちの一つに入っている。

読みたい本をたくさん読んで、静かに文章を書きながら、考えにふけりたい。

自分の中で、それが重要事項だった。



そこで僕は、残業が少なくて、書く時間がしっかり取れそうな仕事を、探すことにした。

周りがやりたことを見つけていく中、自分は「自由時間が多そうな会社」という軸で、就活をしていた。

すると、なんと自分の研究している分野に近い材料を扱っている会社で、そのような会社が2社あったのだ。

こ、これは。自分にピッタリなのでは。



名前は、全然有名な会社ではなかった。
だけど、ニッチなところを攻めて競合他社がいないからなのか、残業が少なくワークライフバランスも取れるらしい。

他に行きたい企業もなかったので、僕はこの2社に絞ることにした。

持ち駒まさかの2である。

正直、とても怖い。一度、試しにIT企業にエントリーして、書類選考で落とされていたし。

この2つを失ったら、持ち駒0ですから。

だけど、知名度も高くないし、自分の研究にも近い業界だから、しっかりその企業を研究すれば、いけると思った。

ビビリな自分だけど、この作戦で行くことにした。ほぼ背水の陣。




この作戦で行けると思ったけど、ずっと不安がつきまとっていた。

周りの子たちは、たくさんの企業にエントリーして、そのうちの何個かの内定を得ていく。

自分は、その2つの会社の選考が始まるまで、面接の場数も踏んでいない。

面接の練習はしていたけど。ティンバーズの長谷川さん、本当にあの時はありがとうございました!めっちゃ優しい方だった!!

このように、選考対策はしていたが、不安は最後まで消えなかった。本番でミスったら、パーになるから。



周りが就活を終えていく中で、この「背水の陣」作戦をしていると、なかなかにメンタルにきた。

noteの文章では平静を装っていたが、実はけっこう不安定な状態だったのだ。


「自分、何してんだろう」

そんなことを、よく思っていた。


「将来、大丈夫なのかな?」

「もしかして、内定0になるんじゃ」

「就職浪人したら、どうしよう」


そんなネガティブな考えが、いっぱい出てきいた。



そして、夜ご飯を食べていた、ある日のこと。

たしか生姜焼きを、食べていた。

もぐもぐと食べていたら、生姜焼きがぼやけてきたのだ。
豚肉の白い筋が、見えなくなった。

気づいたら、涙が出てきていたのだ。
涙ぐんだせいで、視界が霞んでいた。

「つらいなあ」

「こんなしんどいことだと、思っていなかった」

「社会人になったら、もっとつらいことたくさんあるのに、自分は弱いなあ」

涙をこぼしそうになりながら、ご飯を口に入れていた。



ゲーテは、

涙とともにパンを食べた者でなければ人生の味はわからない。

と言っていたが、この就活で人生の苦味を味わった。
何回も逃げ出したくなった。



そんな辛かった日も乗り越え、最終面接も終わり、今日の17時半あたりに電話がかかってきた。

自分が出すリレーエッセイの記事を、最終確認していた時だ。

この前の最終面接で、面接官を担当されていた方の声が聞こえてきた。

ゴクリと唾を飲み込む。


「ギア3さん、内々定の報告です」

「〇〇(採用担当の方の名前)さん、ありがとうございます」


「〇〇日までに内定承諾するかどうか教えてください」

「はい、わかりました」

・・・
・・



よかったぁ。
正直、最終面接の手応えなかったから、落ちたかもしれないと、心配していた。

電話を終えて、夜ご飯を作る。
今日は、久しぶりに焼きそばを作る予定だった。

野菜がとれて、包丁を使わずに作れる質素な、いつも通りの焼きそば。

適当な盛り付け方で、白いガラスの皿に焼きそばが乗せられる。

今回は嬉し涙とともに、ご飯を食べている。
人生の味を、噛み締めている。




これからの人生でも、涙とともにご飯を食べることが、何回かあるかもしれない

その時にまた、タイトルにあるゲーテの言葉を思い出すだろう。

嬉し泣きとともに食べるご飯が、できれば多くあってほしいな。



最後に。

日本人はパンじゃなくて、ご飯だけどな!



焼きそば、相変わらず美味しいなあ。


これまで応援してくださった方、本当にありがとうございました。Twitterでメッセージを送ってくださった方は、noteのコメントは書かなくても全然大丈夫です!みなさん、お忙しいと思うので。皆さんの記事が多く読めない時期もありましたが、読んだ文章からとても勇気づけられていました。

今回の記事は急いで書いたので、ぐちゃぐちゃです。来年は社会人として、社会にいっぱい揉まれてきます。

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