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マンチェスターの畑で農作業してランチをみんなで食べる

マンチェスターにいる理由のひとつに、Plat Fields Market Garden(PFMG)の存在がある。
街の中心からバスで20~25分くらいで行ける広大なPlat Fields Parkの中にある。

いわゆるCommunity Supported Agriculture(CSA)を実践しているガーデンで、いろいろな人たちが農作業に従事している。
日本語では「地域支援型農業」となるようで、たとえば農林水産省のサイトでは「農家と消費者が連携し、前払いによる農産物の契約を通じて相互に支え合う仕組み」と説明されていたのが、いま確認したらこのサイトは見あたらなくなっている。
「特定の消費者が、生産者と農産物の種類、生産量、価格、分配方法等について、代金前払い契約を結ぶ農業のこと で、地域が支える新たな農業の一形態として注目されている。我が国では少数の農家が取り組んでいる段階」とも説明されているようだ。https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/19/pdf/data1.pdf

日本にもCSAの先駆と言っていい1970年代に開始された「提携」という取り組みがあり、TEIKEIとして海外でも知られていたりする。
有機農家を中心にしておこなわれている。
イギリス版CSAの事例を見てみようと思い立ち、PFMGを最初に訪れたのは2020年の2月だった。
農林水産省の堅苦しい説明から受ける印象とはだいぶ様子が違った。
短い期間だったが、ボランティアとして農作業を中心にガーデンでいろいろ働かせてもらった。

2022年の4月に再訪した時、2年前に作るのを手伝った小道がPermaculture Spiral Gardenとして残っていて、その時植えた苗木が大きくなっていた。
その時は、その年の夏にでもまたすぐに戻ってくるつもりだった。
でもそれはcovid-19の蔓延で叶わなかった。
その時にもっとも長い時間いっしょに作業したTは、ウェールズへ越してしまってもういない。

ともあれ二年前、私はここにたしかにいた。
マンチェスターの大地に、その痕跡が残っていたのだった。

今回もボランティア登録して、たまに農園で作業している。
昨日(5月13日)は、草取りをした場所に、誰に聞いても名前が分からないなんかの株や、里芋みたいなのを植えた。
4月に私が植えたスイートピーの苗も順調に育っている。

ガーデンでは人と土が、人と人がどうしてもつながっていく。
いっしょに土や野菜を相手に作業をしていれば自然とそうなる。
もちろん、黙々と作業したい人はそうすればいい。
無理に人を相手にする必要もないくらい、相手にしなければいけない畑が広がっている。
誰にでも扉は開かれていて、ぶらっと訪れただ座っていたり散策したりする人もいる。

コンポストの返しをやっていたおしゃれな子とrefreshするしrelaxするよねと話したら、「それに強くなれる」と彼女はつけ加えた。
大学でグラフィックを学び、今はどこかでウェイトレスの仕事をしていると言っていた。
デニムに自分で花模様をペイントして着ていたり、私の手帳に名前を書くときに花のイラストをつけ加えたり、スタッフの子どもが遊びに来ていた時に肩車して踊っていたりするような人だ。

取った雑草を何度も大量に運んでいたBは、ここでのhard workが好きだと笑いながら話してくれた。
その後なんども作業をともにし、再婚にまつわる暴露話まで聞くことになったBについては、また後日noteに書くことになるだろう。

ともあれ、街の中の畑にはたんに食糧を生産するだけでないさまざまな波及効果がある。

金曜日はCommunity Lunchの日で、ベジタリアンあるいはヴィーガンなランチが、無料でボランティアや地域の人にふるまわれる。
寄付も募っている。

そこにたまたま集っている誰でもがいっしょに食べる。

「書」に魅せられて来年日本へ行くつもりで日本語を勉強している、というCとたまたま同席して、昨日(5月13日)はタルトとサラダをいただいた。
私と同じように、Cにも日本でいい出会いがあるといいなとつくづく思った。

私が手がけたものがすくすく育ち根付けば根付くほど、この土地に痕跡を残せば残すほど、人と出会えば出会うほど、来年の三月にここを去るときの辛さが増すのだろうな、と帰り道にふと思った。

写真:PFMGのソファ(2022年8月4日)

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