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懐かしい未来

魔法使いの弟子   6

 ある時、大量の「平和の水」を用意して敦賀にある高速増殖炉「もんじゅ」へ浄化に行こうと、シャンタンは私に言った。

 そして、春浅く肌寒い日、夜明け前に出発した。薄曇りの日だった。

 シャンタンは、高速道路より国道、国道より一般道、それも生活道を好んだ。確かに言われるように道を換えて走ると、途端に自分にも、その違いが分かるように感じた。

 土岐川が恵那の夕立山を源流として、愛知県に入ると庄内川になり、伊勢湾に注ぐ流れだったように、道もまた不思議なもので、同じ地平のそれほど距離の離れていない場所にあっても、別の次元が在るのが感覚として捉えられたのだった。

 私の住む恵那は、古くから日本列島の中心を貫く幹線道路として整備され、幾度となく上書きをされて、古い街道が重なっている土地柄でもあった。

 現代は車のための道路として、どこでも同じように舗装がされ、殺風景な景色と時間が飛ぶように流れていくが、幹線道路を一歩外れて、田舎の家並みの中へ入ると、生活の匂いがして時間がゆったりとなり、人間の営みが濃厚に感じられるとともに、獣道へと通じるように動物の気配も近くなった。

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