女子中学生ロリコン(浅野浩二の小説)
女子中学生が可愛くて可愛くて仕方がない。純真で、高校生になると太腿が太くなってくるが、中学生だと脚が華奢なので、あれが可愛いのである。そして白い靴下に運動靴。あれも可愛い。そして制服。あれも可愛い。あんなにたくさん、いるんだから一匹くらい、さらってもいいんじゃないか、と思いたくなる。というわけで、とうとう私は女子中学生をさらった。
「おじさんは誰?」
「おじさん、と言うな。おじさんと言ったら殺すぞ」
「ごめんなさい。じゃあ、何て言えばいいんですか」
「おにいさん、と言いなさい」
「はい。わかりました。おにいさん」
「私をどうするんですか。性的な悪戯をするんですか」
「そんな事しないよ。だって君が好きだから」
「じゃあ、何をするんですか」
「何もしないよ。ただ普通にしていてくれればいい。君を見てるだけで僕は幸せなんだから」
彼女はほっとした様子になってくつろいだ。私は彼女をじーと見た。
「お、おにいさん。そんなに見つめられると恥ずかしいです」
少女は頬を赤くして言った。彼女はじっとしていた。
「時間が勿体ないから、宿題でもしなよ」
「はい」
彼女は、スポーツバッグから教科書とノートを取り出して座卓に向かった。彼女はウンウン頭を捻っている。
「どうしたの。何がわからないの」
私が覗き込むとそれは国語の教科書で、阿部公房の小説だった。
「この話の大意を述べよ、という問題なんですけど、わからないんです」
「ああ。それは問題の方が間違っているよ。阿部公房の小説の大意は書いた本人でも答えられないからね。阿部公房の小説は意味に至る前の、ある実態なんだ」
「ふーん。そうなんですか」
少女はサラサラッとノートに解答を書いた。どれどれ、と私が覗き込むと、こう書かれてあった。
「阿部公房の小説は、意味に至る前のある実態なので大意は述べる事は出来ません」
「そう。それが正解。さすが。頭いいね」
私は彼女が可愛くて髪を撫でたくて仕方がなくなった。しかし私はそれが出来ない。
「うおー」
私は苦悩にのたうちまわった。
「おにいさん。どうしたんですか。私に触りたいなら触ってもいいですよ」
「いや。触らない。触りたくもない」
「ひどい。私ってそんなに不細工なんですか」
少女は俯いて涙を流した。
「いや。違うよ。君は天使のように可愛いよ。しかし、もし僕が君に指一本でも触れたら、もう僕の精神的な敗北なんだ」
少女はニコッと笑った。現金である。夕方になった。
「おにいさん。私が帰らないと家族が心配してしまいます」
「じゃあ、返してあげる。どうもありがとう。はいこれ」
と言って私は彼女に二万円札を渡した。
「うわー。何ですか。これ?」
「拝観料。まだ足りない?」
「こんなに頂けません。宿題まで教えてもらって」
「いいんだよ。好意は素直に受け取りなさい」
「はい」
少女は素直に財布に札を入れた。
「あの。おにいさん」
少女は言いにくそうに躊躇った。
「なあに。何でも聞いてあげるよ」
少女はつぶらな瞳を上げた。
「あ、あの。また、来てもいいですか」
「うん。いいよ」
「じゃあ、また明日も来ます。宿題、教えて下さいね」
そう言って少女は満面の笑顔で私の家を出た。