タコ星人(浅野浩二の小説)


ある日のことである。
僕は妹と家の裏山に登った。
早朝で誰もいない。
すると驚いたことに、山の頂上に大きな円盤があった。
まるでマンガで見るようなUFOのようだった。
円盤の回りでは、何匹もの赤いタコが地上の様子をカメラで撮っていた。
あるタコは、地面の土を採集したり、別のタコは雑草を取ったりしていた。
タコは手が八本あるので、その八本の手を器用に使っていた。
僕と妹は、身を伏せて、タコ達に見つからないようにして彼らの行動を観察した。
「うーむ。地球は我々の惑星より、はるかに住みやすい環境だ」
「確かにそうですね」
「しかし科学技術は我々の方が、はるかに上ですね」
「そうだな」
「地球を乗っ取ろう。そして地球人を全員、我々の奴隷にしよう」
「そうですね」
「今、地球はコロナウイルスのパンデミックとコロナワクチンで大騒ぎだ。地球人は、どういう性格なのか調べてみるために、試しにコロナウイルスをばら撒いてみたが、地球人はバカで、利権に走るだけで、大騒ぎしている。戦争もしているし、共産主義国家も存在するし、争いが絶えない。こんなバカなヤツらは簡単に乗っとることが出来るな」
「そうですね」
「核ミサイルを打ち落とす、迎撃ミサイルPAC-3などを開発しているようだが、我々の保有する超高性能核ミサイルなら、迎撃ミサイルPAC-3など、簡単にすり抜けて命中させることが出来る。まあ、次回、アメリカと中国に一発ずつ、核ミサイルを落としてやれば、第三次世界大戦となって、地球人の9割は死んで自滅するだろう。その後に、一気に我々が地球を侵略すればいい。それまでは我々の存在は知られてはならない。地球人の歴史を見ても地球人は宇宙人はいないと思っているし、地球人は宇宙人の地球征服を知ったら一致団結する可能性があるからな」
「そうですね」
そんな会話がなされていた。
僕はびっくりした。
彼らは紛れもない宇宙人で、地球を征服しようとしているのだ。
コロナウイルスも宇宙人が地球にばら撒いたのだ。
今回、彼らが地球にやってきたのは、地球の調査のためで、次回は、いつかはわからないが、アメリカと中国に、核ミサイルを、彼らは打ち込んで地球を滅ぼすつもりなのだ。
「お、お兄ちゃん。こ、こわい」
そう言って妹が僕の服を引っ張った。
ガサッ。
その音が彼らに気づかれてしまった。
タコ星人どもが、みな僕たちの方を見た。
「しまった。地球人に見つかってしまった。退却だ」
そう言って、彼らは、みな急いで円盤状のUFOに乗り込み出した。
彼らは、科学技術の進歩の度合いは地球人より、はるかに進んでいるのだろうが、体形は小型のタコである。
動作はのろかった。
ちょうど、東大医学部に入れるほどの学力があるが、痩せて体力の無い、モヤシのガリ便のようなものだ。
人間だって、何も持たない素手ならば、ライオンにもゴリラにもかなわない。
しかし人間は大脳新皮質だけは、異常に発達しているから、マシンガンや麻酔銃で捕獲し、全ての動物を支配しているのである。
それと同じようなものだ。
僕は、どうしたらいいか迷った。
しかし、このままでは、地球は彼らに乗っとられてしまう。
UFOから降りて、地球を観察していた、タコ星人は、全員、UFOに乗り込んで、UFOは宙に浮き出した。
しかし、一匹のタコ星人が残っていた。
「しまった。皇太子さまが、まだお乗りになっておられなかった。着地して、お乗せしろ」
そういう声が聞こえてきた。
地上から浮き上がったUFOは再び地上に着地しようとした。
このままでは地球は彼らに乗っとられてしまう。
僕は無我夢中で、UFOに乗りそこなったタコ星人を捕まえようと駆け出した。
どうやら、タコ星人の国にも、天皇制のようなものがあって、乗り遅れた、タコ星人は貴重なタコなのだろう。
こいつを人質にとっておけば、いざという時に地球に有利になる。
僕は、ウロウロしている、タコ星人を捕まえてデイパックの中に入れた。
そして妹と一緒に、急いで、その場を逃げた。
タコ星人は、その存在を知られるのが怖いのと、皇太子を取り戻すこと、のどちらをとるかで迷っている様子だった。
その隙をついて僕と妹は走りに走った。
幸い、道路に出ると、巡回中のパトカーが、こちらにやって来た。
僕は道路に出て、大手を振りながら、パトカーに向かって走った。
妹の手を曳いて。
パトカーも僕に何か緊急の事が起こったことを察してくれて、スピードを出して、こちらに向かってくれた。
「どうしました?」
パトカーが僕の横に止まると、警察官がパトカーの中から聞いた。
空を見上げると、タコ星人のUFOは、はるか上空にあった。
皇太子を取り戻すことと、自分たちの存在を知られないことの、どちらを選ぶかで迷っているのだろう。
僕は正直に言おうか、どうか迷ったが、正直に言っても、信じてもらえず、ふざけていると思われると思ったので、
「ちょっと変な男たちに追われているような気がするんです。こわいんです。もしかすると間違いかもしれませんが。済みませんが、警察署でかくまってもらえませんか?」
と言った。
「わかりました。どうぞ、お乗り下さい」
そう言って警察官は後部座席のドアを開けてくれた。
僕と妹はパトカーの後部座席に乗り込んだ。
パトカーは藤沢北警察署まで僕と妹を連れていってくれた。
「何があったのですか?」
警察官が聞いた。
UFOやタコ星人が地球を侵略しようとしていることを言っても、信じてもらえないと僕は思ったので、僕は黙っていた。
しばしして。
「すみませんでした。ちょっと僕、気が小さくて臆病なので、警察署まで送って貰いましたが。僕の思い過ごしだったと思います。気持ちが落ち着きましたので、家に帰して貰えないでしょうか?」
僕は言った。
「わかりました。それでは気をつけてお帰り下さい」
こうして僕と妹は警察署を出た。
・・・・・・・・・・・・
僕は妹を連れて家に帰った。
家に着くと僕はデイパックを開けた。
小さなタコ星人が出てきた。
「ふー。息苦しかった。しかし何か話すと、オレ様の存在が地球人に分ってしまうからな。だから黙っていたんだ」
とタコ星人は生意気な態度だった。
「おい。お前。オレ様はタコ惑星の王子なんだぞ。丁重に扱え。そうすれば、地球を征服することを、思いとどまってやることも考えてやるぞ」
と生意気な態度だった。
「おい。タバコをくれよ。一服したいんだ」
とタコ星人は生意気な態度で言った。
僕はタバコとライターをタコ星人に渡した。
タコ星人は、八本の手があるので、その手で、器用にタバコを口に咥えて、ライターで火をつけて一服した。
「おい。お前はタコ星人の王子なのか?」
僕はタコに聞いた。
「そうだ。オレ様はタコ惑星の王子なんだぞ。だから丁重に扱え。そうすれば、地球を征服することを思いとどまってやることも考えてやるぞ」
とタコ星人は生意気な態度で言った。
「コロナウイルスはお前たちが作って地球にばら撒いたんだな?」
僕はタコ星人の王子に聞いた。
「そうだ。あらかじめ、コロナウイルス用のワクチンを用意しておいてな。この風邪ていどの弱毒ウイルスを地球にばら撒いたら、地球人はどうするか。地球人の性格と知性を知るためにな。思った通り、いや予想以上に、地球人は間抜けで、どの国も政官財が癒着していて、利権だけしか頭にないエゴイストだと分かった。コロナワクチンは変異するから、同じワクチンを打てば打つほど、ADE(抗体依存性感染増強)が起こるのは、わかっているのに、利権だけしか頭にない、バカな地球人どもは、同じワクチンを打ち続けて、未曽有の危機だなどと騒いでいる。あっははは。バカで愚劣なヤツらだ。体のあらゆる細胞がmRNAワクチンを取り込むから、自然免疫が低下して、地球人は、これから、どんどん死んでいくだろう」
タコ星人の王子はタバコをふかしながら、余裕の口調で、そんなことを言った。
僕の心は口惜しさと憤りに煮えたぎっていたが、人間が愚かだったことも事実なので言い返せなかった。
それより僕はタコ星人のことを知りたかったので、ぶん殴りたい気持ちを我慢した。
「あんたらは、地球のタコに似ているが、どうしてですか?」
僕は聞いた。
「地球人は海の中から、魚類、両生類、そして陸に上がって、哺乳類へと進化していったのだろう。しかし我々は、進化の過程で、タコから哺乳類へと進化してしまったのだ。だから外見は、一見タコに似ている。しかし我々、タコ星人の頭脳は、お前ら地球人とは、比べものにならないほど優れているのだ。だから科学技術も、お前ら地球人とは、比べものにならないほど高い。我々の科学技術から見ると、地球人の科学技術など、ママゴト程度だ。あっははは。笑いが止まらんぜ」
「お前たちは、そんなに頭脳が優れているのか?」
「当たり前だ」
「じゃあ、これを解いてみろ」
そう言って僕は、今年の東大の全科目の入試問題を、タコ星人の王子の前に置いた。
タコ星人の王子は、シャープペンを取ると、素早い勢いで解答を書き込んでいった。
何しろ、手が八本あるので、複数の問題を同時に解いた。
その書く速さは物凄かった。
5分もかからず、タコ星人の王子は解答を書き上げた。
僕はそれを、とって、正解を書いた赤本を開いて比べてみた。
びっくりしたことに全問正解だった。
次に僕は、数学で解決されていない、リーマン予想、をタコ星人の王子に見せてみた。
リーマン予想とは、1859年にドイツの数学者ベルンハルト・リーマン(1859)により提唱された、「全ての素数を表す式は可能か?」という問題で、クレイ数学研究所は、この問題を解いた人間には100万ドルの懸賞金をかけている。しかし数多くの天才数学者が、この問題に挑んだが、まだ解決されていない。
僕はタコ星人の王子に、
「おい。この問題を解けるか?」
と聞いてみた。
すると、タコ星人の王子は、なんだ、リーマン予想か、と言って、ノートにシャープペンで、物凄い勢いで数式を書いていった。
5分もかからず、タコ星人の王子はリーマン予想の方程式を書いた。
といっても、僕は、中学1年生なので、中学1年生の数学の知識しかないので、そんな高等数学はわからず、それが正答になっているのか、どうかはわからない。
僕は次に、他の数学の未解決証明問題である、
・バーチ&スウィンナートン・ダイアー予想
・P≠NP 問題
・ホッジ予想
・ポアンカレ予想
・ヤン-ミルズ方程式の質量ギャップ問題
・ナビエ-ストークス方程式の解の存在問題
の6つの問題を、タコ星人の王子に見せて解かせてみた。
するとタコ星人の王子は、その6つの問題を物凄い勢いで解いていった。
何やら難しい非常に長い方程式である。
これらも、僕は中学1年生の数学の知識しかないので、それが正答になっているのか、どうかはわからない。
しかし当たっていたら、合計100万ドル×6=600万ドルである。
しかし今年の東大入試問題も、全問正解しているので、これらの問題も正解になっているような気がした。
タコ星人の王子はタバコを吹かしながら、
「お前ら地球人はバカだな。わがタコ惑星では、こんなのは、1000年前にとっくに解決されている」
と言って、余裕の様子で、タバコを吹かした。
「さあ。これでわかっただろう。オレ様を丁重に扱え。そうすれば、地球に核ミサイルを打ち込むのを考えてやる。何せ、オレ様は、タコ惑星の王子なのだからな」
と言って、吸っていたタバコをフーと吐き出した。
「おい。バカな人間。腹が減ったぜ。何か食い物もってこいよ」
とタコ星人の王子は傲慢な態度で言った。
僕は、コロナワクチンで死んだ人たちを代表して、このタコ野郎をぶん殴ってやりたい思いに駆られだが、こいつは地球をタコ星人の侵略から守る、切り札、大切な人質なので、我慢して丁寧な口調で、
「王子様。わかりました。食べ物をお持ちいたします」
と言って部屋を出た。
・・・・・・・・・・
このタコ野郎は地球を守る大切な人質であることは、わかっていたが、新型コロナウイルスとコロナワクチンをばら撒いて、地球人を殺したり、ワクチン後遺症にした、このタコ野郎に対する怒りを僕は我慢することが出来なかった。
それで僕はキッチンに行き、冷蔵庫から、タコを取り出して、タコの丸焼き、タコの寿司、タコときゅうりの酢の物、を急いで作り、天然木漆塗りの大きな椀に入れ、蓋をして、そして、それを膳に乗せ、タコ星人の王子の所に持って行った。
「王子様。お食事をお持ち致しました」
と言って僕は膳をタコ星人の王子に差し出した。
「おう。持ってきたか。このウスノロ」
とタコ星人の王子は横柄な態度で言った。
強がっていても腹が減っていたのだろう。
タコ星人の王子は、八本の手を使って、急いで椀の蓋を開けた。
開けるや否や、タコ星人の王子は、ただでさえ赤い顔を真っ赤にして怒り狂って、僕に向けて、ブバッと黒い墨を吹き出した。
「バカ野郎―。なんだ。この料理は。全部、タコ料理じゃねえか」
タコ星人の王子は顔を真っ赤にして言った。
「お気に召されませんでしたでしょうか?」
僕は恭しく聞いた。
「当たり前だ。オレ達、タコ惑星の者は、タコが進化したのだ。だから我々にとって、タコは聖なる動物なのだ。ちょうどお前たちが、犬や猫などの哺乳類を可愛がるのと同じだ。そのくらいの事も想像がつかないのか。代わりの料理を持ってこい」
そう言ってタコ星人の王子は、八本の手を使って、椀を僕に投げつけた。
「は、はい」
僕は焦って、椀を拾い集めて、部屋を出た。
・・・・・・・
僕は、すぐに109cm×71cm×87cmのLLサイズのペットケージを持ってきた。
以前、僕の家では、父の趣味で2匹のサルを、そのケージで飼っていたのであったのである。
「王子様。王子様は人質という身分であらせられるので、失礼ながら監禁させて頂きます。どうかこの中にお入り下さい」
と僕は丁寧な口調で言った。
すると、タコ星人の王子は、存外、取り乱すこともなく、
「おう。お前らとしては、そうせざるを得ないことくらい、わかってるぜ。入ってやるよ」
と言って、存外素直にペットケージの中に入っていった。
タコ星人の王子は、ペットケージの中に入ると、
「おい。バカな人間。オレは腹が減っているんだ。何か食い物もってこいよ」
と傲慢な態度で言った。
「はい。わかりました」
僕は、スマートフォンで、ピザーラに電話した。
そして、マルゲリータクォーターのラージサイズとシーザーサラダとコーンクリームスープとキリン一番搾りを注文した。
10分もかからず、ピザーラの宅配バイクがやって来た。
ピンポーン。
「はーい」
僕は玄関に出た。
「ご注文の品をお届けに来ました」
と言って、マルゲリータクォーターのラージサイズとシーザーサラダとコーンクリームスープとキリン一番搾り、を僕に渡した。
僕は、1万5000円払って、それを受けとった。
そして、それをタコ星人の王子様に献上した。
「王子様。マルゲリータクォーターのラージサイズとシーザーサラダとコーンクリームスープとキリン一番搾り、をお持ち致しました。お召し上がり下さい」
と僕は恭しく言った。
「おう。本当はフランス料理が食いたかったんだがな。まあピザで我慢しておいてやるぜ」
とタコ星人の王子は横柄な態度でピザーラの箱を開けた。
そしてガツガツ食い出した。
タコ星人の王子は横柄な態度だったが、腹が減っていたのだろう。
そしてピザが美味かったのだろう。
マルゲリータクォーターのラージサイズを一気にガツガツ食ってしまった。
そして、キリン一番搾りをゴクゴク飲んだ。
プハー、うめえー。
虚勢を張っていても、やはり腹が減っていたのだろう。
ついタコ星人の王子は本音を洩らした。
・・・・・・・・・・・・・
腹が満たされたタコ王子は、ポンポンと腹を叩いて、おもむろに窓の外を見た。
そして、
「あーあ。ついてねーぜ。可哀想なオレ様」
とつぶやいた。
そして、おもむろに和歌を一句詠んだ。
「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」
これは19歳で遣唐使として中国の唐へ渡った留学生、阿倍仲麻呂が故郷をなつかしんで詠んだ歌である。阿倍仲麻呂は、その優秀さから玄宗皇帝に気に入られ、中国名「朝衡(ちょうこう)」として50年以上、玄宗皇帝に仕えたのである。一度帰国を許されたが、途中で船が難破して引き返し、結局、日本に帰れぬまま唐の地で没してしまったのである。
気取ったヤツだと僕は思った。
阿倍仲麻呂は気品のある人物だが、このタコ野郎は、極めて生意気でワガママで口が悪く、気品のカケラもない。それにまだ地球に来て一日も経っていない。
タコ王子は僕を見た。
・・・・・・・・・・・・
「おい。オレ様はタコ惑星の王子なんだぞ。丁重に扱え。そうすれば、地球を征服することを、思いとどまってやることも考えてやるぞ」
タコ王子は生意気な口調で言った。
「おい。お前はオレ様を退屈させない義務がある。なんか面白いことをしろ」
タコ王子は生意気な口調で言った。
「何をすればいいのでしょうか?」
僕は怒りを我慢して丁重な口調で聞いた。
「そうだな。裸になって悶える女の真似をしろ。オレがそれを撮って、その動画をネットにアップしてやる。ただ全裸だとコンプライアンスに引っかかって削除されるからな。お前の母親のブラジャーとパンティーを履いてやれ」
僕はムカーと腹が立ったが、地球をタコ星人の侵略から守るためには仕方がない。
僕は両親の寝室に行って、服を脱いで、母親のブラジャーとパンティーを履いた。
姿見のカガミに、その姿が見えた。
僕はイケメンではなく女装趣味も無いので、その姿は極めてグロテスクで極めて滑稽だった。
僕はタコ王子のいる僕の部屋に行った。
ぶわっはははは。
タコ王子は、ブラジャーとパンティーを履いた僕の姿を見ると大声を出して笑った。
「よし。床に寝て、足をこっちに向けて股を大きく開け。そしてオナニーして激しく悶えろ」
屈辱的だったが地球を守るためには仕方がない。
僕は言われたように、床に寝て、タコ王子の方に向かって股を大きく開いた。
そして、片手をブラジャーの中に入れ、片手をパンティーの中に入れ、ゆっくり胸とおちんちん、を揉みしだきながら、あはん、あっは~ん、と悶え声を出した。
ぶわっはははは。
タコ王子は満足しておられるようだった。
地球の存亡は僕の演技にかかっている。
そう思うと僕はタコ王子を満足させるために、あはん、あっは~ん、と悶え声を出しながら、より激しく悶えた。
演技しているうちに僕は何だか本当に淫乱な気持ちになってきた。
「ぶわっははは。いいぞ。いいぞ」
タコ王子は哄笑しながらスマートフォンを僕に向け、悶えている僕の姿を撮影し出した。
「おい。こう言え。僕は青葉台中学の青野健太という者です。僕には女装趣味があって、毎日こういうことをしています。皆さま。どうか僕の本当の姿をとくとご覧ください。とな」
僕は怒髪天を衝いた。
こいつは何て性格の悪いヤツだ。
こいつは、徹底的に僕をおとしめることが楽しくて楽しくて仕方がないんだ。
しかし地球を守るためには仕方がない。
僕はタコ王子に言われたセリフを言った。
「僕は青葉台中学の青野健太という者です。僕には女装趣味があって、毎日こういうことをしています。皆さま。どうか僕の本当の姿をとくとご覧ください」
ぶわっははは。
タコ王子はまたも大笑いした。
30分くらい僕は演技させられた。
タコ野郎は、よし、もういいぞ、と言った。
僕は恥ずかしい演技をやめた。
タコ野郎は、スマートフォンを操作して録画した動画をYou-Tubeにアップした。
1時間もしないうちに、100万回の再生、と、いいね、と、チャンネル登録が起こった。
そしてコメントには、「わっははは。爆笑」「最高に面白い」「青野さん。面白かったでした。これからも、こういう面白い動画をアップして下さい。期待しています」などと無数のコメントが書かれていた。
タコ野郎もタコ野郎だが、日本国民も日本国民だ。
コロナワクチン後遺症や真面目な政治問題の動画は見ずに、こんなふざけた動画ばかり見たがるとは。
そんな面白おかしいことにしか興味を持たないから、日本国民はコロナ茶番の真実を知らないのだ。
そんな遊ぶことしか考えていない情けない日本国民だが僕には愛国心がある。
なので情けなくても日本国民を守るためには仕方がない。
僕はタコ野郎と同時に日本国民に対する怒りをぐっとこらえた。
・・・・・・・・・・・
翌日、学校へ行くとクラスどころか、学校中の生徒、全員が僕の昨日の恥ずかしい動画を知っていた。
教室に入ると、みんなが、僕の所にやって来た。
「おい。青野。お前の動画、見たぜ。最高に面白かったぜ」
「お前も勇気があるな。あんな動画をアップ出来るなんて」
「これからも、ああいう動画アップしろよ。必ず見てやるから」
クラス中の男子生徒が僕の所に来て、そんな感想を言った。
女子生徒もやって来た。
「青野くん。昨日の動画、見たわ」
「青野くんて真面目な性格だと思っていたけど、あんな変態な趣味があったのね。人は見かけによらないのね。でも面白かったわ」
「青野くんて露出狂の変態だったのね。知らなかったわ」
などと女子生徒は言った。
僕は女子生徒に変態と思われてしまったことに屈辱で死にたい思いになったが黙っていた。
(違うんだ、僕はタコ星人に命じられて、仕方なくやったんだ)
と僕は大声で叫びたくなったが、地球を滅亡から守るために、じっと我慢した。
僕に好意を寄せていて僕も好きで、付き合っていた佐藤愛子がツカツカとやって来た。
「青野くん。私、青野くんが好きだったけれど、申し訳ないけれど、お付き合いは、これで終わりにして下さい。ゴメンなさい。私、ああいう性癖を持った人は、どうしても生理的に受けつけられないんです」
と言って去って行った。
ガーン。ショックだった。恋人の佐藤愛子にまで僕はふられてしまった。
しかし地球の平和を守るために、僕はぐっとこらえた。
その日、学校が終わっても僕は部活の野球部には出なかった。
どうせ、また先輩や皆からからかわれるだけだからだ。
なので僕は家に帰った。
家に帰る途中、すれ違う人は僕を見ると、
「あっ。あの子よ。昨日、面白い動画をアップしたのは」
と、皆、僕のことを知っていた。
僕は恥ずかしくて外に出るのが、こわくなってしまった。
家に着いて部屋に入るとタコ星人の王子が待っていた。
「おう。帰ったか。お前の動画は500万回、再生になっているぞ。オレが撮ってやったからだ。感謝しろ」
タコ野郎は、あいかわらず横柄な口を聞いた。
僕はムカーと頭にきた。
(何が感謝だ。お前のせいで僕は日本国民みんなから変態と見られてしまったんだぞ)
と僕は怒鳴りつけてやりたかった。
しかし地球の存続のために僕はぐっと怒りをこらえた。
「おう。今日も動画を撮ってやるぞ」
タコ野郎が言った。
僕はギョッとした。
どうせまた、ろくでもないことをさせるんだろう。
こいつにとっては、徹底的に僕をおとしめることが楽しいんだから。
僕は何をやらされるのか、わからない恐怖におびえていた。
「じゃあ、お前の面白動画、二弾目だ。安村昇剛の、とにかく明るい安村をやれ。ただしパンツは履かないで全裸でな。おちんちんは手で隠せ。お前は中学1年生でまだ子供だ。おちんちんは手で隠すんだからコンプライアンスにはかからないだろう。ほれ。やれ」
僕に、恥ずかしさと同時にタコ野郎に対する激しい怒りが瞬時に起こった。
しかし人類を守るためには仕方がない。
僕はタコ野郎の前で服を全部ぬいで全裸になった。
そして、おちんちん、を手で隠して、
「では、とにかく明るい青野、をやらせて頂きます。見方によっては全裸に見えるポーズです」
と言って、サッとある格好をとった。
もちろん僕の、おちんちん、が見えないポーズである。
タコ野郎が、あっははは、と笑った。
10秒くらい、そのポーズをキープしてから直立して、
「安心して下さい。履いてないけど見えないんですよ」
と言って僕は、サッと、おちんちん、を手で隠した。
「あっははは、上手いぞ」
とタコ野郎が笑いながら、それをスマートフォンで撮影した。
これは毛穴から血が噴き出るほどの屈辱だった。
安村昇剛は海水パンツを履いてやっているが、僕は本当に全裸である。
気をつけないと、一瞬でも気を抜くと、本当に、おちんちん、が見えてしまう。
そういう点で僕の方が本物の(とにかく明るい安村)である。
僕はタコ野郎に命じられて、おちんちん、が見えない色々なポーズをとった。
10くらいのポーズをとった。
タコ野郎は、あっははは、と笑いながら、
「よし。もういいだろう」
と言った。
タコ野郎はスマートフォンをカチャカチャ操作して、その動画をYou-Tubeにアップした。
1時間もしないうちに、500万回の再生、と、いいね、と、チャンネル登録が起こった。
そしてコメントには、「わっははは。爆笑」「最高に面白い」「青野さん。面白かったでした。これからも、こういう面白い動画をアップして下さい。期待しています」などと無数のコメントが書かれていた。
まさにバズった。
翌日、おそるおそる学校に行くと、皆が僕を見て、あっははは、と笑った。
「青野。お前、露出狂だったんだな」
「お前が変態だとは知らなかったぜ」
などと散々からかわれた。
クラス委員長の杉山康子がツカツカと僕の所にやって来て、
「青野くん。話し合いの結果、決まったことなんですけど。もう私達女子に話しかけないで下さい。あなたとは絶交します。私達女子は変態とは付き合いたくないんです」
と厳しい口調で言い捨てて去って行った。
ガーン。ショックだった。
その日も学校が終わると僕は一目散に走って家に帰った。
母親と手をつないでいる小学校低学年くらいの女の子が僕を見て、
「あっ。動画に出てる、やたら脱ぎたがっている変な人だ」
と変人を見るような目で僕を見て言った。
僕はいい加減、日本国民に頭にきていた。
僕は心の中で叫んだ。
(てめーら。誰のためにオレがあんなことを、していると思っているんだ。お前ら日本人、いや、地球の全人類を宇宙人の侵略から守るために、変態よばわりされながらも、我慢してやっているんだそ)
僕はそれを大声を出して叫びたかった。
家に着いて部屋に入ると、タコ野郎が僕の帰りを待っていた。
一日中、檻の中にいるので退屈しているのだろう。
「おう。遅かったじゃねーか」
とまだ遅い時間ではないのに、タコ星人は言った。
僕はタコ星人に命じられて、毎日一本、変なことをやらされて、毎日一本、動画をアップさせられた。
タコ野郎は僕をおとしめることが楽しみなので動画は全て恥ずかしいものばかりだった。
・女の下着をクンクン嗅ぐ変態の役。
・ミニスカートを履いてセクシーな衣装で女装して、その上ルージュの口紅をつけたりして、こってりと女装メイクしての日本ハムファイターズのきつねダンス。
・ゴキブリホイホイにかかった、生きたゴキブリまで食べさせられた。
(あれは本当に気持ち悪かった。しかし昆虫食を推奨している結果になってSDGsからは感謝のコメントが書き込まれた)
・僕はカポエラなんて出来ないのに、カポエラの難しい空中回転技のアクロバットをタコ野郎の命令でやらされた。
(頭を打って、あわや死ぬところだった)
しかし日本国民は、ただただ面白おかしい動画を見たいので、僕の動画の再生数は、どんどん上がっていき、僕は日本一のユーチューバーになってしまった。
否、世界中の全ての国で、うけたので、世界一のユーチューバーになってしまった。
しかし僕はほとほと疲れてしまった。
・・・・・・・・・・・・
しかし、驚いたことが起こった。
You-Tubeの広告収入で何と100億ドルが僕の銀行預金口座に振り込まれていたのだ。
You-Tubeで収入が得られる、ということは何となく知っていた。
しかし僕は世間知らずなので、You-Tubeで収入が得られるといっても、スズメの涙ていどだろうと思っていた。
しかし、まさか、こんなに振り込まれるとは。
嬉しいというより吃驚した。
しかし驚きはすぐに僕の使命感に変わった。
僕は、この100億ドルを、ワクチン後遺症で苦しんでいる人や、ワクチンでかけがえのない親族を失った遺族の人達に寄付しようと思った。
日本政府は、ワクチン後遺症を認めず、ワクチンで近親者を失った遺族の人達は泣き寝入りしている。
しかも、その数は100万人を超しているのだ。
しかし僕は偽善的なことが嫌いだったので匿名で寄付しようと思った。
僕の恥ずかしいYou-Tubeの動画投稿が金儲けのためにやっていた、と思われるのが僕は嫌だったからだ。
今にして思えば、クラスの女子に変態よばわりされ軽蔑されたのも、僕が金儲けのためにしている、と思っていたからだろう。
寄付する先は、偽善利権党が支配する日本政府にしては、間違いなくネコババして、悪いことに使うだろうから、信頼できるワクチン後遺症の会、や、ワクチン遺族会にした。
どうしたら、匿名で大金を寄付できるかは、ネットで色々と調べたが、わからなかったので、父親に僕の思いを伝え、父親にやってもらった。
結果、100億ドルは、ワクチン後遺症で苦しんでいる人達や、ワクチンで近親者を失った遺族の人達の手に渡った。
テレビや新聞では、寄付者は誰だろうと、さかんに推測していた。
世間では、素晴らしいタイガーマスク現象だと騒いだ。
タコ星人と一緒に生活するようになって、三ヵ月、経った頃だった。
タコ星人の王子は、ある日、おもむろに、めずらしく真面目な口調で僕に話し出した。
「おい。青野。お前は、オレの意地悪によく耐えたな。世間から変態と見られ、恋人にはフラれ、カポエラのアクロバットでは死にそうになったのにな。お前を見直したよ。では本当のことを言おう。オレはタコ星人の王子ではないんだ。確かにタコ惑星の科学力は地球人の科学力をはるかに超えている。核兵器にしても一瞬で地球を滅ぼすことが出来る。そうして、実際、宇宙にいくつもある悪い惑星の国は抹殺してきた。100以上の悪い惑星の国を我々は滅ぼしてきた。しかし地球人は良い心をもったヤツもいれば、悪い心のヤツもいる。なので地球を滅ぼすか、滅ぼさないでやるか、で迷っていたんだ。そこで地球人は、どんな心の生物なのか、実地調査することに決めたんだ。お前は初めに、タコ星人が地球を征服する会話を聞いただろう。しかし、あれはウソだ。UFOから、お前は、初めから見つけて知っていたんだ。そこで、お前に地球を征服する話を、わざとお前に聞こえるように話したんだ。オレはタコ星の王子ではなく、タコ惑星のスパイだ。地球人に、三ヵ月捕まえられたら、地球人はどんなことをするか、実際に調べるために、送り込まれたスパイだ。オレはスパイ番号5991という者だ。お前は、恋人を失い、変態よばわりされながらも、地球を守るために我慢したな。お前のような、優しい立派な心を持ったヤツもいることに、オレは感動したよ。明日、三ヵ月目だ。あの場所にUFOがやって来る。オレはタコ星に帰る。オレはお前のことを正確に正直に政府に語るよ。地球人にも良いヤツはいると。たぶん、おそらく、タコ星の議会では、地球を滅ぼさない方針になるだろう。色々と意地悪してゴメンな。お前はオレの与えた試練に命がけで耐えた。お前は本当に良いヤツだ」
タコ星人は語った。
そういうことだったのか、と僕は驚いた。
しかし、それを聞いて僕は安心した。
・・・・・・・・・・
翌日になった。
僕は、タコ星人を連れて裏山に登った。
朝早い時間だったので誰も人はいなかった。
やがて空のかなたからUFOが降りてきた。
何人ものタコ星人が降りてきた。
「おお。スパイ番号5991。無事だったか」
タコ星人がスパイ番号5991の安全に驚いていた。
「こいつは青野という中学1年生だ。政府に言われたように、色々と意地悪をしたが、こいつは、よく耐えたぞ。地球人にも良いヤツはいる」
タコ星人が言った。
「そのことの詳細は、帰ってから、じっくり話してくれ。地球人に見つかったら、やっかいなことになるからな。はやくUFOに乗り込め」
言われて、タコ星人のスパイはUFOに乗り込もうとした。
タコ星人は僕の方を見て、
「青野。楽しかったぜ。地球は滅ぼさないよう政府に言ってやるからな。コロナウイルスを地球にばら撒いてゴメンな」
そう言うや、タコ星人はUFOに乗り込んだ。
UFOは、あっという間に超高速で離陸し、超高速で宇宙のかなたに飛び立っていって、見えなくなった。
僕はやれやれ、とほっとした。
ここで僕の回想を終える。
恩着せがましいことは言いたくないが。
僕が命をかけて我慢したから地球は宇宙人に侵略されていないのだぞ。
遊ぶこともいいが、そしてYou-Tubeの動画も、面白おかしいのを見るのもいいが。
少しは、メディアの言うことを、鵜呑みに信じないで、真面目な社会問題も自分で調べろ。
そうしないと本当に地球は宇宙人に侵略されてしまうぞ。



2023年7月27日(木)擱筆

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