見出し画像

二重人格ごっこ【毎週ショートショートnote】

天正10年(1582) 6月1日 光秀は老ノ坂峠を越え、沓掛にさしかかる。右へ行けば中国方面につながる西国街道の山崎、左え行けば京という別れ道。

ここで少し休憩を取り、光秀は秀吉からもらった利保微丹出医と書かれた薬を飲んだ。疲れた時に飲むと元気が出るらしい。

しばらくすると、光秀の体に異変が生じた。心臓のあたりが燃えるように熱くなり、今まで主君の信長からどんなに罵られようと殴られようと、全て自分のためになる教育だと受け止めていたのであったが、急に憎しみだけがすごい勢いで湧いてきた。

あれは教育ではない。このままだといつか俺は殺される。
今まで思ってもいない感情が光秀の脳を支配した。まるで人格が変わってしまったように。
光秀は軍勢に指示を出した。「京へ向かう、敵は本能寺にあり。」

中国地方で毛利と対峙中の秀吉の陣
黒田官兵衛「好機がおとずれましたな」
秀吉「想像以上の効き目だ」
秀吉は(二重人格ごっこ)と書かれた薬を眺めた。


409文字

たらはかにさんの企画に参加させていただきます。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?