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同期の与田#6【悪い右手】

すうう、すううぅぅ

うぅ;;;;

鼓膜に直接届く寝息と暖かくて柔らかい感触にグラグラと理性が揺さぶられる。

はあぁ;;;まさかこんな苦行を受ける事になるとは・・・






いつもの家呑みで、与田が持ってきたプロジェクターで映画を見始めた。

いくら与田が小さいといっても、シングルベッドに2人で並べば窮屈だ。

左半身にくっついている柔らかさに意識を持っていかれて映画どころではなかったが、

天井以外を視界に入れない事でなんとか自分を保つ。

ものの5分も経たずにすうすうといつもの寝息が聞こえてくる。

まあ予想通りの展開だ。


いつも以上に仕事の疲れもあったところで、いつも以上にアルコールを摂取していた。

ちらっと横目で確認した与田の寝顔がいつも以上に穏やかに見えて安心する。

後輩の事でだいぶ落ち込んでたけど、元気になったみたいでよかった。

小さい身体に抱え込みすぎなんだよな与田は。




さて・・・そろそろミッションスタートだ。

与田を起こさずベッドから抜け出るというミッションである。

今更だが壁側のポジショニングが悔やまれる。

無理に動いたら与田をベッドから落としてしまいそうだ。

とはいえ、オレの忍耐力はだいぶ削られているので時間との勝負でもある。

ふうぅぅーーーと長い息を吐いてから、スタートを切っていく。



左肩をすぼめてゆっくりと仰向けの身体を横に向けていく。

・・・・・・

意外といけるな。

・・・・・・

ヌルゲーかもしれん。

そう思い油断して顔を上げてしまった。

予想以上に近い距離の与田の顔面に身体の火照りを感じてしまい、静かに息を吐く。

んぅ・・・

何かを察したんだろうか、与田の唇から悩ましい音が漏れる。

ヤバいと思い一旦仰向けの体制に戻ると同時にオレの方に寝返りを打つ与田。

わわ;;;まじか//////

左手と左足にがっちり固められて、完全に抱き枕状態だ。


これはさすがに、さすがにだぞ;;;;

無理やり抜け出すしか;;;と思い身体を起こそうとすると、思いのほか強い力でぎゅっとしがみつく。

何度か試みても同じ反応で、開放してもらえない。

くっ;;まじか・・・・

・・・・・・

・・・・・・

えーっと・・・

・・・・・・

・・・・・・

こんな状況で我慢できるやつなんてこの世にいる?

・・・・・・

・・・・・・

いねえよなぁ・・・



そう考えた時には意思を持った右手が与田の背中に手を回していた。

脳から信号を送った覚えはなかったが、右手から伝わる暴力的な柔らかさにすぐに脳が寄生される。

これが不可抗力ってやつか・・・

考えている間も右手はゆっくりと下の方へ与田の身体を滑っていく。

もうダメだ・・・

ぐにゃぐにゃになってしまった理性を手離し、同期の味を確かめようとしている自分に気づいても止まらないものは止まらない。

与田・・・

口に出していない呼びかけに応えるように唇が開く。




与:いただきまぁ


はっ?

・・・・・・

・・・・・・

与:んぅ・・・美味しい・・・

・・・・・・

・・・・・・

ふっ・・・

幸せそうな寝顔から漏れ出る寝言に噴出して、少し冷静になる。

・・・・・・

・・・・・・

うっわ;;;

あっぶねえ;;;

同期の寝込みを襲おうとしてたぞ;;

全部この右手のせいだ;;;オレは悪くないぞ、たぶん;;;


それにしても・・・・

本当に気持ちよさそうに寝るよなあ。

朝飯の夢でも見てるんだろうか。面白いやつだ。


警戒心の欠片もない寝顔を眺めていると、ふと疑問が浮かび上がる。


オレと与田ってなんなんだ・・・


同期ってだけでなんともない人を何度も泊めないでしょ、という桜の言葉を思い出す。



さすがにただの同期という枠に収まりきってない事は分かっているが・・・

自問しても答えにたどり着きそうもない問題にモヤモヤしていると、柔らかすぎる拘束がすうっと解かれていく。

目が開かないまま上半身をむくっと起こす。


〇:与田?

与:・・・トイレ

〇:おう



ベッドから転がり落ちるみたいにして、床に四つん這いになった後にフラフラと立ち上がる。

〇:おいっ;;;大丈夫か?

うんうんと頭を振った後にサムズアップして歩き出す。

いや、全然目開いてない;;;

だめだなこれは・・・

トイレまでエスコートしようと立ち上がった瞬間に大きくバランスを崩す与田。

あっ、あぶねえ!!!

間に合わないかと思ったが、必死で伸ばした右手が思っていたよりも伸びたようだ。

ギリギリのところで倒れこむ与田を支える事に成功する。

ふう・・・よかった。

安心すると同時に与田の大きな部分をしっかり支えている事に気づく。

〇:ああっ;;;;

与:あ、ごめん・・・

〇:こっちこそ、すまん;;;


与田を無事にトイレに送り届けてから、昂りと感触が消えない右手を落ち着かせる。

今のは仕方ない事だ。ノーカンノーカン;;;;

与田も気にしてないみたいだし;;;







遅いな・・・

不粋だぞと思いつつ、さすがに心配で声をかける。

〇:与田、大丈夫か?

与:んぅー、えっ

これは寝てたな・・・

〇:出てこれるかー

与:んっ、出る

トイレから出てきてボケボケしながら手を洗っている間に用意していた水を手渡す。

ようやく目が少し開いて、ごきゅっと喉をならす。

〇:呑み過ぎたか?

与:んぅー?大丈夫大丈夫。あ、映画

眠気とアルコールに呑まれた様子でふわふわと返事をした後に、天井を指さす。

〇:まあ今日はもう寝るぞ

与:一緒に?

〇:バカ言うな;;;

ふらつく与田を連れて行くとオレの袖をひっぱって一緒にベッドに誘い込まれる。



〇:ちょ;;;おいっ;;;

与:続き・・・一緒に見よ・・・

〇:明日見ればいいだろ?

与:やだ・・・今日見る・・・

珍しい甘えモードに右手が疼きだすのを感じて、脳から必死にストップシグナルを出す。

その間も与田は小動物みたいなクリクリの目で真っすぐにこっちを見てくる。

ギュッと握られている袖は首を縦に振らないと解放されそうもない。


はあ・・・

〇:分かったよ


まあ、どうせすぐ寝るだろうし

壁側じゃなければベッドから抜け出るのも難しくないだろう。

そう諦めて与田の隣に身体を沈めたんだが・・・

与:あ、そっちがいい

オレの身体の上をゴロンとローリングする同期。

お;;おい;;;

いや、色々あたりすぎてるし;;;

なんなら与田の唇、オレのほっぺたに当たって;;;

これはそういうカウントには入んないか;;;;

;;;;



そして結局壁側・・・


困った;;;さっきと一緒じゃないか;;;

ん?

さっきと違い天井を見ないでじっとオレの顔を見ている与田。



〇:ど、どした?;;;

与:2人だと狭いね///

〇:そらそうだろ;;;;

与:ねえ、良いこと考えた。腕枕して///

〇:するかっ!!

与:いいやん、同期なんだし///

〇:ダメだろ!!同期じゃ!!

与:むぅぅー、けち

〇:と、とにかく続き見るんだろ;;;


与:むぅうぅう・・・・

与:むむむむ・・・・

与:むむむむむむむうう・・・・



与:あ、いいこと考えた


与:ねえ〇〇、こっち見て///


〇:なんだよ;;;


与:いただきまぁ/////////



ぶちゅーというテロップが見えるくらい、たっぷりと唇を押し当てられる。


エ、ナニコレ!!!;;;;/////////


与:んぅっ//////ぷっはぁぁー

盛大に唇を離してから固まっているオレを見て満足そうに笑う。

与:ふっふっつ、ふっつ

与:これで彼女に昇格/////////


ハ、ナニソレ!!!;;;;/////////




理解の範疇を軽々超えられて、身体が機能しない。

そんなオレの左腕をわが物のように枕にしてすぅーっと秒で寝に入る同期。

・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

ふう・・・

一息ついてから、あらためて与田の行動を振り返る。

・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

ふう・・・

声に出すと安らかに寝ている与田を起こしてしまうので、オフボーカルのフルボリュームで叫ぶ。



こんのぉぉ、酔っ払いがぁぁ;;;;!!!!!!









謎に与田とキスしてしまったが、どうせ覚えていないだろう。

だとしたらオレも忘れるべきだという事くらいは分かるんだが。

問題はオレの理性が朝までもつかどうかという事だ。

左側は与田専用枕と化しているので問題ないが、また右手が勝手に動かないか心配だ。

そーいえば前に与田と桜のハートキャッチをしたのもこっちだったな;;;

なるほどオレが悪いんじゃなくて、この右手が悪いんだろう。

・・・・・・

・・・・・・

とはいえ、さっき与田の危機を救ってくれたのもコイツだったか・・・

顔から突っ込むような姿勢だったし、怪我がなくて本当によかった。

一応礼でも言っておくべきか。



〇:さっきはありがとな

右:礼には及ばないぞ

!!!;;;


脳直で返事が聞こえて驚くが、オレもだいぶ酔ってるんだなあと納得する。

どうせ眠れる気がしないし好都合だ。

ちょっと付き合ってもらうか。



〇:なんかお前ばっかりいい思いしてるよな

右:何言ってんだ。〇〇も一緒に楽しんだじゃないか

〇:楽しんだって;;;まあそうなるのか

右:オレは桜ちゃん派だな、〇〇は与田ちゃんだろ?

〇:おい!!桜はダメだぞっ!!

右:それにしても与田ちゃんのは立派だよなぁ

〇:確かに・・・って;;;また勝手に暴走すんなよ

右:ん?お前は与田ちゃんに触りたくないのか?

〇:いや;;触りたいっちゃ触りたいけど;;;ダメだろ

右:分からないな・・・なんでダメなんだ?

〇:同期っていうのはそういう事をする関係じゃないんだよ;;;

右:じゃあ同期なんてやめたらいいじゃないか

〇:そんなに簡単にやめれるもんじゃないんだよ

右:そうなのか、色々と面倒なんだな人間っていうのは

〇:人間って・・・ん?お前は人間って事でいいのか?

右:それは難しい問いだな。長くなりそうだ

〇:それは助かる・・・・







与:ええぇぇっ!!!なんで一緒に寝てんの?

明け方まで続いた問答を切り裂いたのは珍しく朝から声が出ている同期だった。


【続く】






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