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この素晴らしき複雑な世界

幼稚園の頃、ムスメは多くのちびっ子女子の例に漏れず、プリキュアに夢中になった。
毎週TVにかじりつき、誕生日やクリスマスには、プリキュアのオモチャをせがまれた。
日々、幼稚園でも公園でも家でも、プリキュアごっこが繰り広げられ、私もよく相手をさせられた。
遊びのクライマックスはもちろん変身シーンなのだが、変身時のお決まりのセリフが長くて覚えられないムスメは、やたら「はーっ!」を繰り返して誤魔化していたっけ。

小学生になっても、しばらくは見ていたけれど、自然と興味は薄れていき、いつしか卒業となった。  


…と思っていたのだけど。 

高校生になったムスメが、急に「またプリキュアが観たくなった」と言い出したのだ。
それが、ちょうど去年の今頃。
プリキュア20周年という節目に作られた『ひろがる!スカイプリキュア』。
久しぶりのプリキュアは、ずいぶんとアップデートされていた。
初めて男の子や成人女性もプリキュアになったことで、世間的にも話題になった。

男の子だってプリキュアになれるんだ!、と希望に燃えたちびっ子男子がいたかどうかは、さておき。
多様性の波は、子供向けアニメにまで進出しているのだ。
性別も年齢も、もう関係ないんだってさ。


そして、この日曜日。
新しいシリーズ、『わんだふるプリキュア!』が始まった。
今度はなんと、犬がプリキュアになった。
ついに多様性の時代は、生物の垣根まで越えてきたようだ。えらいこっちゃ。
可愛らしいパピヨン犬に、なにやら商売の匂いも感じる(笑)



今季のドラマでは、『不適切にもほどがある!』も気になる。
昭和どっぷりのオヤジ教師が、ひょんなことから令和の世界にワープしてしまい、今やタブーとなっているような不適切発言をしまくるのだ。
昭和では当たり前で、認められていたことが、令和では信じられない目を疑う行動となってしまい、不審者扱いすらされてしまう始末。


自分も昭和世代だが、そういえば「男のくせに」とか「女の子なんだから」とか、普通に耳にしていた気がする。
けつバットも、悪いことをした男子は教室の前に出て先生にやられていたし。
先生の言うことは絶対で、不条理なことも飲み込んで親も子もガマンしていた。

いくら昭和でも、ドラマのように教室で生徒の横でタバコ吸ってる先生はいなかったけど(笑)
確かに、喫煙者は今よりずっと幅をきかせていて、タバコを吸わない人の方がガマンしていた時代だった。


ある企業で働いた時は、明らかに仕事ができて経験もあり、皆から頼りにされている女性がいて、新人指導にもあたっていたのだが、何の役にもついていなかった。
一方で、どう見ても彼女より仕事ができず、人間的にもあまり尊敬できないような男性が、課長をやっていた。

わりとオープンなイメージがあったのだが、中に入ってみればガチガチの日本企業であった。
あれが「ガラスの天井」というやつか…、と今ならわかる。
女性のボスは全然見かけなかったし、年配で働いてる女性もほとんどいなかった。



様々な不公平や、偏見や、理由なきルール。
そういったものを正し、平等に誰もが生きやすくするために改善を重ね、多様性の時代になった今の世界。
ありがたいことだ。
昔よりもずっと自由になったし、選択肢も増えた。



のはずなのに。

気づけば、ハラスメントになるからと言いたいことも言えなくなったり、権利や主張を重視するあまり、結局言い出せない側の人にしわ寄せがきてガマンしていたり。
平等にと言って、かえって仕事を増やしたり失くしたり。
個人情報とか、男女同権とか、格差社会とか。 
あ〜、なんだか複雑でややこしい。
住み良くしたはずの世界なのに、息苦しさも生み出してしまったようだ。


まあ、どんなに頑張っても、完ぺきな世界なんてありえないわけで。
いつの世も、良い面もあるし悪い面もある。
どの時代も、若者は「大人はわかってくれない」と言うし、年配者は「最近の若者は…」とぼやく。
賛成する人がいれば、必ず反対する人もいるのだ。


多様性の時代。
きっと大事なのは、シンプルに「いろんな人がいる」ってことを認めること。
そして、心を柔らかくする柔軟性。
理解はできなくても、存在は否定しない。
それだけでも、道は塞がれないし、風が通る。
いろんな人がいて、いろんな考え方や価値観があって、いろんな生き方がある。
ただ、それだけ。



ということで。
今年も毎週、プリキュアと共に日曜の朝を過ごすことも容認しよう。
クレヨンしんちゃんを録画してまで見るのも、まぁ、いい。
高校生であろうと、もうすぐ成人になろうと、好きなものを好きなように見るがいい。

しかし、推しの出てくる番組を全て録画しまくるのはやめていただきたい。
これは多様性の問題ではなく、単にハードディスクの容量の問題である。





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