ショートショート 友田

友達の友田っちが、
遠足の自由時間終了時刻になっても、
そして、
大幅にその時刻を過ぎても、
一向に現れる気配がなかったので、
当然、先生達は大慌てになりまして、
焦る気持ち丸出しで
友田っちを探し始めました。

更に先生達は、
僕達生徒達にも
友田っちを探すようにとお願いしてきまして、友田っち探しの協力を求めてきたと言う状況です。

と言う訳なんですが、
それから二十分を経過しても、
友田っちは見つかりません。
なので、
友田っちの捜索を切り上げる者が、
ちらほらと出てきまして、
「早く帰りたい」
と言うムードと声が溢れ出してきました。

と、そんな中、
友田っちとは仲が良いものの、
僕とは大して仲が良くない神波っちが
僕の元へと寄って来まして、
更には僕の耳元へと寄って来まして、
「もしかしたら
宇宙人に連れ去られちゃったのかもね」
と小声でそんなもしかしたらを言ってきた。

そう言われた僕は、
瞬時に、
「なんだこいつ。つまんねーな」
と思ったものの、
その思いは
そっと優しく胸に仕舞っておくことにし、
「だったら恐いね」
と苦笑いを浮かべ、そう返してあげた。
そして、
苦笑いを浮かべたまま、
秒で神波っちから離れていった僕は、
割と仲が良い赤井っちのところへと向かった。
そして、
苦笑いから微笑みに変えていった僕は、
赤井っちに声を掛けていき、
「友田っちはどこに行っちゃったんだろう?」と聞いていく。

そうしたところ赤井っちは、
「大胆な予想で申し訳ないが、
鏡餅の上に飾られている
だいだいになっちゃったんじゃないか?
そう思えなくもないだろ?」
と確かに大胆な予想をしてきたので、
「いやいや……」
と思った僕は、
「大胆すぎるよ。
どういう流れで、あの橙になっちゃうのさ、
あり得ないよ」
と、その大胆予想を笑顔で否定していく。
それを受けた赤井っちは、
「そうかぁ、やっぱり難しい推論だったか」
と言い、
「そうかぁ」
と難しい顔をして、歩き去って行った。

一体全体、
友田っちはどこでなにをしているんだ?
もしかして、
宇宙人に連れ去られたとかじゃないよな?

と、そんなことを考えていたら、
割とよく話をする仲である女子の今井っちが、僕のところへとやって来た。
今井っちは、
僕のところへとやって来ると、
「友田っちさぁ、
もしかしたら帰ってるんじゃない?」
なんて、
そんなもしかしたらを言ってきて、
「私はなんとなく
友田っちがタクシーで帰る姿を
想像してしまったの」
とそんな想像をしたことを語ってきた。

そこで僕は、
「う~ん、否めないと言えば否めないね」
と返していき、
「友田っちは確かに、
そういうところがあるもんね。
歩いて行ける距離なのに、
すぐにタクシー呼びたいって言う、
そういうところあるもんね。
友田っちなら、あり得る話だよね」
と今井っちが語ってきた想像的意見に対して、なくはないという反応を示していった。
であるならば、
そんな想像的意見を先生達に言ってみるべきだろうか?
なんて僕は思った訳だけど、
そう思ったその時、
どこからともなく、
ふらっと友田っちが現れたのです。

そして、
先生達に向かって歩いて行った友田っちは、
友田っち自ら大きな声で
「先生! 友田っちが見つかりました!」
と報告をしたのです。
その報告を受けた先生達は、
「えっ! ご本人!?」
と突然のご本人登場に当然、
驚きを示した訳だけど、
見つかった安心が何より大きいようで、
「良かった良かった」
と安堵の表情を浮かべていました。
とは言いながらも、
先生達は優しい目と優しい声で、
「どこに行ってたの?」
と友田っちに聞いていきました。

聞かれた友田っちは、
「別に何があったって訳じゃないんだけど」
なんて言うと、
「この世の全てが嫌になっちゃって……」
だなんて言い、
「だから失踪しました」
と、その理由を告白したのです。
しかし、
友田っちは戻って来たので、
なぜ戻って来たのかということなんだけど、
友田っちが言ったのは、
「帰るまでが遠足だって思い出したので、
今ここに戻って来ました」
ということでした。

その発言を聞いた先生達は、
言葉を失くしたような感じで、
何も言えなくなっていた訳だけど、
僕としては、
何はともあれ
友田っちが見つかって良かったって感じだ。
だから僕は、
そのような感じで、
友田っちの元へと駆け寄っていき、
「無事でなによりだよ」
と声を掛けていった。
すると友田っちは、
「そうだろ」
だなんて誇らしげに胸を張ってきたので、
僕はそっと、
その胸を抑えつけていき、
「とりあえず、もう失踪はしないでよ」
とのお願いをした。
とのお願いに対し、
友田っちは、
「ああ、分かったよ。もうしない」
と約束してくれた訳だけど、
その最後に、
「口約束だけどな」
と言ってきたのだった。

と、そんなところで、
「よし、皆、帰るぞ」
と先生達が帰りの遠足を告げてきました。
なので皆、速やかに整列していく。
そして、
友田っちは先生に手を握られていく。

まぁ、それは仕方ないよね。
先生達も、
本日二度目の失踪をされる訳にはいかないだろうし、それは確かに仕方ない。
そういう対応をせざるを得ないよ。
一気に問題児として躍り出ちゃったのだから仕方ない。

まぁ、でも友田っちは面白いよね。
これからもずっと、
友田っちとは友達でいたいな。

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