ショートショート 隣の席のかなかちゃん

「雨だね」
と隣の席のかなかちゃんが言ってきたので、「雨なの!?」
と驚いた私は、
窓の外に目を向け、空を見てみる。

その結果、
私の目に日光が飛び込んできて、
「眩しっ!」
となったので、
私はかなかちゃんの方を向き、
「お日様が目に差し込んできたよ」
との報告をしたのです。

すると、
かなかちゃんは、
「まぁ、冗談だからね」
と言い、
「なんてことのない冗談だからね」
とも言いまして、
「特になんの意味もない冗談だからね」
と言って締めくくりました。

これに対して私は、
「ああ、そっか……」
としか返せず、あとは、
「ははっ……」
と愛想笑いをするだけでありまして、
もうそれ以上リアクションなんかはないので、ここは学生の本分をわきまえ、
勉学にでも励もうと思います。
今は自習の時間でもありますしね。

そうして、
五分ぐらいの時が経った頃、
かなかちゃんときたらまた、
唐突に喋りだし、
「これからは償いの人生だ」
だなんて言ったので、
「え? なんで?」
と反応した私は、
「事情を詳しく聞かせてよ」
って聞く訳ですけど、
かなかちゃんときたらまた、
「いや、冗談だよ」
なんて言い、
「なんの意味もない無意味な冗談だよ」
とかって続け、
「英語で言うところのジョークって奴だよ」
と言って、お話しを終了した。

そうなると私としては、
「またもやかぁ~」
と苦笑いするしかなく、
あとはまた、
「ははっ……」
と愛想笑いをするぐらいですかね。
そんななんか、大きな溜め息を吐いて、
「面倒臭いな、もう」
と吐き捨てても可哀想だし、
こういう対応でいいかなって、
そう私は思う訳です。

でもなんか、本当にどうでもいい冗談だから、あれだなと思う。
もっと、酷い冗談とか言えばいいのに。
人間性を疑うような冗談を聞かせてほしいなとは思います。

例えば、
「目玉、百個持ってる」
とか、
「サッカーボールの代わりに
鮮魚でサッカーをした」
みたいな。
そういうのであれば、
私としても人間性を疑えるし、
いい冗談だと思う。

基本的に私って、
人間性を疑いたい人間だから、
あれ?
って発言があれば、ついに来たなと思って人間性を疑わせてもらいます。
ようやく、人間性をはかる時が来たかって感じで疑わせてもらいますよ。
不機嫌な態度を持ってして、
「そういう冗談はやめてくれる?」
って睨み付けてやりますから。

としたところで、
かなかちゃんは、
「ヤバイッ……ビー玉飲み込んだ」
だなんて言う、
くだらない冗談を言ってきた。
くだらないんだけど、
私はここで冷ややかに、
「どうせ冗談でしょ」
なんて言ったりはしない。
そうやって言うことで、かなかちゃんの
冗談意欲を削ぐのは可哀想だしね。
そのせいで暫くの間、
冗談と距離を置くことにした、
とか言われたら
申し訳ない気持ちになると思うしさ。
だから私は、
そういう冷たい態度はとりませんよ。
だから私は、ここはもう、
ちょっと驚いた感じで、
「えっ! 大丈夫?」
と声を掛けに行く訳です。
行きましたよ、ええ。

そしたら、かなかちゃんは案の定、
「大丈夫だよ。だって冗談だし」
と言い、
「なんの脈絡もない、唐突な冗談だよ」
とも続け、
「思い出したとしても、
思い出し笑いには繋がらない冗談」
なんて言いまして話を結びました。

ってなった今、
私はほっとした笑顔を見せ、
「あ~、心配して損した~」
だなんて言い、
「もう~やめてよ~」
とかって言いまして、
「はぁ~もう」
と首を横に振ったら、
そのまま、
「ははっ……」
と愛想笑いをして、やり取りを終えるのです。

そして直ぐ様、
「さっ勉強、勉強」
と言って勉強に取り掛かるのです。
まぁその、
自習の時間ですしね、本来。
おふざけの時間じゃありませんから、
ええ、勉強しますよ。

として、五分ぐらいの時が経った頃、
「晴れてるね」
と隣の席のかなかちゃんが言ってきたので、
まぁ、さっき晴れてたしと私は思いながら、
空も見ず、
「だね」
と言ったのでした。

全く、
くだらない現状を言うくらいなら、
くだらない冗談を言ってくださいよ、
かなかちゃん。

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