最近の記事

自分の内側を切り裂かれて

赤子の金切り声が耳をつんざいて、頭の中で乱反射する。 不快には思わない。 透明な怪物が自分の内側を切り裂いて、赤子のように叫ぶしかない時が、私にもあるだろうと、思わされるだけなのだ。

    • 神さまへの執着

      赤い提灯で周囲が埋め尽くされた寺に入った。細部まで時間をかけて作りこんだことが明白な、彫刻をはじめとする装飾の数々。 それに飾られているのは、目の端を釣り上げて髭を長く伸ばす神さまだ。 神さまの偶像の装飾に、これほどまでに時間と技術を結集させた彼らは、いったいどのような現実を生き抜いていたのか。

      • 夜に閉じ込めて

        「そろそろ起きんなんよ!」昼下がりの妹の部屋に、彼女を昼間に引きづり出そうとする父の声が降りてくる。 夜だけが、私たちに何も持たず、誰にも見られず、深く深く海に潜ることを許してくれるのだ。 どうか彼女を夜に閉じ込めて。 ******* 「昼夜逆転」という言葉が、怠惰で改善されるべきだという文脈で広く使われている。一方で、精神的混乱から周りに敵しかいない孤立無援の状態だと認識している時、夜が作り出す1人の空間が救いになる。そのため、「そろそろ起きんなんよ!」という言葉が、

        • 夫婦喧嘩から考える、相手を「ディスる力」

           今までは彼らがけんかをするたびに自分は落ち込んでいたが、今はその内容を分析する余裕ができた。するとしょうもなすぎて草生える内容で喧嘩していることが判明。相手のなんでもない話を、自分を傷つける形で解釈し、相手のことを考えず、むやみに自分の感情を発露させているのだ。そこには論理性のかけらもなかった。  昔のむやみに優しい私は、彼らに情状酌量の余地がないか、共感できる部分がないか考えたのかもしれないが、それはとてつもない感情の負担を自分にかけることになり、正直疲れた。「共感力」

        自分の内側を切り裂かれて

          ひさしぶりに友達の自撮りを見た。 水平で細い眉毛、アイラインに縁どられた目、ファンデーションに隠された肌。 私は彼女特有の目の形、眉毛の生え方、肌質がいとおしかったのに。 彼女は以前外部に存在していた美の基準を、すっかりと自分の中に取り込んでしまった。

          ひさしぶりに友達の自撮りを見た。 水平で細い眉毛、アイラインに縁どられた目、ファンデーションに隠された肌。 私は彼女特有の目の形、眉毛の生え方、肌質がいとおしかったのに。 彼女は以前外部に存在していた美の基準を、すっかりと自分の中に取り込んでしまった。

          「ライ麦畑でつかまえて」-不快感を言語化する-

          主人公は口が悪い  リーディング力を上げる目的で、ライ麦畑でつかまえて(英語)を1日2チャプターずつ読んでいる。今はチャプター10まで読んだけど、ここまでほぼ主人公が周りの友達・先生の嫌なところを言いまくっているだけ。また、主人公はかなり口が悪く、goddam/ hell/ phony(いんちき)/ crumby(薄汚い)が一ページに計10回以上は出てくる。おかげで自分の頭の中も口が悪くなった。 不快感を言語化する  しかし面白い点として、登場人物が周りの友達から与えられた

          「ライ麦畑でつかまえて」-不快感を言語化する-

          命は大切だ という言説について

          *以下筆者の個人的な意見です。 「命の大切さ」を語る人・言説が世間に流布している。けれど、それに遭遇するために命があれば幸せじゃなくてもいいのか?と思ってしまう。ある中学校でのいじめ自殺事件のあと、いのちの大切さを伝える集会が開かれたそうだ。命の大切さ(生命に対する権利があること)以前に、だれもが幸福になる権利を持っていること(幸福追求権)について教えるべきではないか? 自殺を無理に止めようとする風潮も私はあまり好ましく思っていない。命の大切さ/自分の体を傷つけてはいけない

          命は大切だ という言説について