ただ一人、傷ついたのは
さくらももこさんの
『おんぶにだっこ』
というエッセイを読みました。
「ちびまる子ちゃん」の作者
さくらももこさんの
2歳半〜小学校低学年頃の幼年期を描いた
心温まる自伝的エッセイ。
何気ない日常から切り取られた
情緒的なエピソードの数々が
さくらさんの豊かな感性を鮮やかに映し出しています。
中でも心に残ったのは
「盗んだビーズ」というお話。
ある日ももちゃんは
近所の京ちゃんの家に遊びに行きました。
京ちゃん、あそぼー
と部屋に入っていったけれど
京ちゃんは留守。
じゃあまた来るね、と
京ちゃんのお母さんに告げて去ろうとしますが
京ちゃんのお部屋を通ったとき
プラスチックの箱にいっぱい入った
素敵なビーズが目に入りました。
色々な色があって
キラキラ光るビーズ。
私も欲しいなあ
と前から思っていたビーズ。
魔がさしたももちゃんは
ビーズ玉を5個
こっそりポケットに入れて
持ち帰ってしまいました。
家を出た瞬間から
ももちゃんは
とんでもないことをしてしまったと後悔します。
私は今日からドロボーだ。
他人のものを盗むなんてサイテーだ。
逮捕されちゃうかも。
死んだら地獄行きだ。
家族にドロボーがいるなんて知ったら
お姉ちゃんやお母さんはどう思うかな。
次の日
洗濯をしようとしたお母さんが
ももちゃんのズボンのポケットから
あのビーズを見つけて
どうしたのかと尋ねます。
トモちゃんからもらった、と
とっさに嘘をついてしまったももちゃん。
台所のテーブルの隅に置かれた
哀しい光を放つビーズ玉を見ながら
「人の物を盗んでまで欲しい物なんて何ひとつない」と
心の底から思うのでした。
後日
ももちゃんはまた
京ちゃんのおうちに遊びに行きます。
京ちゃんは
まさかももちゃんがドロボーだなんて知る由もなく
いつも通り楽しく遊んでくれました。
オモチャも貸してくれました。
あのビーズ玉の箱を持ってきて
「ももちゃんにも少しあげようか」
と言ってくれました。
ももちゃんは一瞬黙り
小さく「…いらない」と答えて
泣きだしてしまうのです。
京ちゃんや京ちゃんのお母さんは
どうしたの??
と心配してくれますが
何も言えずに泣き続けるももちゃん。
家に帰っても
家族にどうしたのかと聞かれても
ももちゃんは
ただただ泣き続けるしかなかったのでした。
結局このことは
京ちゃんにも京ちゃんのお母さんにも
ももちゃんのお母さんにもお姉ちゃんにも
誰にもバレませんでした。
ももちゃんは誰からも怒られることはなかったし
誰も傷つけませんでした。
でも
この事件でただ一人傷ついてしまったのは
他でもないももちゃん自身だったのです。
少しあげようか?
と言われて
いらない
としか言えなかったのはなぜ?
あんなに欲しかったはずなのに。
盗んでもう持ってるからいらないのか。
違いますよね。
他人のものを盗んでしまったという自責の念。
その事実は一生消えないんだという深いショック。
悪いことをしたら
自分自身をも傷つけることになるよ!
なんて幼稚園の先生によく言われたものですが
こういうことですね。
どうしようもなくなって
ひとり泣き続けるしかなくて
幼いももちゃんが
初めて本当の痛みを知った瞬間だったのだと思います。
あとがきにて
さくらさんはこんな風におっしゃっています。
「盗んだビーズ」では
初めて悪いことをしてしまった
幼き日のさくらさんが
大事なことに気がついたわけですね。
そしてそれは
長く記憶に残っている。
本書ではこのほかにも
「乳母車から見た景色」
「大規模な心配」
「古い顕微鏡」
などなど
ささやかなエピソードの数々に
深い感動や
繊細な痛みや
瑞々しい感性が溢れていて素敵。
私もももちゃんと似ていて
幼い頃から自分の強すぎる感受性に振り回され
絶えず心がヒリヒリしていた子どもだったので
その点シンパシーを感じました。
さくらさんがご存命なら
ファンレターを書きたいぐらいだけど
それが出来ないのが残念。
いやしかし
こんなに幼い頃のことを
これほど詳細に覚えてらっしゃることがスゴいです。
乳母車からの景色なんて
私は全く覚えていませんもの。
さくらももこさんのエッセイ
『おんぶにだっこ』
を読んだよってお話でした🌸
あらすじをもう少しうまくまとめて書けるように
なりたいもんだわあ。笑
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