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もうすぐなくなるシアターコクーンと、今が見ごろの宮沢りえ ~「アンナ・カレーニナ」@シアターコクーン~

2020年に公演予定だったもののコロナ禍で中止となり、2年半ぶりに上演が実現した。宮沢りえ演じるアンナは気高く妖艶。いくら舞台女優の価値は美貌ではないといっても、ここまで美しいと物語にリアリティを与えてくれる。若い人妻の役だが、演技力と美貌のバランスからキャスティングするなら今だ。
ヴロンスキー役の渡辺圭祐もTV画面では美しいと思っていたが、残念ながらシアターコクーンの一番後ろまでは魅力が届かなかった。
作品中何度もセリフで繰り返された「愛」と「許し」。アンナの夫・カレーニン(小日向文世)は最後にはアンナを許したのだろうか。名優の表情は、”割り切ることは簡単ではないが、憎み続けることもまた難しい”と語っていた。

今回の目的は、改装前のシアターコクーンにお別れを言うことだ。
舞台は3時間45分とは思えないテンポの良さではあったが、それでも時には退屈だ。一階席の一番後ろから中二階や三階席に目をやる。素敵な劇場だったなぁ。
最初にシアターコクーンで見たのは「上海バンスキング」。何度も見たが、いつもキャストが最後にロビーで演奏し歌を歌いながら観客を送り出してくれた。
藤原竜也の「身毒丸」「プレーヤー」、そして「ムサシ」は3回見た。ハズレは一度もない。
舞台の後ろを開けて現実世界を借景とする平成中村座の手法はコクーン歌舞伎から始まったはずだ。江戸の芝居小屋を再現するということで座席での飲食OK。お団子やお弁当を食べながらの観劇は楽しかった。今では、ロビーでコーヒーすら売られていないが。
そして、宮沢りえの舞台を初めて見たのもここだ。NODA MAP「ロープ」。まだ舞台の発声ができておらず、声が割れていたのを覚えている。
いつの間にこんな大女優になったのか。今、”舞台で見たい女優”と言ったら真っ先に名前があがるだろう。蜷川幸雄氏がご存命の間にシェークスピアをやってもらいたかったと思いながら、拍手を送る。


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