ラジオ愛好家 橋場ノ雪

ラジオと落語と観劇が好き。その趣味に使うお金を稼ぐためだけに仕事をしている。定年後に困…

ラジオ愛好家 橋場ノ雪

ラジオと落語と観劇が好き。その趣味に使うお金を稼ぐためだけに仕事をしている。定年後に困らないように貯金をしようと決心するも、面白そうな芝居や映画のチケットをつい買ってしまい、まったく貯金ができない。

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観劇日記を書き続けても何も覚えていられないので、noteを始めることにした話

自分が見た芝居・落語のチケットやチラシをファイルしている。私が死んだら全部ゴミだな、と時々手が止まるが、やはりチケットを保存せずにはいられない。 五年日記の片隅に感想も書く。スペースは一日5行分しかない。でも、ほんの一言、面白かったのかつまらなかったのかは書ける。 ここまでしているのに、昔見た芝居の芯の部分が思い出せない。ひどい時には、それを見たという記憶すらおぼろげだ。古い土壁のように、私の思い出はボロボロと脳裏からはがれて行く。 「綺麗だった」「楽しかった」と日記に書い

    • 錦秋十月大歌舞伎「文七元結物語」 

      「寺島しのぶは女形に交じると声が細い」という劇評を見たけれど、そんなことはなかった。むしろ、現代劇の役者さんが歌舞伎にでた時に発する平板な台詞回しが全くない。世話物のイントネーションが体に入っているんだなぁ、とびっくりした。やはり、歌舞伎だけは世襲が必要な気がする。 舞台そのものは、従来の歌舞伎とも落語とも違って、角海老の店先から始まる。回り舞台を効果的に使おうとしていたし、美術も通常の座敷や長屋とはちがっていて面白いところもあったが、効果音が耳障り。宇宙からの交信のようなキ

      • 「レイディマクベス」@よみうり大手町ホール

        「新解釈」のシェークスピアばかり見てきたので、オリジナルのシェークスピアを実はよく知らない。 マクベスは3作目。一つは宮藤官九郎脚本の「メタルマクベス」、もう一つは蜷川幸雄演出の「マクベス」。どちらもざっくりと、「王を裏切って王座についたマクベスは滅ぼされた」という印象。どちらもマクベスはマクベス夫人より小心者だった。 今回のマクベス夫人(レイディマクベス)は、かつて優秀な軍人であり、」夫と共に戦っていたのだが、娘の出産以降戦場に戻れなくなってしまった。しかしながら、国を統

        • ファンはタレントに似る、とは限らない     ~吉川晃司@武道館~

          東京03のコントライブでは、客層がオシャレな若い人が多いことに感心した。こういう人たちが彼らを支持しているのか……!もちろん、私のような中年やもっとお年を召した方もいらっしゃるのだが、みんなスッとして小綺麗だ。 ファンは推しタレントに似るという。 Kinki Kidsのファンは大人しくてマナーが良いそうだ。きっと彼らもそうなのだろう。 そういえば、さる歌舞伎の名家。そこのご贔屓が私の周りの歌舞伎ファンの間で、”本当に行儀が悪くて、できるだけお付き合いしたくない”と大変評判が悪

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        観劇日記を書き続けても何も覚えていられないので、noteを始めることにした話

          シネゲキ「薔薇とサムライ2:海賊女王の帰還」

          天海祐希は非日常的な姿ほど美しい。弁護士や刑事も良いけれど、できるだけ一般的ではない扮装を見たいと思う。 そういう意味では「薔薇とサムライ」ほど天海祐希を活かしている舞台はない。オスカルの軍服をアレンジしたようなドレスも、大きくドレープの入った袖の海賊姿も、見ただけでハートをわしづかみにして揺すぶられているほど感動的だ。 だが、この芝居の大きな意義は、天海祐希に燕尾服を着せたことだ。昨年の新橋演舞場、休憩後に往年の宝塚スタイルで現れたときには、前情報がなかっただけに肌が粟立ち

          シネゲキ「薔薇とサムライ2:海賊女王の帰還」

          「ピエタ」@本多劇場

          劇場の観客には女性が多い。皆さんは誰を見るために来ているのかな、と化粧室の列に並びながら周りを眺める。私はもちろん実物の小泉今日子を見るためだ。 前情報を全く入れずに来たので、何かを象徴しているらしいオープニングシーンの意味が分からない。うっかりオペラグラスも忘れたので、キョンキョンがどこにいるのかもわからない。始まって5分ですでに退屈し始めた。左隣の女性もそうなのだろうか、転寝している。酷暑の観劇は、心地よい空間に入った瞬間、どっと疲れがでるからなぁ。 質素だが清潔感のあ

          「ピエタ」@本多劇場

          「船徳」@月例三三 2023.7.14

          夏に聞きたい噺と言えば、「青菜」と「船徳」。江戸の暑さと水の上を渡ってくる涼風を感じさせる。 今回の三席目は「船徳」だった。 道楽がすぎた若旦那がおだてられて、船頭になろうと決心。 全然使い物にならない若旦那に、船頭の格好をさせて置いておく船宿の主人。 「あれはダメなんです」と言われているのに、無理に若旦那を船頭として使おうという客。 客の要求を断れず「最終的に船だけは守ってね」と若旦那を船に乗せてしまう船宿のおかみ。 やっと出番だと張り切って、客を待たせて髭をあたってくる

          「船徳」@月例三三 2023.7.14

          事情を知りたい

          あんなに声高に相手をやり込めたらさぞかし気持ちがいいだろう、と思うことがある。 我こそが正しい、非は相手にありという血相で、早口になにかを主張する。 できそうで、できないことだ。 「あなた、会社でじゅうぶん言いたいことを言っているじゃないの」 という同僚の声が聞こえそうだが、それはちょっと違う。私が言いたいことを言うのは、自分より目上の人間にだけだ。上司、そのまた上司、彼らと同じ階層にいる他部署のマネージャーやディレクター達には言いたいことを言い、聞きたいことを聞いて構わな

          体質別食養生

          「舌を見せてください」 漢方薬局の先生はそう言ってマスクを外すよう私を促した。 咳喘息を西洋医学に頼らず治したい。そう思って見つけたこの薬局に通い始め、もう6年になる。 体質にあった漢方薬を処方してもらい、薬を半量にするところまで改善できていたのだが、4月の黄砂で一気に悪化してしまった。5月に入ってもまだ咳がでている。多少の咳くらいいいじゃないかという声もあるだろうが、エンタメだけが生きがいの私。映画やお芝居をみる妨げになる咳は困るのだ。 「昨日は何を召し上がりましたか?」

          「与話情浮名横櫛」@鳳凰祭四月大歌舞伎 感想

          「切られ与三」で知られる世話物を、片岡仁左衛門・坂東玉三郎ペアで見られる。多少の不義理をしても駆けつけたい。あと何回このペアを見られるかわからないのだ。 昨年の「四谷怪談」とは違って、落ち着いて二人の美しさを堪能できるのはハッピーエンドがわかっているからだ。 「粗筋がわかっているものを、よくも何回も見られるね」 という向きもいらっしゃるだろうが、古典落語と歌舞伎は粗筋を楽しむためにあるのではないから良いのである。 この話では、浜辺で出会った二人がお互いに一目惚れをするのだか

          「与話情浮名横櫛」@鳳凰祭四月大歌舞伎 感想

          映画「零落」

          WBCでの大谷翔平のセーフティバンドには感動した。類まれな才能をたゆまぬ努力で磨き、まっすぐに自分の目指す場所へ突き進む姿に誰もが称賛を送らざるを得ない。 一方、自分のことを振り返ってみると、努力しているのに、何かがずれてしまい上手くいかないことがある。もがけばもがくほど、どんどん落ちていく。「零落」はそんな自分を見るような映画だった。斎藤工演じる主人公・深澤には多くの人が引き込まれるはずだ。目を背けたくなるような共感を持って。

          映画「PLAN75」凱旋上映@新宿ピカデリー

          母が要介護状態になり10年余り。ヘルパーの力を借りながらも、父が世話をする在宅介護に限界が来ていた。私が見つけてきた病院に見学に行った父は小さな声で言った。 「あの病院はだめ。お母さんは入れられない」 看護体制が良くないのか、それとも軽度の患者のみを受け入れているからか。 「空気が重い。死を待っている病院だよ。あれでは、ただ”生きている”っていうだけだ」 「お母さんも同じだと思うけれど」 と私は言った。かなり冷たく聞こえたはずだ。 ”それは違う、いくら自分から発信できなくても

          映画「PLAN75」凱旋上映@新宿ピカデリー

          もうすぐなくなるシアターコクーンと、今が見ごろの宮沢りえ ~「アンナ・カレーニナ」@シアターコクーン~

          2020年に公演予定だったもののコロナ禍で中止となり、2年半ぶりに上演が実現した。宮沢りえ演じるアンナは気高く妖艶。いくら舞台女優の価値は美貌ではないといっても、ここまで美しいと物語にリアリティを与えてくれる。若い人妻の役だが、演技力と美貌のバランスからキャスティングするなら今だ。 ヴロンスキー役の渡辺圭祐もTV画面では美しいと思っていたが、残念ながらシアターコクーンの一番後ろまでは魅力が届かなかった。 作品中何度もセリフで繰り返された「愛」と「許し」。アンナの夫・カレーニン

          もうすぐなくなるシアターコクーンと、今が見ごろの宮沢りえ ~「アンナ・カレーニナ」@シアターコクーン~

          コロナ禍前の最後の観劇は、暗雲が垂れ込めていた ~「ヘンリー八世」~

          コロナ禍ですべての興行がキャンセルになる前に見た最後の演劇は、彩の国シェイクスピア・シリーズ第35弾「ヘンリー八世」だ。日記によるとその日、2020年2月23日は晴れていたようだが、記憶に残っているのは鈍色の空だ。その数日後、公演を何日か残してすべて払い戻しになったはずなので、あの日の開催も苦渋の決断だったのかもしれない。私自身も、直前まで”ここで出かけて感染したらどうする?”と悩んだ。 日記には「こちらに雑念があるので、役者さんが唾を飛ばしても咳き込んでも、ギョッとしてし

          コロナ禍前の最後の観劇は、暗雲が垂れ込めていた ~「ヘンリー八世」~

          15時間連続ラジオを聴いてみた ~オールナイトニッポン55周年記念番組~

          2023年2月18日8時から23時までニッポン放送を聴いていた。さすがに疲れた……。タイムテーブル的に言うと、小林克也から菅田将暉まで。 小林克也のANN:  オールナイトニッポンと銘打つ必要あったかな?夢うつつで聞いたせいか、いつもの「Music Machin Go!Go!」との違いが判らず。 山下達郎と上柳正彦のANN:  聴きごたえがあった。いつものTBSラジオ「ちゃきちゃき大放送」とは、まったく別の時間が流れた。大人のラジオだったなぁ。 吉田拓郎のANN:

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          オールナイトニッポンPremium~高橋幸宏さんを偲んで 感想

          2月15日20:00より今年1月に亡くなった高橋幸宏さんの追悼番組。構成がとても素晴らしかった。 まるで、”幸宏さんは今も元気に別の世界でラジオ番組を持っていて、ラジオパーソナリティ上柳昌彦氏がそちらとの橋渡しとなり、私たちを幸宏さんの番組リスナーにしてくれている”。そんな感覚を抱いた。 よくある追悼番組のように、涙涙にはならず、幸宏さんにふさわしいおしゃれなお別れができた。 この放送のために、1983年4月から9ヶ月間放送されていた『高橋ユキヒロのオールナイトニッポン』の

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