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体の具合が悪いのは気持ちの問題?

景色に意識が吸い込まれる?運転ができない!

 私は、2年ほど前から自動車を運転すると浮遊性のめまいに襲われるようになりました。自分の意識が景色に吸い込まれるような感覚から始まって、床がふわふわしてブレーキをうまく踏むことができない感じになります。運転中にこの症状が始まると恐怖感が強く出て運転できなくなります。

 最初は長いトンネルに入ると発症していました。次第に景色の開けた山道や陸橋などでも発症するようになり、最近は対向車の移り変わりを見ていても発症するようになりました。短距離であれば大丈夫なのですが、市外に出るような距離だと発症しやすく、今は主に電車やバスで移動しています。

 最初にトンネルで発症したときには、浮遊性のめまいという症状を知らずパニック発作になったと思いました。ですからトンネルのある道を避けていました。しかし、次第にいろいろな道で発症するようになり、怖くて運転ができなくなりました。自転車には普通に乗れるのに不思議でした。

気持ちの問題だから大丈夫?それとも運転は控える?

 ちなみに私は50代前半で見た目は健常そうに見えます。皆さんは、このような人が身近にいたらどのような声かけをしますか?
①「気持ち問題だと思うよ。少し休んで運転すれば大丈夫だよ。」
②「危ないから運転は控えた方が良いと思うよ。」 

 今は高齢者の運転ミスによる事故が話題ですから②を選択する人が多いことでしょう。でも、よほどの大都市圏でなければ自動車の運転ができないと少し不便ですよね。そこで、私に対して①のような助言をしてくれる人がいました。

 私も気持ちの問題なのかな?と思って「大丈夫、大丈夫」と声に出しながら運転するようにしました。また、加速や減速を緩やかにしたり、速度を控えめに走ったりしました。発作が出たときには深呼吸をしながら十分に休憩を取ってみました。しかし、症状は悪化していくばかりでした。

平衡機能に異常があった

 これは、気持ちの問題と違うのではないか?と思うようになりました。私は、インターネットで当てはまる症状を調べ耳鼻科を受診してみました。すると平衡機能の検査で異常が出ました。では、なぜ平衡機能に異常が出るようになったのか?私が服用している薬の影響かもしれないのです。

 実は、私は線維筋痛症外来の患者で、普段から「プレガバリン」などの神経に作用する薬を服用しています。これらの薬を服用すると副作用で運転中に浮遊性のめまいを起こしやすくなるのだそうです。たしかに私が運転で浮遊性のめまいを発症し始めた時期と薬の服用開始は重なっています。

 線維筋痛症外来で、主治医に自動車の運転が困難になっていることを伝えると、他の患者さんでも同様の症状が出ているとのことでした。そして「自動車の運転は控えるように。」との指示をいただきました。見た目では変化がなくとも、このような疾患や副作用の問題を抱えている人はいるのです。

「病は気から」は違うと思う

「病は気から」という言葉があります。病気になると「気持ちをしっかり持って。」などと励まされるときがあります。また、体調が悪くても、検査で原因が見つからなければ、回りの人から「気持ちの問題じゃない?」と言われてしまうことがあります。

 お医者さんは薬を出したり手術をしたりするプロですが、患者のプロではありません。疲れる、痛いと言っても人によって千差万別です。そもそも患者の言う、疲れる、痛いという言葉は症状を適切に表す言葉なのか本人も分かりません。お医者さんでも患者の言葉を実感することはできません。もちろん、大きな病気をしたことがない素人に分かるはずがありません。

 でも、素人は軽々に言ってしまうんですよ。「気持ちの問題じゃない?」って。患者も原因が分からないと「そうかなぁ。」って納得してしまうときがあります。「自分の気持ちが弱いから?」って思ってしまうときもあります。でも、気持ちを切り替えたって症状は消えないことがあるのです。

 テレビで時々取り上げられますが、ちょっと原因の分かりにくい病気は、専門のお医者さんが病気の仮説を適切に立てて、それに合わせた検査をしないと分からないものなのです。仮に原因が分からなくても、本人が不具合を自覚しているなら今の医学で分からなかっただけなのかもしれないのです。

 慢性疲労症候群や線維筋痛症、新型コロナウイルス感染症の後遺症など、検査では原因を特定できない症状を取り上げる報道が多くなりました。これらの患者さんの声で多いのが、症状の辛さはもちろんのこと「気持ちの問題じゃない?」と言われる辛さです。

 うつ病の解説を見ていて変だな?と思うときがありました。「気持ちの問題ではない!」って専門的に解説しているのに、事例はパワハラからうつ病を発症したことになっているとか…。実際にそのような例はあるかもしれませんが、素人が受ける印象を考えたらその事例じゃないだろうと思います。

「気持ちの問題じゃない?」って軽々しく言わないで

 精神科のお医者さんの専門性に救われる患者さんは、世の中にたくさんいます。しかし、素人の皆さんは軽々に「気持ちの問題じゃない?」って語るのは止めましょうよ。おそらく善意で言っているのだと思いますが、誰も何も得をしません。

 私も偉そうに書いていますが、いくつもの病気の患者になったから分かったんですよ。健常者でバリバリ働いていたときには分かりませんでした。自分でも他人でも成果が出ないときには「努力不足」と思っていました。異常の見つからない体の不具合なんて、正に「気持ちが逃げてる!」ですよ。

 たぶん、この文章を努力家の健常者が読んでも実感的な理解はできないと思います。そういう経験が無いですからね。それでも軽々に「気持ちの問題じゃない?」って回りの人に言うのは止めた方が良いですよ。それが子どもであれ大人であれ、本人にとってショックかもしれないし、症状の悪化に繋がってしまうかもしれません。

という一人の患者の個人的な意見でした(^^)

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