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慢性骨髄性白血病は完全寛解したけれど  #2 入院①<スプリセル対応>

 入院する日。妻にも同行してもらって手続きをした。限度額適用認定証が必要なのだが、てっきり病院を通して手続きをするものだと思っていた。しかし、加入する健康保険の機関に自分で手続きをするものらしく、最初から御指導をいただいてしまった。

 大部屋や個室が空いていないとのことで機能を停止した無菌室で一週間ほど過ごした。血液内科の入院病棟に行って驚いたのは、医療従事者や患者のほとんどがマスクをしていたことである。それまでマスクをしていなかった私は常時マスクをすることに馴染めていない。個室の無菌室で助かった。

 入院当初は検査が多かった。大きな病気の治療を始めるのだから、そこは想定内だった。驚いたのは、担当医師や看護師はもちろんのこと、薬剤師やソーシャルワーカーなどが来室して冊子を用いた簡単な講義のようなことが数回にわたって行われたこと。

 私の最初の治療薬は、飲み薬の「スプリセル(ダサチニブ)」になった。この薬の薬価は1日分で約19,000円である。つまり一ヶ月では約570,000円になる。3割負担としても月に190,000円程度の自己負担が発生する。この薬は副作用も多岐にわたるので副作用を抑える薬も各種必要になってくる。

 もちろん入院費も高い。大部屋利用だとしても一日10,000円程度はかかり18日入院すれば180,000円である。退院後は2週間に1回程度通院をしていたのだが、検査代が高く一回につき10,000円以上かかることが多かった。

 つまり、慢性骨髄性白血病になると今の医学では助かる可能性が大きいが経済的には逼迫した状態が継続するということなのだ。そのため、ケースワーカーの方が高額療養費制度や所得税の医療費還付などについて説明をしてくれたのである。

 それでは、仕事を頑張って稼ぎを多くしようと思うとそれも甘くはない。スプリセルは従前の抗がん剤から比べれば副作用が軽微と言われる分子標的薬である。しかし、実際には個人差が大きく日常生活に影響が出るような副作用の出現も十分に考えられるとのこと。

「これまでの業務は難しいと思われるので、職場とよく相談するように。」
と指導を受けた。そう言われても、当時の自分の職では業務の変更や軽減の方法は思いつかなかった。場合によっては転職する必要があるかもしれないことを覚悟した。

「離婚になってしまう御夫婦もいるんですよ。」
つまり、高額な医療費の支出で経済的に困窮する上、仕事も思うようにできないので夫婦仲が険悪になりやすいとのこと。
「○○さんのところは仲が良さそうだし、奥さんもしっかりしたところで働  
 いているから大丈夫だと思うけれど…。」
とフォローもいただいた。おかげさまで今でも夫婦仲は円満である。

 2週間目からは大部屋に移った。その頃には私も常時マスクをすることに慣れてきていた。血液内科では他の病気の方も医療費は高額であり
「血液内科の患者は<金の切れ目が命の切れ目>なんだよ。」
と教えてくれた。今でも的を射た言葉だと思っている。

 入院中は、少しずつ出現する副作用や今後の生活に不安を感じていたが
「○○さんは、きっと副作用が少なくて、上り調子で体調も良くなっていき 
 ますよ~。」
という若い主治医からの励しに頷きながら「病気に勝った自分」を思い浮かべていた。

~#3 副作用と仕事に続く~

 

 

 

 


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