3年の病院実習(7)
丸坊主男と西川さんの病院実習は整形外科病棟に突入していた。リハビリ室→病室を行き来し、患者さんとコミュニケーションをとる。そんな毎日が続いた。正直書くことがない…記録が書けない…。看護師らしいことをさせてほしい…とだけ思っていた。
西川さんとの会話も「〇〇さん、また病院食の事言ってたね。」とか「退院したら行きたいラーメン屋があってさ」とか。そう、そのラーメン屋の餃子がおいしんですよね…。
閉鎖された病棟の中で、毎日同じことを同じように漫然と繰り返す。なるべく新聞で情報を仕入れてから行っても、孫の話、野球、食べ物、天気に終始した。
よくある話だ。そんなある日、ギプスを作る人がいるので、見学となった。その先生が、イケメンである。好青年。大抵の人がかっこいいというであろうイケメンである。
西川さんも心奪われたのか「かっこいい…」と言っている。病室の女性患者さんもくぎ付けだ。
しゃべり方もまた、ご丁寧で好感が持てる。私がみても「女性が好きそうな男ですなぁ」と思うほどだ。
そんな先生、腕も一人前(そりゃそうだ)で手早い。
「お上手ですね先生」といつもは無口のおばあさまがぼそっと言う。
「とんでもないです」と八重歯を見せながらはにかむ先生に、もうメロメロである。
西川さんに「私もあの先生みたいになれるだろうかね?」と参考程度に聞いてみたら
「無理です」
との事。現場からは以上です。