見出し画像

「今度私たちがここに来るときはお世話になるかもしれないね」

観光地に行くとボランティアガイドさんが待機していてくれて、ちょっとした案内をしてもらえることがあります。
私も時々ですが、英語専門のボランティアガイドとして活動しています。

この数年はコロナ禍による渡航制限でずうっと開店休業状態だったところ、去年の秋に制限が緩和され、10月11日には個人旅行も解禁。私たちの街にも少しずつ外国人観光客が戻り始めました。

そんな今年の3月だったと思います。
いつものようにインフォメーションで待機していると、日本人1名と外国人2名のグループからガイドの依頼を受けました。
詳しくは聞きませんでしたが、日本在住の1人とイギリス在住の2人は元同僚のような雰囲気でとても仲良し。コロナ禍で会えない時間が続き、今回、日本で久しぶりの再会を果たし、一緒に旅行を楽しんでいるとのこと。

金沢城公園内では、二の丸御殿の復元に向けて、発掘調査が行われています。すると一人から「その御殿はいつ完成しますか」との質問。お互いに、「御殿が完成したころに、私たちまたここに来たいね」と言い合っています。分かる。1回旅行に行って気に入った場所って何度も行きたくなりますよね。金沢がそんな場所になったなら私もとても嬉しい。

五十間長屋の中を案内しながら、いつものように「この建物は大学の先生や大工さんたちが当時の建築技術を調査・研究して、オリジナルと同じ工法で復元したものです。ただし、当時なかったものが2つあって、一つはスプリンクラー(消火設備)。もう一つは車椅子用のリフトです」と説明すると、リフトを指して「今度私たちがここに来るときはお世話になるかもしれないね」と楽しそう。
実際、80代のお客様をガイドすることもありますし、中には車椅子を併用しながら観光される方もいらっしゃいます。海外からのお客様は年齢性別問わずアクティブな方が多くてこちらも励まされることが多いんです。

今50代くらいに見える彼女たちが80代になっても90代になっても、地球のどこかで集合して、今日のように楽しくおしゃべりしながら旅行を楽しんでいる様子が目に浮かんで、ご案内している私も楽しい気持ちになりました。

明治維新の後、火災で大半が焼けてしまい、その後は陸軍の施設や大学のキャンパスとして使用されてきた金沢城址が、今、公園として整備され、年齢・性別・人種・国籍さまざまな人が行き交う場所になったこと。そのおかげで私もこうして愉しい時間に立ち会うことができたこと。嬉しいなといつも思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?