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 夜の雨の中を彷徨っているような10代だった。何も見えてなかったし、聞こうとしなかったので聞けなかった。大人や学校というシステムへの反発もあった。頭がごちゃごちゃして考えるということが出来なかった。IQや特性も関係していると思う。児童相談所に預けられると知能検査と心理検査をするのでそれでわかったことも多かった。
 実家にいると、ぎくしゃくしてしまうので一人暮らしをしている。気兼ねなく自由に生活できるのが良い。
 スーパーマーケットの青果部で働いている。楽しくもないが辛くもない。日々、淡々と働いている。

 心を揺さぶられるようなこともない。趣味もない。散歩はするけれど。
 恋人も友達もいない。まだ若いのにずいぶんと年をとってしまった感覚がある。

 今日、休憩室でお土産のお菓子をいただいた。伊豆かぁ。いいなぁ。海が見たいなぁ。海を最後に見たのはいつだろう?海なし県に住んでいるので海には憧れる。

 休憩室でパートのおばさんおじさん達と話をするようになった。話といっても、世間話。天気やレタスの値段のことなど。それでも。そんな世間話でも、私の心は和らいだ。なんでもない話なんだけれど。人と会話するのが怖かった私にとっては前進なのだ。

 今度の休み、海に行ってみようかな。目の前に青い海が広がっていたら、幸せな気分になれる気がする。
 

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