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【映画#122】「ベティ・ブルー」『おかえり横道世之介』より

こんにちは、三太です。

7月の第二週となりました。
雨の日はまだ続きそうですが、晴れた日の雰囲気がいよいよ夏モードといった感じですね。
もうすでに熱中症警戒アラートが発令され始めました。
熱中症への対策は十分に、けれどもエネルギーに満ちた夏は存分に味わっていきたいと考えている今日この頃です。

では、今日は『おかえり横道世之介』に出てきた「ベティ・ブルー」を見ていきます。
『おかえり横道世之介』に出てきた映画9作のうちの5作目です。


基本情報

監督:ジャン=ジャック・ベネックス
出演者:ベティ(ベアトリス・ダル)
    ゾルグ(ジャン=ユーグ・アングラード)
    エディ(ジェラール・ダルモン)
上映時間:2時間57分
公開:1986年

あらすじ

ある日運命の出会いを果たしたゾルグとベティ
出会った当初から激しく求め合う二人。
その後、激しく求め合った反動からか一度喧嘩別れをしかけます。
しかし、ベティが放り投げようとした段ボールの中からゾルグが書いた小説を発見します。
ベティはそれを一晩かけて夢中で読みます。
ゾルグを天才だと言い切るベティ。
二人は家を飛び出し、小説を出版しようと動き出します。
ただ、なかなか簡単には出版にこぎつけません。
そこからも二人には様々な試練が訪れます。
そんな中、ベティの妊娠がわかります。
幸せの絶頂となった二人を待ち受けていたのは過酷な運命でした。

設定

・男女ともに求め合う関係
・小説の出版
・社会に適合できない人

感想

酒と性、そして極端な感情が横溢した映画でした。
こんなに男女の丸裸を見る映画もないのではないかと思います。(そういった点では少し見る人を選ぶかもしれません)

何より映画では愛と狂気の際どい部分の描き方が秀逸でした。
ベティがゾルグを思うゆえに(逆も然り)極端な行動をしてしまう。
特に、ベティはかなり感情的です。
ゾルグの小説を売り込んで、否定的なコメントを返してきた編集者の家に押し入って、切りつけるなんて狂気の沙汰です。
でもそれをしてしまうのがベティなのです。
基本的にはすぐ感情的になるベティをゾルグや他の周りの人たちが支えるという構図で成り立っています。
しかしラストになるにつれ、あることがきっかけで、ベティの感情がなくなり、ゾルグが極端な行動に走ってしまいます。
ここは悲劇としか言えない気がしました。
かと言って終始緊張感ある映画かというと、そうではありません。
ちょっとしたコメディー要素も含まれます
例えば、ゾルグとベティが知り合った男、エディが自分の母の葬式に行くシーンです。
彼はよくコスプレをするのですが、そのときも彼女に黒のネクタイがこれしかないわと言われ、ネクタイに裸の女性が描かれたものをつけます。
あまりに悲しむエディとの対比が鮮烈です。
緊張と弛緩が上手く絡み合わされた映画でもあります。

炎天の男と女丸裸

その他

・随所にコスプレが出てくる。(エディもゾルグもコスプレをする)

・ウィキペディアより
→原作はフィリップ・ジャン(Philippe Djian)の同名小説

『おかえり横道世之介』内の「ベティ・ブルー」登場シーン

しばらく、というか、かなり長い間、双眼鏡を動かさずにいると、「あ、世之介も見つけちゃった?」と、コモロンが声をかけてくる。
「ということは、コモロンも?」
「女優さんみたいだよね。覗いてると、映画見ているような気にならない?」
「なるなる」
「あんまり動きのない映画だから、ミニシアター系のヨーロッパ映画」
「だね。シネマライズとか、シネ・ヴィヴァンとかでかかってそうな」
「ポンヌフの恋人とか、ベティ・ブルーとか」
「行ったねえ」
「画面に動きないけど、感情の動きは激しかったねえ」
「ったねえ」(pp.103-104)

「ベティ・ブルー」が出てくるのは「ポンヌフの恋人」と同じところで、世之介とコモロン(世之介の友達)がマンションのある部屋をのぞき見しているシーンです。
このシーンは『おかえり横道世之介』の中でも重要なシーンではないかと考えられます。
ここで見られている女性は後にわかるのですが、日吉桜子。
ちなみに息子の良太も同じ部屋にいます。
この二人はここからも頻繁に物語の中に登場するのです。
そのようなシーンを彩るアイテムのようなものとして、「ポンヌフの恋人」とともに「ベティ・ブルー」が使われていました。
少し謎めいた女性であるとともに、かなり感情的な女性という要素も付け加わったように思います。
世之介が映画について詳しいことは知っていましたが、コモロンも映画好きなようですね。

吉田修一作品とのつながり

・社会から切り離された男女という点では、『悪人』に通じます。

以上で、「ベティ・ブルー」については終わります。
愛と狂気の際どいラインが秀逸に描かれた映画でした。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

出典:「映画ドットコム」


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