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【作品#10】『日曜日たち』

こんにちは、三太です。

今日は10月10日、3連休の最終日、スポーツの日ですね。
そして作品紹介はちょうど10作目ということで、10が並んでメモリアルな日になりました。

気候的には穏やかになってきて、本当にスポーツにとっては打ってつけの季節です。
スポーツだけでなく、読書も進みそうです。
先日、ノーベル文学賞の発表があり、フランスの女性作家、アニー・エルノー氏が受賞しました。
翻訳がいくつか出ているみたいで、読んでみたいなと思っています。

では、今回は『日曜日たち』を読んでいきます。

初出年は2003年(8月)です。

講談社文庫の『日曜日たち』で読みました。

あらすじ

まずは文庫の裏表紙の紹介文から。

ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。都会の喧騒と鬱屈した毎日のなかで、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。ふたりに秘められた真実とは。絡みあい交錯しあう、連作短編集の傑作。

5つの連作短編集であり、次にその一つ一つの簡単なあらすじを書きます。

○日曜日のエレベーター
仕事を転々とする渡辺と、医者の卵である圭子という男女の恋愛物語。エレベーターははじめと最後に二人の関係を象徴するような形で出てきます。

○日曜日の被害者
千景と夏生という女性同士の友達関係のなかに、男が出てきて、男女の関係が描かれます。千景の家に泥棒が入ったというところから話が展開していきます。

○日曜日の新郎たち
健吾と父、正勝の男性同士の親子関係のなかに、妻や婚約者といった女性が出てきて、その関係が描かれます。正勝が知人の息子の結婚式ということで、上京してくるところから話が展開していきます。

○日曜日の運勢
田端という男性の、女運の悪さについて描かれた話です。

○日曜日たち
乃里子が恭一からDVを受けながらも、強く立ち直っていく話です。そのときにこれまで「日曜日のエレベーター」から随所で登場してきた、ある兄弟が重要な役割を果たします。

出てくる映画(ページ数)

①『夏至』(p.43・p.57)

受話器の向こうでぽつりぽつりと言葉を選ぶように語りはじめた千景の話によれば、二週間前のその夜、彼女は仕事帰りに一人で映画を観に行ったらしい。『夏至』というベトナム系フランス人監督が撮った美しい映画で、ハノイに住む三姉妹が母親の命日に集まり、そこで出た生前の母の話に自らの冷えた夫婦生活や恋愛をたぶらせてゆくものらしかった。

『日曜日たち』(p.43)

『夏至』というベトナムの映画をひとりで観たあと、ふらっと立ち寄った騒がしいバーで、千景は若い二人組の男に声をかけられたらしい。

『日曜日たち』(p.57)

今回は『夏至』、1作だけでした。
ちなみに、『夏至』が出てきたのは「日曜日の被害者」という短編です。

感想

全体を読み通して思ったのは、5つの短編が上手くつながっていて、整っているという印象でした。
はじめに、裏表紙にある説明文を読んでいなかったので、「日曜日の新郎たち」あたりで、どの話にも「あの兄弟」が出てくるということに気付いた時にゾッとしました。
それが最後に上手く収束していくのが、整っているという印象につながっていると思います。
様々な男女の関係を描けたり、「今」の話に「過去」の話がすっと挿入されて違和感なく読めたりするのが、(改めて言うまでもないことかもしれませんが・・・)すごいなと思います。
「日曜日のエレベーター」の渡辺と圭子については、ほとんど二人の家族の話が語られず、家族関係を丁寧に描く吉田修一作品としては珍しいなと思います。
 
次回は『夏至』を紹介します。

では、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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