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【映画#120】「陽喗楼」『おかえり横道世之介』より

こんにちは、三太です。

6月に入っています。
比較的穏やかな天気が続いていますが、もう間もなく梅雨入りかなという感じです。
その梅雨が過ぎれば、一気に気温も上がり、夏に入っていきます。
今年の夏は暑くなるというニュースも出ていました。
学校現場では熱中症などへの対応もより丁寧に行っていく必要がありそうです。

では、今日は『おかえり横道世之介』に出てきた「陽喗楼」を見ていきます。
『おかえり横道世之介』に出てきた映画9作のうちの3作目です。


基本情報

監督:五社英雄
出演者:太田勝造(緒形拳)
    太田房子〈桃若〉(池上季実子)
    珠子(浅野温子)
    お袖(倍賞美津子)
上映時間:2時間24分
公開:1983年

あらすじ

陽暉楼とは土佐高知にある西日本一を誇る遊興・社交の場です。
映画では昭和初期、陽暉楼一の芸者、桃若を中心に様々な人間模様が描かれます。
様々な人間模様があるため、あらすじとして語りにくいのですが、まず桃若のライバルとなる女性、珠子が現れます。
珠子ははじめから桃若を敵視していて、それがなぜかはよくわかりません。
けれども、珠子を陽暉楼や別の遊郭に紹介したのは女衒をしている大勝(だいかつ)でした。
この大勝は実は桃若の父だったのです。
女性同士の意地の張り合いをはじめ、大勝と大阪の極道との抗争、陽暉楼を経営する女将の権謀術数など色んな要素が絡み合って物語は展開します。
その中で最も重要なのが、桃若の妊娠・出産でした。
女将は陽暉楼のパトロンである堀川の子どもということにしておけと桃若に言いますが、桃若は当然違うことを分かっていますし、好きな人との間の子のためそれを認められません。
この妊娠・出産騒動を通して、桃若は男性への不信を強めていくのでした・・・。

設定

・土佐高知
・極道
・富裕層と貧困層

感想

女同士の決闘シーンが何度かあり、迫力満点で見応えがあります
例えば、トイレで珠子と桃若が大喧嘩をするシーンがあるのですが、かなり長い時間そのシーンは続きます。
「もうわかったよ」と思いそうなほどです。
でもそのシーンが陰惨な感じにならないのは、BGMがどこかのんびりした曲調だからかなと思います。
実際このあと珠子と桃若は親友のような間柄になります。

舞台となる陽暉楼はかなり大きいです。
全貌が見えないぐらいで、このような建物が昭和初期の高知にあったのかと思いました。
一言で言うと、城のような感じです。
自分はあまり知らないのですが、(知っているのは劇中にも名前が出てくる坂本龍馬ぐらいですが)それだけ土佐高知に力があったということの象徴かなと思います。
そのためそこを切り盛りする女将は一筋縄ではいかないような老練さがあるのかなと。
桃若の妊娠の件では、パトロンの堀川の子どもだと言えと言ってきますし。
五社英雄監督にとっては「鬼龍院花子の生涯」に続く作品なのですが、今回は大勝の「なめたらいかんぜよ」が聞けて、これは狙って言ってるなという感じがしなくもなかったです。

入梅や決闘上等女子トイレ

その他

宮尾登美子原作

ウィキペディアより

珠子(浅野温子)と桃若(池上季実子)が洗面所で水浸しになりながら取っ組み合う、15分に及ぶ長回しの喧嘩シーンが見所の一つである。この撮影は1983年4月19日に行われた。池上は「あれは本気でやってます。一応段取りは決めましたけど、ワンカット長回しでしょ。その段階では水に濡れてないわけだし、どのくらい着物が重くなって、どれくらい滑って。どれくらい髪がくずれるかなんて、全く計算できないもの。スタッフだって私たちが、どう引っくり返るか分からないし、カメラ移動もどういう風になるか分かんない。温子が私の腹を蹴飛ばした時も、モロに入ってますから。あれは芝居じゃないですね」などと話している。
また、陽暉楼の主人・山岡源八(北村和夫)と丸子(佳那晃子)が温泉旅行に出かけたところに、陽暉楼の女将・お袖(倍賞美津子)が乗り込み、湯の中でつかみ合いの喧嘩になるシーンもある。

『おかえり横道世之介』内の「陽喗楼」登場シーン

「さっき走っていったの見えたから、座れたのかと思いましたよ」
「取れないよー。・・・あの吉原炎上に横取りされたんだもん」
「吉原炎上?」
「知らない?吉原の花魁たちの映画。ほら、五社英雄監督で、鬼龍院花子とか、陽暉楼とか・・・」
「それは知ってますけど・・・」
「その映画に眉を剃り落とした花魁が出てくるじゃん。知らない?」
「ああ、あだ名ですか」

『おかえり横道世之介』(p.12)

「陽喗楼」が出てくるのは、「吉原炎上」「鬼龍院花子の生涯」と同じく、物語の序盤、世之介がパチンコに通っているシーンです。
「鬼龍院花子の生涯」と同じく、五社英雄監督の代表作として出されていると考えられます。
ここで「知らない?・・・」の会話をしているのは世之介です。
世之介の映画への造詣の深さが窺えます。

吉田修一作品とのつながり

・今回はよくわからなかったです。

以上で、「陽喗楼」については終わります。
女同士の決闘が迫力ある映画でした。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

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