【閑話休題#28】井原西鶴 吉行淳之介訳『好色一代男』
こんにちは、三太です。
今回は横道世之介の名前の由来となったこちらの本を読みたいと思います。
『横道世之介』には次のような記述がありました。
これは世之介が大学進学を機に上京してきたときに、下宿先のアパートで京子さんという女性と出会ったときのシーンです。
京子さんに名前を聞かれ、横道世之介ですと言ったときに「ご両親も、思い切った名前つけたわね」と京子が言ったところからこのシーンにつながります。
名前の由来となるぐらいの作品なので、これは読んでみようかなと思いました。
あとはちょうど自分が以前古本屋で吉行淳之介訳を買っていたというのも理由です。
箱に入って売られていたので、ちょっと貴重そうだなと勘違いし、勢いで買ったのですが、なかなか読む機会もなく、今回ちょうどその勘違いを生かせる絶好のチャンスだと思いました。
それでは中身に入っていきたいと思います。
要約
本書は世之介という登場人物の七歳から六十歳までの一年ごとが描かれた一代記となっています。
世之介の好色ぶりはすさまじく、戯れた女性は3742人、男性(どっちかというと少年)は725人との記述があります。
ここからもわかるように、本書では世之介の色事エピソードがその生涯を通じてひたすら描かれます。
感想
横道世之介の名前の由来となった『好色一代男』の世之介ですが、本書自体が色んな過去の作品を踏まえて成立していました。
例えば謡曲の「松風」や「忠度」の一節であったり、和歌の「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞむかしの香ににほひける」(紀貫之)であったりが引用されます。
また、吉行さんの訳者覚書が巻末についているのですが、そこでは源氏物語の54帖仕立ても踏まえられているということも言われていました。
光源氏の好色ぶりももちろん関係するでしょう。
そういった過去作が踏まえられることによって、作品から読み取れることの厚みは増しているんだと思います。
世之介という人物はどういう人物かということを読み取ろうとしていたのですが、それはなかなか難しかったです。
まず主語が省略されていることが多いので、出てくる行動が誰の行動なのかが少しわかりにくい部分があります。
ここらへんはとても古典ぽいなと思いました。
また扱う内容が内容なので、直接は言わずオブラートに包まれていることがしばしばあります。
そのオブラートの包み方も昔の言い方みたいなものでされているので、余計難しいです。
ただ、その上でも自分なりに読み取れたことを言えば、世之介はとても捉えづらい人物であると言えそうです。
例えば、未亡人との間にできた子を六角堂に捨てるエピソード(15歳)からはかなり悪い奴な気配が漂ったり、(今と昔の感覚は違ったのでしょうか?)かと思えば、太夫という格上の遊女に対してはリスペクトの念を持っていたり、遊女を請け出したり(遊女の職をとかせ身をひかせること)など、なかなかに捉え難い人物像でした。
また全国各地の遊郭を回ったり、色んな女性に会いに行ったりするので、ある種全国の名所を回るガイドブックのような趣もありました。
戯れた女と男夏の夜
『横道世之介』とのつながり
世之介のなかなかに捉え難い人物像は少し横道世之介にも通じるかなと思いました。
横道世之介の方が明るさはあるかと思いますが・・・。
また、『好色一代男』は一歳ごとに、『横道世之介』は4月、5月・・・と月ごとに章が進むのですが、各章の出来事が淡くつながっていく感じも似ているところの一つに思えました。
ただ、ずばり「ここが一緒だった!」みたいなところはなさそうに感じたので、あくまでも名前ぐらいが参考にされたような気もします。
『好色一代男』の終盤に長崎の花街・丸山が出てきます。
ここは吉田修一『国宝』でも舞台となる場所です。
意図的ではないと思いますが、描かれるものはつながってくるなという印象はありました。
今回は『横道世之介』に出てきた本『好色一代男』の紹介でした。
今回は家に積読していた吉行淳之介訳で読んだのですが、他にも多くの方が訳されており、まだまだ自分の中でも消化しきれていない部分もあるので、別の方の訳でも読んでみようかなと思っています。
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。
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