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【作品#24】『元職員』

こんにちは、三太です。

コロナ禍に入ってから、飲み会が少なくなったり、家庭の事情もあったりして、アルコールを控えていました。
最近少しずつアルコールを摂取する機会が増えてきました。
全然飲めないわけではないのですが、やはり3年あまり、たまにしか飲んでいなかったので確実に弱くなっている気がします。
今週は4年ぶりに職場の歓送迎会があります。
羽目を外しすぎないよう気を付けたいと思っている今日この頃です。
 
では、今回は『元職員』を読んでいきます。

初出年は2008年(11月)です。

講談社の『元職員』で読みました。

あらすじ

栃木県の公社職員である片桐
彼がタイを訪れ、そこで偶然出会った武志、武志が紹介してくれたミントという女性と過ごす日々が描かれます。
ミントとアユタヤ遺跡へ行ったり、タイスキを食べたり、ミントの弟が出ているムエタイの試合を見にいったりします。
そんなタイでの生活を過ごす中で、少しずつ片桐が隠し持つ秘密が露わになっていきます。
片桐の秘密とは?
彼に待つ運命とは?

公式HPの紹介文も載せておきます。

初めて訪れたタイ。団体職員として働く男は、バンコクで暮らす日本人にミントという美しい女性を紹介される。滞在中彼女と時間を過ごすことになったのだが、楽しい旅の合間、合間に日本での「忘れたい」出来事が頭をよぎる。魔が差して、最初にくすめたのはわずか数百円だったのに、今では…。眠らない街・バンコクで、人の欲、興奮、エゴを描く犯罪小説。

出てくる映画(ページ数)

今回は1作も出てきませんでした。

ただし、映画に関しては次のような表現が見られました。

ミントの話はすぐに武志の通訳で伝えられた。久しぶりにアユタヤに行って、やはり感動したこと。夜、ライトアップされたホテルのプールがきれいだったこと。そして、「片桐さんは、名前は知らないが日本の映画俳優に似ている」とも言った。
ミントの言葉を受けて、さて誰に似ているのかと、一頻り会話は盛り上がった。ミントがテレビで見たという映画が、どんな内容だったか、他にどんな俳優が出ていたか、次々に質問を浴びせてみたが、「暗い内容の映画で、主人公の少女が可愛い犬を飼っている」というだけのヒントでは、結局、誰も言い当てることはできなかった。

『元職員』(p.82)

電話は五分ほど続いて、その後、風呂に浸かる水音が聞こえた。前にも一度歌っていたハミングが聞こえていた。かなり古い恋愛映画のテーマ曲なのだが、どうしても思い出せなかった。

『元職員』(p.132)

具体的にわからなかったり、思い出せなかったりするものとして映画が出てきました。
 

感想

断崖絶壁に立たされたような感覚から始まる物語。
何が断崖絶壁なのかが少しずつ分かる仕掛けになっていますし、改めて読み直すと「あ、あそこが伏線に・・・」というところがわかりました。
片桐が15年前に卒業旅行でタイを訪れていた時に見ていた、火だるまになった男。
その男にまさに片桐の現在の状況が重ねられているんだと思います。

また、片桐が衝動的な行動に走るシーンがあります。
例えば、ミントと一緒に過ごしているときに妻の麻衣子を思い出し、突然態度が豹変してしまうのような感じです。
この衝動的な行動は吉田修一作品によく出てくるモチーフです。
人間が善から悪へと踏み越える瞬間、しかも本当に紙一重のところでの揺らぎが描かれています。
 
善悪を分かつ断崖桃の花
 
以上で、『元職員』の紹介は終わります。
タイという外国が舞台という点で、前回の『あの空の下で』からつながりを感じられる作品でした。
 
次回も作品紹介を続けます。

では、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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