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【閑話休題#50】佐藤友美『本を出したい』

こんにちは、三太です。

今回はこちらの作品を読みます。

ずばりタイトルに惹かれました。
「本を出したい」という思いは本をよく読む方なら一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
でも、そのためにどうすればいいかというのは分かりそうで、よく分からないです。
この本にはそのことが事細かに書かれています。
先に結論というか読んだ後の思いを書くと、本を出すのは「不可能ではないけれど、思っていた以上に厳しいし、それ相応の覚悟がいるんだな」ということです。
では具体的にどのようなことが書かれているのか、そこから何を感じたのかを中心に綴っていきたいと思います。

『本を出したい』は2024年の3月に刊行された本です。


要約

この本にはざっくりいうと次のような事柄が書かれています。
目次ではなく、私の捉えたまとめです。

・本を出すための心構え
・本に書くべきこと
・本を出すに至る流れ
・企画書の書き方
・出版までの流れ
・出版後の流れ

本を出す前、本を出す作業、本を出した後についてこれでもかと言うぐらい具体的に網羅されています。
本を出したい人には最良の導き手となる本です。
ちなみに著者の佐藤さんは「作家」と「著者」という言葉を使い分けておられます。

作家は「価値のある文章を書く人」で、著者は「価値のあるコンテンツを持っている人」。

『本を出したい』(p.5)

言い換えると小説などを書くのは作家、実用書などのコンテンツを準備するのが著者という感じです。
自分はここらへんの言葉をけっこうごっちゃにして使っていたので、なるほどとなりました。
本書では後者に当たる本が扱われます。

感想

いくつかキーワードになる言葉を取り上げながら、感想を述べていきます。

本は、書き手のためにあるわけではなく読者のためにあるのです。

『本を出したい』(p.28)

この言葉は言われてみればそうだなと思うのですが、かなりシビアな内容だと感じました。
自分の中ではぼんやり自分のやりたいこと、知りたいことを極めていると本を書けるのかなと甘く考えているところもあったので、ここはガツンといかれた感じです。
また佐藤さんはこうも言っておられます。

「読者のなんらかの課題を解決できる人が、本を出すことができる人」となるでしょう。

『本を出したい』(p.55)

これも上で述べた内容に通じることかなと思います。
佐藤さんの方法論は常に読者がファーストにあるようです。

出版社から声をかけられる3つのパターンも書かれていて面白かったです。

①その人の文章にファンが多くついている場合
②課題解決のメソッドが斬新で、かつ再現性が高そうな場合
③その人のプロフィールが課題解決する人として最適な場合

『本を出したい』(p.42)

①のファンが多くついている例で「noteのいいね数が常に何千個もついているとか、有料noteが相当数売れているとか」(p.43)とあって、これもなかなか厳しい道のりだなと思いました。
時々noteの記事で「今月書籍化されました」というような記事を見かけたことがありましたが、本当に選ばれし人たちなのかなと思います。

では、実際に本を出すとなったときに重要となるのが企画書です。
佐藤さんは目次の中で「本を出すには企画が10割」という章を作っておられるほど、企画書を重要視されています。
本書には『本を出したい』の実際の企画書が掲載されています。(p.92)
ここは本書の読みどころの一つだと感じました。

本を書く中で重要なものの一つとして「はじめに」が挙げられます。
佐藤さんはビジネス書や実用書の典型的な「はじめに」の構成を具体的に述べられます。
以下、引用します。

①みなさんはこのような課題を持っていませんか?(課題の発見)
②AやBで解決できると思っていたかもしれませんが、それではうまくいかないですよね?(過去の解決法の否定、弱点の提示)
③今から提示するのは、この課題を解決する最適な方法で、○○○という方法です(課題解決法の提示)
④この方法の画期的な点(斬新さ・メリット)は、○○○という点です(課題解決法の特徴説明)
⑤なぜ私がこの方法を知っているかというと、私は○○○だからです(プロフィール=語る資格の提示)
⑥この方法はすでに○人の人が試して成功しています(エビデンスの提示)
⑦成功すると、このように人生が変わります。良いことだらけです(期待感の醸成)
⑧みなさんがこの方法を知らなかったとしても無理はありません。なぜなら○○○だからです(読者への寄り添い)
⑨この方法は、○○な人たちにおすすめです(一方で△△な人達には向きません)
⑩さあ、この本を読みましょう(クロージング)           

『本を出したい』(pp.235-236)

とてもわかりやすい型で、自分も実際に「吉田修一作品による映画ガイド」に当てはめて「はじめに」を書けないか考えてみました。

①みなさんは吉田修一さんの作品を読んでいて、たくさんの映画が出てくることに興味を持ったことはありませんか?(課題の発見)
②すでに誰かが興味を持って、調べてくれていると思っていましたが、(ニッチすぎるのか)誰もそれについては書いていませんでした。ちなみに村上春樹さんの作品については、『村上春樹映画の旅』という本があります。(過去の解決法の否定、弱点の提示)
③今から提示するのは、この課題を解決する最適な方法で、とりあえず吉田修一さんの全ての作品を時系列に読んで、出てくる映画をピックアップして、その映画も順番に見ていくという方法です(課題解決法の提示)
④この方法の画期的な点(斬新さ・メリット)は、全て見るという点です。ただし、実際には今では簡単に見られない映画もあって、全て見られているわけではありません(課題解決法の特徴説明)
⑤なぜ私がこの方法を取ることができるかというと、私は吉田修一作品のファンで、全ての作品を持っているからです(プロフィール=語る資格の提示)
⑥この方法は『村上春樹映画の旅』と同様の方法論を取っています。(エビデンスの提示)
⑦成功すると、吉田修一作品に対して、新たな視点を得られると思います。良いことだらけです(期待感の醸成)
⑧みなさんがこの方法を取らなかったとしても無理はありません。なぜならとても時間がかかることだからです(読者への寄り添い)
⑨この方法は、吉田修一さんのファンや文学と映画の関係について考察したい人たちにおすすめです(一方で△△な人達には向きません)
⑩さあ、この本を読みましょう(クロージング)

少し苦しい部分もありますが、なんとか書き切ることができました。
これで本作りの第一歩を踏み出せたような気がします笑

今回は佐藤友美『本を出したい』の紹介でした。
夢が膨らむテーマですが、夢を見るだけではなく、覚悟もきちんと持たせるような濃い内容の本でした。
 
それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

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