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【映画#69】「カポーティ」『キャンセルされた街の案内』より

こんにちは、三太です。

先日、無事歓送迎会が終わりました。
無事という書き方はどこか違和感がありますが、要するに久しぶりのアルコールでも酔いつぶれずに最後まで行けました。良かった…
その分いつもに比べ、色んな人と話をしました。
普段忙しい職場では話せないようなことも色々と聞けて面白かったです。
そういう意味ではこういう場も悪くないと思っている今日この頃です。
(もちろん節目という意味でも大事だと思います)

では、今日は『キャンセルされた街の案内』に出てきた映画、「カポーティ」を見ていきます。
『キャンセルされた街の案内』に出てくる2作の映画のうちの1作目です。

基本情報

監督:ベネット・ミラー
出演者:トルーマン・カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)
    ネル・ハーパー・リー(キャサリン・キーナー)
    ペリー・スミス(クリフトン・コリンズJr)
上映時間:1時間54分
公開:2005年


            カポーティとネル

あらすじ

トルーマン・カポーティの傑作ノンフィクション・ノヴェル『冷血』誕生の舞台裏が描かれた映画です。
『冷血』で扱われる事件は1959年11月15日、カンザスのホルカムという村で起こりました。
その村に住む一家4人が銃で撃ち殺されていたのです。
この事件に興味を持ったカポーティは取材を始めます。
その取材を通して、町の人や刑事など色んな人と知り合っていきます。
そして次の年の1月、2人の容疑者が逮捕されます。
カポーティはそのうちの1人、ペリー・スミスに興味を持ちます。
幼少期の境遇に自分と似たところがあったようです。
そしてこの頃ぐらいからこの事件を小説にしようかとも考え始めました。
容疑者に寄り添いつつ、小説としても面白くしあげようとするカポーティ。
そんな彼のこの事件への向き合う姿勢が垣間見える作品です。

設定

・ノンフィクション・ノヴェル執筆の舞台裏
・殺人事件とその容疑者
・作家と読み手・聴衆の関係性

感想

人間が感じられる作品でした。
正直、途中までカポーティってひどい奴だなと思って見ていました。
殺人事件の取材のために、容疑者に寄り添っている風を見せかけ、その容疑者を大切にするというよりも、自分の小説を書くネタを大切にしているように見えたからです。
そういう意味で、カポーティはまさに小説に取り憑かれた男です。
ただ、これはカポーティ個人のパーソナルな部分から来ているだけではなく、彼を取り巻く周囲の人間関係からも影響を受けているようにも感じました。
簡単に言うと、周りに認められたいという承認欲求です。
しかし、そんなカポーティも自分が願っていた容疑者の死刑という結末が近づくにつれ、葛藤する姿を見せるようになります。
映画なので言葉としては表現されませんが、きっとカポーティも自分のこれまでの思考の流れや容疑者ペリーとの関係性などから色々と考えざるを得なかったのではないかと思いました。
なんと言っても取材は6年にも及んだようなので。

執筆に取り憑かれたる夏の朝

その他

・ウィキペディアより
→この映画によって、第78回アカデミー賞で主演男優賞をフィリップ・シーモア・ホフマンが受賞

→女性作家ハーパー・リーと一緒にいるのはカポーティが同性愛者であることのカモフラージュ(らしい)。

『キャンセルされた街の案内』内の「カポーティ」登場シーン

呆れたように連れがそう呟いて掲示板の前を離れる。そうなのか。二十年で変わったのは画質だけで、同じ映像がよく見えるようになっただけなのか。
「そう言えば、先週、『カポーティ』って映画観たよ」
歩き出した連れの背中に声をかけた。
「カポーティ?」
「まだ読んでないよな?とにかく映画はわりと面白かった。『冷血』って小説を書いたときのことが題材になってるんだけど、カポーティは犯人が死刑になることを最後に望むんだ。自分に似ているからこそ深入りしていったくせに、その犯人の死を望む。理由は死刑にならないと小説の結末が書けないから。で、犯人は死んで、カポーティは小説を完成させる。ただ、この作品のあと、何も書けなくなったらしいよ。で、死後、未完成のまま残った小説のタイトルが『叶えられた祈り』」

『キャンセルされた街の案内』(p.171)

これは「灯台」という短編の一節です。
語り手である俺とその連れの会話の中で取り上げられます。
「カポーティ」のくだりは唐突に始まり、唐突に終わります。
実はこの「灯台」という短編は解釈が難しい作品の一つで、正直この会話が作品上で、何を象徴しているのかは今の自分にはわかりません。
ただ、少なくとも言えるのは、吉田修一さんはこの映画を見たのではないかなと言うことです。
映画の最後のナレーションで出てくる言葉とこの会話は重なる部分が多いからです。
おそらく『冷血』を読んだからと言って、このカポーティの背景はわからないのではないかと思います。
そこを確かめる意味でも『冷血』も読んでみたいです。

吉田修一作品とのつながり

・小説家がネタを集めるという点では、『東京湾景』に出てくる青山ほたるとつながりますが・・・
映画は2005年公開なので、2003年10月に書かれている『東京湾景』に影響を与えたとは言えないですね・・・
共通点としては挙げられるかなとは思いました。

以上で、「カポーティ」については終わります。

それでは、読んでいただき、ありがとうございました。

画像の出典:映画ドットコム「カポーティ」

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